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執筆者の写真池上秀志

普通の食生活を送り、慢性的な炎症を起こし続けた男の末路

 初めに一点お知らせです。これまで新着記事のフェイスブック、インスタグラムのストーリーで共有させて頂いていたのですが、最近ある方からツイッターでも共有してほしいとのご連絡を頂きました。ツイッターでも共有させて頂きますので、ツイッター愛用者の方は是非こちらをクリックして、フォローお願いします。


 最近リリースさせて頂いた『長距離走・マラソンの為の栄養学』の中で、「実は食事の中で最も重要なのは、炎症が発生しない食事であり、炎症を抑えることであり、そして、あなたが知ると知らないとにかかわらず、もしも平均的な日本人の食生活をしているなら、あなたの食生活は炎症を引き起こす食品で溢れかえっており、知らない間にあなたの体内で炎症反応が引き起こされている」ということを書かせて頂きました。


 私自身の経験からも、炎症反応を起こす食品を排除し、炎症を抑える食品を増やすことが、体にとってどれだけ有効なことかということを書かせて頂きました。


 また先日の鉢伏合宿で榮井悠祐様ともお話しさせて頂いたのですが、その時に「この人についていこうと思ったのは、ウェルビーイングオンラインスクールで解説されている栄養を実践したら、何十年も続いた花粉症が治ったから」と意外なことを教えて頂きました。


 実際に、私も幼少期より悩まされ、ありとあらゆる薬を試しても功を奏さなかった花粉症が今ではゼロだとは言いませんが、少なくとも仕事に支障が出たり、夜眠れないということはなくなりました。


 しかしながら、一方で認めなければいけないのは私自身はランニング障害を除けば、人生で大きな健康上の問題を抱えたことがなかったのです。まあ、私にとってはランニング障害こそが死活問題なので、非常に大きな問題ではあるのですが、肥満やその他のひどい健康上の問題を抱えたことはありません。


 先述の通り、花粉症はひどかったですが、あとは年に数回風邪を引いたり、お腹を壊す程度で、それ以外は特に何もありませんでした。


 私の実家での食生活は決してベストなものでなかったことは今となっては分かりますが、それでも私の母は平均的な家庭よりは食生活に気を配り、家族の健康に気を配っていてくれていました。


 ただ、それでもベストなものでありえなかったのは、知識がなかったからです。これは非常に単純な話です。何が体に良くて、何が体に悪いかが分からないといくら健康的な食生活をしようと思ってもそれだけでは不十分ですし、時には反対方向に進んでしまうことにもなります。


これから紹介するデイブ・アスプレーさんもそのうちの一人です。


 デイブ・アスプレー


 この男の名前を聞いたことがないでしょうか?


 シリコンバレーダイエット、ブレットプルーフコーヒー、バターコーヒー、ギーコーヒー、これらを世界中で流行らせて、日本でも流行らせた男です。


 そんなアスプレーさんですが、かつては健康に人並み以上に気を使いながら、人並みをはるかに下回る一人の少年であり、青年でした。


 10代の頃から両膝の関節炎、腰痛、絶え間ない鼻血、喉の痛みに悩まされ、二十歳になる頃には体重130キロ越えの肥満体でした。スリーサイズのズボンでさえも彼のお腹の脂肪を隠すことは出来ませんでしたし、TシャツのサイズはXXLでした。そして、顔にはニキビがたくさん出来ていました。


想像してみて下さい。思春期の頃に自分がそんなに太っていたら?


顔中ニキビだらけであったら?


 セルフイメージに大きな悪影響を与えますし、死に物狂いでその状況を改善しようとするでしょう。


アスプレーさんもその一人でした。


 彼は意志の強い男でした。ありとあらゆるダイエットを試し、18か月間1日90分の有酸素運動と筋トレを続けました。


結果は、一キロも減っていない体重に、太ったままの体でした。


 常に疲れており、脳には霞がかかったように集中力はなく、そして、400mの距離を移動するだけでマメが出来るくらい絶え間なく、体に問題が生じていました。


 更に、橋本病と呼ばれる甲状腺異常も発生し、それによって代謝異常が引き起こされ、更に太りやすく、疲れやすくなっていました。


 個人的には、そんなにすぐにマメが出来る体と130キロ越えの体を抱えて一体どんな有酸素運動をしたのか気になるところですが、おそらくジムにあるエアロバイクやクロストレーナーを使ったのでしょう。


 そんな話はさておき、本題に戻しますとそんなアスプレーさんが一番初めにやや成功したのがアトキンスダイエットとかケトンダイエットで知られているダイエットです。このやり方は著しく糖質を制限することによって、脂肪が燃えやすくする方法です。


 簡単に説明しておきますと、人間の体の中ではグリコーゲン(糖原質)という形で炭水化物が保存されており、この糖原質と脂肪酸を主にエネルギー源として使っています。ところが、著しく糖質を制限すると糖原質が貯蔵されません。そうすると、脂肪を糖に変換して、糖原質を作ります。また、そうではなくても、優先的に脂肪酸が使われるようになっていきます。


ですから、脂肪が燃えやすい体になるのです。


 その結果、半年ほどで25キロほど体重が減りました。ところが、次の25キロを減らすのに、もう10年かかりました。また、体重が減ってもそれ以外の健康上の問題は何一つ解決されませんでした。


何故か?


