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執筆者の写真池上秀志

マラソンで2時間半切れない人は厚底シューズを履いても意味がない理由

 グラビアはアートかエロ本かというのが永遠のテーマであるように、最近はあちこちで市民ランナーは厚底シューズを履くべきかどうかという論争が繰り広げられています。


 よくある会話としては


「最近ヴェイパーフライ買ってん」


「いや、サブ3.5とかのレベルで厚底シューズいらんくない?」


「いや、履きたいシューズ履いたら良いやん」


 みたいな感じです。今回は私なりに厚底シューズを履くべきか否かというテーマについて書いてみたいと思います。


 先ず初めに厚底シューズの定義をさせて頂きますが、ここでいう厚底シューズというのは別に厚さの問題ではなく、価格が3万円前後で重さが200グラムを切るにもかかわらず、靴底が分厚いエリートランナーのレース用に設計されたシューズのことと定義させて頂きます。


 この定義でほとんど意図するシューズは網羅できます。


 逆の言い方をすると、ただ単に分厚くても従来からジョギングシューズやトレーニングシューズとして販売されている250グラムや300グラムのシューズは本記事のテーマには入らないということです。


 早速結論から書いてしまいますが、私自身はマラソンで2時間半を切っていない人は厚底シューズを履いても意味がないと考えています。ただ、この意味がないという言葉の意味をもう少し詳しく説明させて下さい。履いてはいけないとも思っていないからです。


 マラソンで2時間半を切っていない人にとってのアルファフライやヴェイパーフライはフェラーリと同じなんです。フェラーリって最高速度300キロとか出るそうですけど、公道走ってたら、そんな速度出すことないし、出したら捕まるじゃないですか。要は、スペックオーバーで普通に走るだけならコストパフォーマンス悪すぎるんですよ。


 しかも人もそんなに乗れないし、荷物も載せられませんしね。実用性で言えば、軽トラの方が上じゃないかと思います。


 でも、出そうと思えば時速300キロ出るという満足感から人は買いますよね。要は、素晴らしいものを持っているという満足感です。ヴェイパーフライやアルファフライもあれはエリートランナー用に設計されたもので、市民ランナーの方が履いても別に速くはなりません。


 その理由は下記の通りです。


・ある程度の勢い(物理速度)がなければ、しなりが前方方向の推進力に変わらず、上方への力に変換されてしまう


・ある程度の筋力で重心が中心地を超えるまでしっかりと押し込まないと前方方向への推進力に変わらず、上方への力になってしまう。


・ある程度の力でしっかりと押し込まないと柔らかく上に弾もうとするシューズの力に負けて脚の返しが遅くなる。結果として、ピッチが遅くなり、仮にストライドが伸びてもプラスマイナスゼロにしかならない。靴底が柔らかく地面に力が伝わりにくいので、力のロスに繋がる。


・靴底が柔らかく不安定なので、体幹や足首周りが安定していない人、股関節周りが安定していない人は力のロスに繋がる。


 上記の理由を裏付ける現象がいくつかあります。


 先ず第一に、トップランナーであったとしても女子は男子ほど厚底シューズの恩恵を受けていません。これは物理的な速度が遅いため(レースペースが遅い)、勢いがないからでしょう。また、筋力が男子に劣るので、最後までしっかりと押し込むだけの脚筋力がないのではないかと推察します。


 私は昔から男子よりも女子のトップランナーの走りを参考にしていました。男子のトップランナーの場合、筋力が違うので、技術的に出来たとしても筋力的に出来ないということが多々あるからです。私の実力など所詮はその程度のものです。


 一方で、いくら私に力がないとは言え、女子には負けません。だから、女性の一流選手の走りは参考になるのです。


 第二に、市民ランナーの方も5キロや10キロレースでは厚底シューズを綺麗に使えている人を見かけます。要は、レースペースが速いことと、距離が短いので最後までぐっと押し込めるだけの筋力があるのでしょう。


 また、女子は男子ほど厚底シューズの恩恵を受けられていませんが、それでも2時間半は切っていることに着目して下さい。これが私がマラソンで2時間半を切っていない人は厚底シューズを履く意味がないと主張している根拠となります。


 逆にですが、マラソン大会の後ろの方に行けば行くほど、いわゆる厚底シューズをボフボフ言わせているだけで前に全然進んでいない人の比率が高くなります。


 ただ、繰り返しになりますが、履く意味がないというのは履いてはいけないというよりはコストパフォーマンスの話になります。ヴェイパーフライとかアルファフライって寿命が異常に短いです。


