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執筆者の写真池上秀志

エリート市民ランナーの悩み

 マラソン2時間33分、それも学生時代は陸上競技部と言う訳ではなく、高校まで野球部、大学ではほとんど運動らしい運動もせずといった環境に身を置かれていた方の結果であるということを考えると何もこれ以上悩むこともなさそうなものである。


 ところが、それでも悩みが尽きないのはマラソンであり、それがマラソンの奥深さであり、面白さでもある。


 今回は私のブログやメルマガでも何度も紹介させて頂いているウェルビーイングオンラインスクールを受講して、たった1年間でマラソン3時間16分から2時間33分まで記録を伸ばされた榮井悠祐さんからのご相談とそれに対する私の回答を共有させて頂きます。


 ご相談いただいた内容は以下の通りです。


「マラソントレーニングに関する事になりますが今正直に言うと、上手く練習メニューが組めずの状況です。


これだけ講義、書籍読ませていただいてるのに、、、


 この前ご相談させていただき回答いただいたとおり、基礎練習、特別期のような練習で福岡国際マラソン迎えようと自分の中で答えは一旦出ております。


 当然ですが、マラソンを年間通してトレーニングし始めて(池上さんに出会って)5年なるのでタイムの向上が難しくなる時期であることも認識しております。


 ここ2年は仕事の負荷が大きく、上手く練習との調和がとれていないというのもありますが、最適解はこれでいいのか等、自信もてないことがあります。


 だからこそ基礎練習、中強度のレベルをあげること、ホメオスタシスの基準をあげることが、思考としては間違いなく、この目的からブレないことが大切だと思ってます。


 最近のブログで、僕と西村さんをご紹介いただいた2週間トレーニングのあとは、1週間軽めの週を組むべき考え方が自分に必要な部分だと認識できたのとも、その目的がきちんと理解できてなかったからだと認識しております。


 先走って、淀川マラソン前のトレーニング、防府読売マラソン前のトレーニングを見返し、今できないことに不安覚えたりするのではなく、上記目的を頭に置きつつ、トレーニングすべきだと頭では理解しております。


 ただ、今結果がないことにとても不安に感じてるのが現実です。


 こういったトレーニングの話を直接相談できる方が、池上さんしかおらずメールで申し訳ございません」


これに対する私の回答は以下の通りです。


「マラソントレーニングに関する悩みはある意味一生ものだと思うんですよ。それこそ私も2時間13分から記録が伸ばせていませんし、ある段階から非常に難しくなるのは当然のことだと思います。レベルが上がれば上がるほど、そこに至るまでの段階を細かく区切らなければならないのは当然のことであり、更に言えば他の何かを犠牲にしたとしても、何か一つか二つに重点を置くという時期を多層に重ね合わせていかなければなりません。


 その中にはランニング以外のことも考えなければならないこともあるでしょう。例えば、私の場合は特にウェルビーイング株式会社初期の段階では経営基盤を固めることが中心でした。でも、そんな時でもトレーニングはトレーニングでやるべきことがある訳です。


 このように考えた時に、一番良くないのは理想の現実と現実を比較して落ち込んだり、不安に感じてしまうことです。


 つまり、本来であれば今自分はこうなっているはずなのになという仮想上の理想的な現在と現実を比較して、不安になってしまうことです。これって物凄く意味がないどころかマイナスなんです。なんでマイナスなのかというと負の情動が働くと理性の働きが抑制されてしまうからです。


 よくギャンブルや投資でも遊びに使うお金を投資に回す人は上手くいきやすい、一方で、生活費や子供の学費などの必要なお金を投資やギャンブルに回す人は負けやすいと言いますが、これも同様で失ったら生活するのに困る人はその不安で負の情動が働き、理性的な判断が出来なくなるからです。


 なので、物凄く乱暴な言い方をすれば、今結果が出ないことに不安を感じているのであれば、不安に感じるのやめたら良いじゃないですかというのが物凄く乱暴な結論です。


 ただこれは暴論であって、もう少し具体的に言えば理想の未来を見続けるしかありません。


 先ほど仮想上の理想的な現実と書きましたが、厳密に書けば人が仮想上の理想的な現実を思い浮かべる時ってたいてい若干過去なんですよ。例えば、本当であれば今頃マラソンで2時間10分切ってるはずなのに俺何してるんだろうとか、今ごろ個人年商1億円いってるはずなのに俺今何してるんだろうとか思う時って、厳密に言えば現在じゃなくて、若干過去にすでにこのくらい達成出来ているはずなのになという話です。要するに、視線が過去にいっている訳です。


