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執筆者の写真池上秀志

新庄剛志選手から学ぶスコトーマの外し方

更新日:2021年10月16日

少し前の話ですが、元プロ野球選手の新庄剛志さんが来年の合同トライアルを受けることを表明しました。これに野村克也さんや高木豊さんが無理だと思うという趣旨のコメントをしたりと話題になりました。


新庄選手は「1%の可能性があれば出来る。挑戦しよう」と言っています。私は新庄選手ならもう一度プロ野球選手になれると思いますが、今回の記事のテーマはそこではありません。今回の記事で書きたいことは、新庄選手は現状の外側に踏み出したということです。

世間には多くの成功本や自己啓発本などが出ていますが、致命的な欠陥を二つ抱えているものが多いです。


1つ目は、成功をお金持ちになること、大企業にはいること、企業の中で出世すること、異性にもてることなどと定義していることです。勿論、はっきりとそう書いている本はほとんどありませんが、暗にそういうことを示唆している本ばかりです。もしくは成功というものを定義せずに、スピリチュアルな内容ばかり盛り込まれた本も多いです。こういった本の何が欠点かと言うと、仮にそれを達成したとしても幸せになれるかどうかはまた別の話であるということです。馬車馬のように働いて、世間一般に言われる成功というものを手にした人が「俺の人生とは一体何だったんだろう?」とつぶやくのは珍しくありません。純粋に哲学的問いとして発せられた問いなら良いのですが、たいては後悔の念を込めたつぶやきになってしまいます。


2つ目は、目標を現状の外側に設定しなさいということが書かれていないケースがほとんどだということです。現状の内側に目標を設定してしまうと、かえって自分の能力を制限してしまいます。


あなたは今の自分の成果を110%にするのと、1000%(10倍)にするのと、どちらが簡単に思えますか?目標をどちらに設定するのが、より大きな成果を生むでしょうか?

勿論、ケースバイケースですが、一般的には成果を10倍にする方が簡単で、自分の能力を引き上げてくれます。


えっ?ですよね?


成果を1.1倍にするのは簡単なようですが、成果を1.1倍にしようと思うと今のやり方であとちょっと頑張ろうとします。やり方そのままであとちょっと頑張るのはきついです。もう既に、頑張った後にもうひと踏ん張りするのは誰しもきついです。しかもこのやり方では、成果を更に1.5倍にするためには、あとちょっとの頑張りを更に続ける必要があります。想像するだけでもきついですし、1.5倍くらいになるとそもそも不可能な人が多いと思います。月に24日出勤している人であれば、1.5倍すると出勤日が月に36日になるので、この時点でもう不可能です。


ところが、10倍の成果を出したければ、あとちょっとのやり方では無理です。従って、全く別の考え方をする必要が出てきます。今までとは根本的にやり方を変える必要があるのです。やり方を変えるだけなので、それほどきつくないという訳です。勿論、生みの苦しみは伴います。


しかし、やり方を変えて上手くいったとして、それは本質的に0から何か新しいものを生み出したと言えるでしょうか?


厳密に言えば、前からその方法はこの世界にあったわけです。物理や数学上の大発見も発明ではなく、発見です。この世の法則は宇宙が誕生した時から一切変わっていません。この世の法則を応用して、作り上げた電気も飛行機もインターネットもあらゆるヒット商品もその組み合わせです。


勿論、発明者の独創性、創造性がずば抜けて優れていたことに違いはないのですが、発明しようと思えば、もっと早くできたはずです(あくまでも理論的には)。換言すれば、見ようと思えば見れたのに、見えていなかったということです。限られた理性的存在者である人間に、神の視点を持つことは出来ません。一から何かを作ることは不可能で、一切合切は元からあるものに気付くかどうかです。


この気付けるのに気付けていない部分のことを心理学の用語でスコトーマと言います。スコトーマという言葉は眼科では、視野の一部が欠けてしまう目の病気です。視野の一部が欠けてしまうように、見えているはずのものが見えない、これがスコトーマです。


スコトーマというのは、人間が生きていく上では欠かせないものです。認識できるものすべてを認識しようと思えば、疲れ切ってしまいます。スポーツや仕事、勉強など本気で高い集中を維持しようと思えば、1時間でもかなりきついことからも、これが分かります。プロスポーツ選手は肉体の酷使もさることながら、脳の疲労も半端ではありません(脳も肉体の一部だけれど)。これは競技スポーツの世界では、普段認識に上がらないようなことを全て認識に挙げていくからです。