 ああいったシューズの売りは反発力にありますが、本来の反発力は100キロくらいでなくなってしまいます。ヴェイパーフライやアルファフライを買って大切に300キロも400キロも履いている人もいますが、レースで使うならばそれは意味がないのではないでしょうか。


 もちろん、レースで使ったものを最後まで練習用として大切に使うことには賛成ですが、300キロも履いたヴェイパーフライをレースで使うのは、プラスが全部なくなってマイナスだけ残るみたいな感じになります。


 それで価格が3万円前後なので全てが高いんですよね。高くて頻繁に買い替えなくてはいけないという代物なので、そういう意味でコストパフォーマンスが物凄く悪いです。


 厚底シューズを履いたら速くなると思ってる人も多いのですが、私はその人がそのレースの距離をなるべく同じ条件で対照実験した場合にしかその意見は信じません。


 というのも、反発自体は物凄く感じるので、距離が短いほど楽に進んでいく感じがするんです。ましてや買う前に店内でちょこちょこっと試し履きする場合はなおさらでしょう。しかし、問題は繰り返しになりますが、最後までそれで筋力が持つかどうかなんです。


 最後まで筋力が持ってきちんと地面に押し込んでしなりを前方への反発に変えられるかどうかなんです。それが問題です。その結果、ハーフマラソンやマラソンになると意外と遅くなる人も多いです。


 私があえて、「いわゆる厚底シューズ」と書くことが多いのは、実は1万円台で買える厚底シューズの中に良いシューズがたくさんあるからです。厚底シューズ、厚底シューズと言いますが、ただ単に分厚いシューズ自体は昔からたくさんありました。ただ、重量が重いのと、機能性にも欠けるので昔はレースで使えるレベルのものがなかっただけです。


 でも、いわゆる厚底シューズが出てくる前から厚くて機能性の高いシューズはいっぱいありましたよ。私が高校生の頃も1キロ3分半とか3分20秒くらいのペースならレースシューズは履かずにトレーニングシューズとかジョギングシューズと呼ばれるもので走っていました。


 目安で言えば、重量が220-230グラムくらいの重さで、靴底が柔らかくなく、しっかりと地面を捉える感覚が得られて、なおかつある程度の反発とクッション性と耐久性があるシューズです。反発と言っても、ヴェイパーフライとかアルファフライを一回履いてしまった人は反発がないと言うと思います。


 ただ、履いているうちにへたってくるのも同時に分かると思います。新品のシューズと比べると明らかにへたってくるんです。逆に言えば、新品の場合はそれなりに反発があるということです。反発と言ってもバネのような反発ではなく、竹のようなしなりです。


 このシューズの利点は何かというと全てが良いところどりであるところです。そこそこ楽にスピードが出せて、耐久性とクッション性もあって、そこそこ反発があって、そこそこ軽くて、1万円台で買えるのでお買い得です。


 また耐久性があって、値段もそんなに高くないので、練習で履きならしやすいという特徴があります。レースの日は新品をおろすか、新品を1,2回だけ履きならしたものを使った方が良いと思います。


 ですが、それ以外に関して言えば価格的にも耐久性的にも使い惜しみするようなものではないので、バンバン履いてレース当日も同じ感覚で走れるのが利点です。また、もともとそんなに反発がある訳ではないので、へたってきても感覚はほとんど変わらないです。


こういった観点からも練習もレース当日も同じ感覚で走れます。


 ちなみに、私の最近のお気に入りはアシックスの不朽の名作ソーティマジックです。厚底シューズのお陰で本来ならばアシックスの最高傑作であったはずのものがちょくちょく値下がりしていて、11000円くらいで購入できるときもあります。定価も16500円でお買い得感があります。


 本当にこのブログの中に書いている通りで、私の場合いわゆる厚底シューズを履きこなせるレベルにまだ達していないので、しばらくはソーティマジックで、楽に脚を回転させられる感覚を掴むことが先だと思います。


 ただ、あまりにも薄くクッション性が無いので、市民ランナーの方には正直おススメ出来ないです。しっかりと脚が出来た状態で履かないと故障につながるので、上級者向けかなという感じです。


 ですから、結局総合的に判断すると220-230グラムくらいの重量の1万円台のシューズが良いところどりシューズになっていることがほとんどです。もうちょっと軽くて205グラムより上くらいまでがストライクゾーンかなと思います。


 逆に240グラムにのってくると、ちょっと機能性に欠けるシューズが多くなります。単純にレースシューズとしては重たいですしね。


あなたは満足感を求めてフェラーリに乗るタイプですか?


それとも実用性を求めてトヨタの車に乗るタイプですか?


決めるのはあなたです。



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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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