 この状態って一番生産性がない状態なんです。じゃあ、逆に理想の未来に目を向ければどうですかというのが答えの一つです。


 例えば、理想の未来がマラソンで2時間10分切りだと考えた時に、この理想の未来が刻一刻一刻と近づいてきている訳です。その時に、同時に考えたいのはじゃあ理想の未来が刻一刻一刻と近づいてきているのであれば、今自分は何をしているはずなんだろうということです。


そうすると、大まかな方向性としては以下の三つになるんじゃないかと私なら考えます。


1 中強度の持久走のレベルが3分40秒から3分30秒に近づいていく


2 5000mの記録が13分台に近づいていく


3 総走行距離が月間600㎞に近づいている、あるいはすでに達成しているのであればそれを維持する


大まかに言えば、この3つかなと思います。そうすると、とりあえず現状で言えば直近のマラソンのレースや結果なんか全部無視してしまっても良いんじゃないかと言うのも一つの答えになってくる訳です。仮に42歳あたりでマラソン2時間10分切るのであれば、今目の前のフルマラソンが2時間35分なのか、30分なのかということはどうでもよくないですかというのが一つの答えにもなります。


 で、実際にそれを無意識のうちにやってるのが実業団選手なんです。結局実業団でマラソンランナーとして活躍する人たちは本人たちもまだ気づかないうちから上記の3つってやってるんですよ。要は中学、高校、大学というステップの中で上記のことを少しずつ実現している訳です。そうすると12歳から大卒で22歳で実業団選手になるとして10年間かけてやっている訳です。


 ただ、彼らの大半はそう言ったことには思いを馳せずに素直にそれぞれのレベルにおいて指導者の言うことを聞いてたら勝手に出来ていたというパターンです。だけど本当は勝手に出来ていましたじゃなくて意識的にやっても良いはずですし、寧ろ本人がそれを意図してやった方が知らない間に他人が引いたレールの上を走らされてましたみたいなことにはならない訳です。


 さらに、ここからどこに重点を置くのかを決めて、そこだけに重点を置いていく訳ですが、当然ある程度は同時並行になるでしょう。低強度走や低強度から中強度走も含めて総走行距離を維持しつつ、段階的に10㎞の中強度走のタイムを上げていく、同時にそれよりもちょっと遅いペースで距離走もやる、せっかくだからスピード練習も週に1回は取り入れて、段階ってものがあるからとりあえず今は500m10本を60秒休息で1分40秒から1分37秒からスタートして、段階的に1分37秒から1分35秒、1分35秒から1分33秒と上げていこう、それだけだとちょっと厳しいから週に1回は補助的スピード練習として200m5本を36秒から37秒でやってみようとか、だいたい方向性としてはそうなるような気がします。


 だいぶ話があちこちにいきましたが、まとめると焦点を現在上手くいっているかどうかというところから理想の未来が何で理想の未来を実現させるためには何が必要なのかというところにシフトする必要があり、その方向性で思考を進めると以上のような方向性に大雑把には落ち着くのではないでしょうかというのが私のとりあえずの意見です」


 参考になるかどうかは、人それぞれだと思いますが、今上手くいかなくて、あれが上手くいかない、ここも上手くいかない、これも足りていないというところで思考が止まってしまっている人は一度考えを自分が将来どうなりたいのか、その為に今何が必要なのかという視点に切り替えることが一つの解決策になることもあります。


 実は同様で、言い訳ばかりして何も行動にうつせない人って、この思考に囚われてしまっているんです。曰はく


・自分には素質がない


・自分は陸上部あがりじゃないから無理


・自分は運動部じゃなかったから無理


・自分はもう〇歳だから無理


でも、これって現状の不安を嘆いているようで全部過去に囚われてしまっているんです。順番に見ていけば要するにこういうことです。


・自分はこと長距離走、マラソンに関しては誤った両親の下に、あるいはあやまったタイミングで生まれてきてしまった(先天的な能力ってそういうことですから)