同じプロスポーツ選手でも、プロ野球選手の方がスプリンターよりも多くスプリントを繰り返します。走り込みを繰り返すプロ野球のピッチャーからすると、スプリンターの練習は楽だと思うかもしれません。でもこれは違います。プロ野球選手が50mダッシュを繰り返すのは、あくまでも基礎練習です。言い換えれば、追い込めていたらOKです。


一方のスプリンターは速く走るための練習です。0.01秒でも速く走るために全神経を集中させて、より多くの筋繊維をより効率よく使おうとします。心身ともに負担が大きく、連日プロ野球選手のキャンプのように走りこむのは不可能です。広岡達郎監督時代の西武ライオンズは、春季キャンプで若手が100mを100本やったそうですが、スプリンターは100m10本ですら、不可能です。それがやれるということは、本気で集中していないということですから、スプリンターとしては、あまり良い練習ではありません(投手の基礎体力作りという観点から、良い練習なのかどうかは私には見当がつきません)。人間は本気で目的意識を持って意識的に集中するか、無意識に任せるかで、同じプロスポーツの選手でもここまで差が出ます。


逆に言えば、疲れずに生きていくために人間はかなりの言動を自動化しています。毎日同じ職場や、学校に通う人であれば、朝起きてから職場や学校につくまでの一連の行動は全てほとんど無意識のうちにやっています。職場についてからの仕事も人間関係も無意識のうちに処理していることが大部分です。


普段は無意識のうちにやっていることに気付きませんが、転職したり、進学したりして環境が大きく変わると、慣れるまでは大変だということに気付きます。まだ自動化できるところまで行っていないからです。ところが、一か月もすると人間は新生活に慣れ、自動化できるようになってきます。慣れてくると、進学当初、転職当初に感じていた負担や不安は消えてきます。それと同時にスコトーマが強固になってきます。必要な部分は自動化し、それ以外の部分は全てスコトーマにすることでエネルギーを節約するというシステムがもともと人間には備わっているからです。


このスコトーマが働けば、楽に生きることが出来る半面で、自分の能力を押し上げることを放棄してしまうことになります。年収400万円と1000万円どちらが良いかと聞かれたら、1000万円の方が良いと答えるに決まっています。でも、無意識は違います。無意識は、現在の年収が400万円であれば、そちらの方が慣れ親しんだ世界です。無意識にとってはオートメーションシステムを稼働することのできる年収400万円の方が心地よいのです。現状の外側に踏み出すことは、現在のオートメーションシステムを無効にし、新しくオートメーションシステムを作り直すことです。これが無意識にとって大変な作業であるということは、お分かりいただけると思います。


でも進学当初や就職・転職当初のことを思い出してみてください。慣れるまでにどのくらいかかりましたか?せいぜい1か月程度ではないでしょうか?ある人は入社半年で、「今の会社でエネルギーを有り余らせているから」とお薦めの副業案件はないかと聞いてきました。ということは、1か月に1回転職しても、何ら問題はないということです。やろうと思えば、自己変革はそのくらいの頻度で可能なのです。


勿論、このサイクルの長さはケースバイケースです。プロスポーツの世界は今も昔もアナログの世界です。寧ろ、専門化が進み、昔よりも選手の育成に時間がかかっているのが現状です。プロ野球を見ていても、高卒で活躍する選手の数が減り、逆に30を超えてから活躍する選手の数が増えています。プロスポーツ選手は全員個人事業主です。競争も激しく、自己変革を試みない選手など一人もいません。選手は全員今年大きな飛躍を遂げようという志を胸に抱いています。


でも、もし私がマラソンチームを持つなら、大卒なら5年、高卒なら7年くらいを最小スパンでサイクルを回します。取り組む姿勢に問題があるなら、1年目で解雇です。逆に予想に反して、1年目から大きく飛躍する選手も何割かはいるはずです。でも指導者になるなら、確率重視の健全なチーム運営を目指します。これは5年間のんびりと構えていても良いという意味ではありません。寧ろ、5年間苦しい思いに耐え続けて自己変革を続けても、5年は辛抱するつもりでやるべきだということです。自己変革を続けても、そのくらいのつもりでやった方が良い分野だと思います。


これに比べて、金融商品やインターネットサービスなどの無形商品を扱う業界のスピードは半端ではないです。インターネットが出てきてスピード化に加速がかかっているのは一つの要因ですが、インターネットが普及する前から無形商品のスピードは半端ではなく速かったです。かつての漫才ブームがそうです。漫才はアイディア勝負です。そこに時流が掛け合わさって、漫才ブームの頃は半年で収入が100倍になるということもあったようです。