 肥満やその他の根本原因である炎症が解決されていませんでした。アトキンスダイエットは現在の日本人に栄養に対する知識の問題点を鮮やかに指し示しています。基本的には、栄養について学ぶというと三大栄養素のバランスとか五大栄養素のバランスとかそういったことを学ぶことになりますし、実際に管理栄養士さんが着目するのも主にその観点です。


 しかしながら、炭水化物は全て同じ炭水化物ではありませんし、たんぱく質は全て同じたんぱく質ではありませんし、脂肪は全て同じ脂肪ではないのです。


 栄養について学ぶなら反栄養素の方も学ばなければいけません。これをアスプレーさんはクリプトナイトという言葉で表現されています。クリプトナイトというのはアメリカのアニメ「スーパーマン」の中で、スーパーマンの能力を著しく下げる物質のことです。


 どんなスーパーマンでも、つまりあなたがどんなに天才であったとしても、クリプトナイトを摂取してはその力の半分も出せません。そして、コンビニやスーパーに行けば、このクリプトナイトで溢れかえっています。そして、アスプレーさんも例外に漏れず多量のクリプトナイトを摂取していました。アトキンスダイエットをしていたときでさえもです。


 これがアスプレーさんが体重が減らず、なおかつ様々な健康上の問題が解決されなかった理由です。クリプトナイトは至る所にあります。例えばですが、あなたはパンが体に悪いという話を聴いたことがあるでしょうか?


 おそらく、そんなことを大々的に言えば、各方面から圧力がかかるであろう日本人にとってもはや切り離せない食品です。日本が戦争に負けた直後には、「週に一度は母の愛」というキャッチコピーといかにも良妻賢母な女性が食パンを包み込むように持っている写真で、パンの宣伝車が回っていたのですが、逆に言えばそのくらいまだパンは普及していなかったのでしょう。


 「週に一度は母の愛」、要するにパンは体に良いんですよという潜在的なメッセージを教育していたのです。何故、そんなことをしていたかというと小麦を日本に輸出したかったからだそうですが、それはともかくそんな宣伝活動も功を奏し、パンは非常に一般的な食べものになりました。


 しかしながら、市販されている大半のパンは体に悪いです。例え、それがグルテンフリーでも、全粒粉小麦でもです。何故ならば、マーガリン、ショートニング、乳化剤、人工香料、安定剤の少なくともどれか一つ、大抵は複数が入っているからです。そして、これらが体内で炎症を引き起こします。


 アスプレーさんの場合は、自覚症状があまりにも強かったため、幸か不幸かその原因を真剣に突き止めることになったのですが、それでも原因を突き止めるまでに多大な時間と30万ドル以上のお金を費やしたことからも分かるように、関連性を見極めるのが困難なのです。


 何故ならば、急性的な炎症反応と違って自覚症状が出ないからです。自覚症状が出れば良いのですが、自覚症状が出ないので、なかなかそれが自分のパフォーマンスを下げていることに気づかないのです。


 アスプレーさんは先ずは、自分の食事から反栄養素をなるべく排除しました。そして、更に実施したのが、完全無欠間欠断食法です。完全無欠断続的断食法と書けば、日本人ならなんとなく意味はお分かりいただけるでしょう。しかしながら、面白いもので次のように書いたほうがあなたは喜ばれるでしょう。


ブレットプルーフインターミッテントファスティング


このあたりがいつも文章を書いていて面白いなと思うところです。


「完全無欠間欠断食法」と書いたほうが明らかに意味は分かるのに「難しくて分かりづらい」と言われることが増えてしまいます。一方で、ブレットプルーフインターミッテントファスティング、あるいはもっと短くしてBPIFと表記すると明らかに意味は分かりにくくなるのに、「オーなんかスゲー。めっちゃ分かりやすい」ってなるんです。


面白いものですね。


では、完全無欠間欠断食法とはどのようなものでしょうか?


 読んで字のごとく断食なのですが、それを間欠的に行うのです。具体的には、16時間何も食べずに、8時間の間に何かを食べるというサイクルを繰り返すのです。場合によっては、18時間何も食べずに、6時間の間に食べるというサイクルを繰り返すのです。


では、この間欠断食法のメリットは何でしょうか?