・自分はあの時陸上部に入っていれば、今もっと速く走れるのに


・自分はあの時運動部に入っていれば、今もっと速く走れるのに


・自分も〇歳から走り始めていれば、もっと速い記録で走れているのに


 全部過去のどうしようもないことに囚われてしまっていて、未来にどうなりたいのかという観点がないのです。


 で、更に言えば、自分は○○だから無理と思っているとそれを正当化するような情報しか入ってきません。いくら、私がこうやれば速くなるというようなことを解説してもたちまちいくつかの反論をパンパンパンとされてしまいます。その思考力をもう少し生産性のある方に使えばどうかということです。


 もちろん、これは極端な話なのですが、人はどうも行き詰ると視点が過去、もしくは現在にとどまりがちで、未来に向かないものなのです。もちろん、私も人生で行き詰ったこと何回もありますから、自分事としてそのことは理解出来るんですよ。どんなに理屈で未来を観ろと言われたところで、現状はどうにもならないということだってあります。そんな時はやっぱり辛くもなれば、不安にもなれば、なんとも言えない心細い気持ちにもなります。


 だけど、一回その思考を止めてもうちょっと長いスパンで考えてみると、結構「そんなことで不安になる必要ないかな」と思えるものです。


 そして、長いスパンで考えた方がトレーニングに関しても、結構何をやるべきかが見えて来たりするものです。普通は目の前のレースで少しずつ記録を更新していってサブ3を目指すみたいなことをやるのですが、今4時間ちょうどの人がいきなりサブ3くらいのところを考えて練習を組むっていうのは割と成功確率を上げると思います。


 もちろん、そこには明確な戦略がいるので、やぶれかぶれではダメなのですが、初めっからサブ3を達成するというところだけ見ていれば、小さな視点で見た時に一時的に故障したり、病気になったり、伸び悩む時期があったって良くないですかというのが私の意見であり、榮井さんの現状に対しても、2時間33分までいけば市民ランナーとしてはかなりのトップ層なので、伸び悩む時期があっても普通のことであるし、仕事の負荷が高ければなかなかそれより上を目指すのが難しいのも普通のことであるし、そんなことで今の自分はダメだとか不安だとか思わずに、そんな中でも理想の未来は待っていることを信じて、もうちょっと未来まで線を引っ張って何をやるべきかを考えてみると、また具体的なトレーニングの中身も変わってくるのではないかという提案をさせて頂いた訳です。


 もう少し具体的に言えば、目先のレースで良い結果が望めないのが当たり前という状況なのであれば、特異的な練習も目先のレースの理想の好結果も捨てて、一般性の高いトレーニング(基礎的なトレーニング)に重点を置くのも有効な手段であるということです。


 捨てる神あれば拾う神あり


 昔からそういうではないですか。


追伸

 今週の土曜日より約5時間半の新講義動画「自分にピッタリ合った練習計画=効率の良い練習計画の立て方講座」を三日間限定でリリースします。約5時間半の分量で、あなたが1年後、2年後、3年後に劇的に走力を伸ばすための戦略について解説させて頂いた内容で、受講費は2万円です。


 詳細は近日お知らせいたします。今回の講義動画は本気で速くなりたい方には絶対に受講して頂きたい内容なので、ウェルビーイングオンラインスクールの受講生様は追加の受講費無しで受講して頂けるように致します。ですから、ウェルビーイングオンラインスクールの受講生様は絶対にお申込みなさらずに、専用ページよりご覧ください。


 また、それ以外の方々は劇的に速くなるチャンスですから、絶対にこの機を逃さないようにしてください。人生でこれというタイミングを逃さずに上にいけるかいけないか、その瀬戸際の決断を迫られるときというのはそれほど多くはありませんが、これだと思ったら迷わずに乗らなければなりません。


 今この機にのるか、あるいは11月10日の5名様限定で募集するウェルビーイングオンラインスクールの募集枠に申し込みをかけるか、本気で速くなりたいのであれば道は二つに一つです。

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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