このように分野や時流によってサイクルが変わることは頭に入れておく必要がありますが、スコトーマを外すことが鍵になるということに変わりはありません。


スコトーマを外す原動力

ではどうやったら、スコトーマを外せるのかということですが、それは自分の感情や直感に従って、即行動するということです。目標も単純に自分がやりたいものを目標にすべきです。何故、人間は現状維持の人生を歩んでしまうのかと言うと、考えてしまうからです。特に最悪なのは「自分に出来るかどうか」考えてしまうことです。考えたら、出来ない方に傾くに決まっています。人間の習性として、そうなってしまうのです。確率の問題だと思ってもらっても良いと思います。


極限の空腹状態にさらされ続けたら、パンを盗む確率は高くなります。盗まれた方も、飢え死にしそうなやせ細った骨と皮だけの子供から、パンを盗まれたら、余分にもう何個かパンを差し出したくなるでしょう。また魅力的な異性から、口説かれ続けたら浮気する人の割合は高くなります。だから、許せるかと言うと別の問題ですが、統計とか傾向という観点から考えると、まあそうなってしまいます。同様に、徹夜で授業に出てきた学生に集中して話を聞けと言っても、それは無理な話です。「前日最低限寝てから授業に出てこい」と言うべきです。


食欲、睡眠欲、性欲ははっきりと人間の行動の傾向を決めます。勿論、常に本能のままに生きているわけではありませんが、傾向としては決めてしまいます。人類のほぼ100%が、一日に一回は食事をして、一日に一回は睡眠をとり、一生のうちに一回は性行為をするということを考えれば、この傾向は無視することが出来ません。


それと同じくらい強固な傾向として、人間は考えれば、現状維持に傾きます。出来ない方に傾いてしまうのです。それでも出来てしまう人は、出来る自分が当たり前だからです。出来るというのが、強固な現状なのです。更に上を目指すのは難しくなりますが、とりあえず良くも悪くも今出来ていることは、出来ます。


ただ、現状の外側にどんどん踏み出していける人は、出来るか出来ないかなんて考えません。自分の感情や直感に従って走り出します。人間は心で動いています。そして、たいていのことはやっているうちに分かってしまうものです。逆に言えば、やらないうちは分からないことが多くなります。やっているうちに分かるということは、やるまでは分からないということです。ですから、「出来るならやる」という感覚を持っている人は、一生出来るようになりません。正しくは「やってるうちに出来るようになる」のです。


そして、自分の感情や直感に従って、行動することの最大のメリットは、毎日が楽しくなることです。幸せになることです。世の中に出ている成功法則や自己啓発本には、この観点が抜け落ちていることが多いです。満員電車に揺られて、都心の人混みをかき分けて、やりたくもない仕事をやって、年収が1000万円になったら成功みたいな定義をしていたら、そういう意味での成功を成し遂げても幸せにはなれませんし、毎日が楽しくありません。そもそも、成功を求めて出発している時点で、常に「出来るか出来ないか」という考えが付きまといます。出来るか出来ないかなんて考えたら、出来ないのです。例外もあるとは思いますが、傾向としてははっきり出てしまいます。ですから、世の中に多数ある「儲かるからやりませんか?」という仕事は、儲からないことが多いのです。「儲かるならやる」と思っている時点で、行動に制限がかかるので上手くいきません。それで上手くいくのはごく稀にいるビジネスオタクの人だけです。オタクレベルで、収益が上がることそのものが好きな人でないと上手くいきません。こういう人は、自分のポケットにお金が入ってこなくても、より効率の良いビジネスモデルを作ることが喜びです。


新庄選手は「1%の可能性があれば、出来る」と言っていますが、新庄選手は出来るから挑戦するわけではないと思います。現役時代、敬遠球をサヨナラヒットにしたり、オールスターゲームでホームスチールをしたり、規格外の本塁返球を見せたり、そういったプレーも出来るか出来ないかなんて考えてたら出来ないプレーです。その時々の直感に従って、即行動したのだと思います。私達は野球のように数分間からコンマ何秒という時間に決断する必要はありません。せめて、思い立ったらその日に行動するくらいの即断即決を習慣にしてみませんか?


今回はスコトーマをテーマにした記事でした。スコトーマについて、より詳しく知りたい方は『これから結果を出す人のための自信の作り方』を参照してください。

 

#新庄剛志#スコトーマ#現状打破#池上秀志#これから結果を出す人のための自信の作り方

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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