 先ず第一のメリットは、脂肪が燃えやすい体になることです。16時間から18時間何も食べないことによって、脂肪をエネルギーとして燃やしやすい体になります。


 もう一つの作用は体内の自浄作用が活発になることです。解毒作用と言い換えても良いでしょう。解毒作用と書いても分からない方も、デトックスなら聞き覚えがあるでしょうか?


 人間の体は常に入るものと出すものの両方で動いています。食べるだけではなく、飲むだけではなく、排出もしています。これは目に見えるので分かりやすいのですが、実は体内ではもっと細かい作業が行われており、細胞の死骸を掃除したり、古くなったり、傷ついた細胞を修復したり、先述のような反栄養素を除去したり、様々なプロセスが行われています。


 で、人間が持っている生物的なエネルギーと言うのは常に有限なので、何か物を食べて消化吸収活動を行っている時には、もう一方の解毒作用(広義の意味における排出作用)はおさえられるのです。この解毒作用には免疫細胞の働きも含まれますが、あなたも風邪を引いたり、コロナにかかったりすると、食欲がなくならないでしょうか?


 これも自然の神秘ですが、そういった免疫細胞を活発に働かせる必要がある時には、解毒作用の方に(広義の意味における排出)に集中させるために、食欲がなくなるのです。ですから、風邪を引いた時に、「無理にでも食べないと治らない」と言うのは嘘で、正解は「どちらかと言えば、食欲が出てきても、自重するくらいで良い」のです。


 実は古来より慢性的な関節痛や病気の治療に断食が行われてきました。これも経験則として、断食に自然治癒力を高める効果があるということが分かっていたのでしょう。


 ただし、アスプレーさんの場合はいつもいつも丸一日や丸二日の断食はしません。16時間から18時間の断食を断続的に繰り返すのです。更に言えば、この何も食べない16時間から18時間も水しか飲まない訳ではありません。


 良質なギー(グラスフェッドバターを更に低温処理してカゼインタンパクを除去したもの)とMCTオイル入りのコーヒーを摂取します。良質な油を摂取することによって、食欲を抑え、更にケトーシスの状態に入りやすくするのです。


 実は私も試したことがあります。元々太ってはいないので、体重は一キロ減った程度ですが、確かにお腹周りは一回り引き締まりました。ただ、私には合いませんでした。


 先ず第一に、高強度な練習を継続するには、やはり糖質を摂取しないと体が回復しません。16時間から18時間何も食べないというのは、練習と食事のサイクル的に合わなかったのです。


 また低糖質食全般に言えることですが、確かに、脂質から糖原質が作られるのは事実ですが、上限で1日80グラムまでです。これでは、少なすぎます。またそのプロセスは複雑で、時間もかかります。使った糖質は糖質として補充するのが最も手っ取り早いのです。


 それから、私には油入りのコーヒーは合いませんでした。そもそも、コーヒーが私の体に合いません。これは残念なことです。幸いにも私は体に悪い食品や飲み物はもともと欲しくないので、禁欲的な生活を送る必要がないのですが、真夏の清涼飲料水と冬のコーヒーはどうしても、欲しくなってしまいます。ただ、コーヒーを摂るとかなり高確率で練習中にトイレに行きたくなりますし、胃腸に負担がかかるので、私には合いませんでした。


今でもたしなむ程度に飲んでいますが、練習が低強度の日に限ります。


 ただ、おそらくいまのように真剣に走っていなければこの食生活は無しではありませんし、少なくともたまにやると仕事に集中できて良い感じでした。選択肢として無しではないです。


ただ、私の経験上、間欠断食法はランナーさんにはやはり合わないのではないでしょうか?


 理由は単純で、中強度以上の練習を連日行うと、糖原質が100%回復しないので、そもそも脂肪が燃えやすい体になっていることと、トレーニングをすると古くなった細胞や傷ついた細胞が早め早めに死んでくれるので、断食と同じような効果が期待できるからです。


 ただ、普段の食事から反栄養素を省くことは同様にというか、走っていない人以上に重要になります。


 また、アスプレーさんが18か月間90分の有酸素運動をしても体重が減らなかった一番の原因は強度が低すぎたことでしょう。重要なことは、カロリー消費ではなく、ホルモン分泌の変化をもたらすことです。その為には、テレビを観ながら出来るような練習は不十分なのです。


 拙著『長距離走・マラソンの為の栄養学』すでに多くの方にご購入いただき、中には周りの人にも配るからと一人で10冊もご購入して下さっている方もいらっしゃる人気書籍です。まだご覧になられていない方は今すぐこちらをクリックして、詳細をご確認ください。

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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