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執筆者の写真池上秀志

レースが続く時に覚えておいてほしいたった1つのおススメワークアウト

 昨日公開させて頂いた「5週連続のレースで3つの区間新記録と区間賞 レースとレースの間の練習の組み方」はもうお読みになられましたか?


 まだお読みになられていない方は必ず参考になりますので、こちらをクリックしてお読みください。


 さて、今回のテーマはレースが続く時に覚えておいてほしいおススメのワークアウト厳選の1つです。


 そもそもの話ですが、このレースというのはテストレースや練習レースのことではありません。ピークを一度作った後に、なるべくその状態を維持してレースを何本か走る時の状態の話です。


 人間というのは本当のピークというのは年に二回くらいしか作れません。一本のレースに向けて最高の状態を作るには休養期間も含めて4-6か月くらいは必要となります。ただ、その期間レースには一本しか出ないということではありません。


 例えば、非常にオーソドックスなパターンとしては、マラソンにピークを持ってくるのに半年の計画を立てると初めの1,2か月で基礎トレーニングを組んで、そのままトラックレースやロードレースに出場して、短い距離をある程度速く走れるようにしておき、それから調整期間含めて本格的に約3か月間のマラソントレーニングに入っていくというようなパターンが非常にオーソドックスです。


 マラソンの場合は、一回レースに出たら、普通はもう一度しっかりと休養期間を設けてまた一から組み上げていくのが通常のやり方です。


 ただ、市民ランナーの中にはもっとたくさんレースに出たいという方もいらっしゃいますし、また日本の場合は気候の関係で記録が出るのは11月から3月までの間です。しかも、11月のマラソンに向けて3か月のマラソントレーニングを組むとすると、開始が8月になってしまいます。


 とてもではないですが、良い距離走は出来ません。どんな環境でもやりようがあるのは事実ですし、実際にそういった環境の中でも記録が出せる方法はお伝えさせて頂いてきました。


 でも、やっぱり実業団や高校、大学の強豪校のように涼しいところで合宿をして走り込むというのとはまた違います。どんな環境でもやりようはありますが、やはり条件が変わるとやれる範囲は変わってきます。


 そういう意味で比較した時に、2月のマラソンに向けて3か月のマラソントレーニングを組むと、開始は11月です。同じ距離走をするにも疲労も残りにくく、質も比較的上げやすいです。


 では、初めからレースを一本に絞れば良いのかというと答えはイエスなのですが、やっぱり神戸マラソンが良いとか、岡山マラソンが良いとか、富山マラソンが良いとか色々ある訳ですよ。


 また、抽選だと当たるか外れるかの問題もあり、とりあえず応募して当選したら出場しようということになりがちです。そうしないと、初めから一本のレースに応募して落選したらレースがなくなってしまいますから。


 そんな訳で、一度ピークを作って、他にもマラソンを走るけれど、そのマラソンに向けてはまた半年かけて一から体を作っていく時間がないというようなケースが普通になってくる訳です。


 また、トラックレースやロードレースをする選手であれば、一度ピークの状態を作ったら、そこから連戦になるというケースも全然珍しくありません。というか、寧ろ普通だと言えるでしょう。そういった連戦の間の練習をどのように組むのかということは一つ大きなテーマになります。


 レースとレースの間の練習で負荷が高すぎると、前のレースからの回復が遅れ、次のレースで良い結果を残すことが出来なくなります。


 一方で、あまりにも練習が軽すぎると走力が低下し、次のレースで自分の力を発揮できなくなってしまいます。一体、どのような練習を組むのが良いのでしょうか?


 これを考えるにあたっては、長距離走の疲労はどうすれば良いのかと考える必要が出てきます。


 というのは、短距離や野球、ジムでの筋トレなどの瞬発系種目とは疲労の抜け方が違うからです。どんな種目でも全身疲労があるのは当然です。例えば、野球選手であれば、試合だけでも3時間ありますし、その前の練習時間なども入れると6時間とか、かなり長期にわたって体を動かします。


 そして、高い集中力が要求されるので、神経も疲れます。


 ただ、比較で言えば骨格筋系へのダメージが大きくなります。つまり筋肉の疲労で、筋肉がほぐれればまた元通りのパフォーマンスが発揮できるようになるのです。骨格筋の損傷は肉離れなどのひどいものでなければ、それほど回復に時間はかからず3日もすればほとんど回復するのではないかと思います。


 プロ野球選手の場合はシーズン中は週に1回の移動日を挟んでずっと試合が続くので満身創痍になるそうですが、短距離の選手なんかは試合は週末だけなので比較的回復は速いのではないかと思います。


 ただ、持久系種目の場合は、骨格筋と神経系、ホルモン系、免疫系、呼吸循環器系などの様々な系(システム)へのダメージが割と均等にかかります。その為、3日間休んだらそれで完全に回復するかというと、そうでもなく日にち薬が必要となります。


 つまり、完全に休んでおけば2日で回復するというよりは1週間とか2週間とかかけて徐々に疲労を抜いていく必要があるのです。


 ところが、持久系種目のもう一つの特徴として、能力が落ちやすいというものがあります。2日間の完全休養くらいであれば、ほとんど影響はないと思いますが、3日間完全休養すると完全に走力は低下します。


 また、骨格筋を中心とする軟部組織(靱帯、腱、筋肉)の持久力が低下すると、故障しやすくなってしまいます。レースが続く中で故障してしまうと、かなり大きな問題となります。また、持久系酵素が低下したり、ミトコンドリアの機能が低下したりすると、疲れも抜けにくくなります。いわゆる基礎体力が低下するので、そのあと練習した時に、ダメージが残りやすくなってしまうのです。


 レースとレースの間の期間がどのくらいあるかにもよりますが、せっかく培ってきた基礎体力や有酸素的土台は崩さないように維持しながら、疲労を抜いていくのが良い状態を維持するカギとなります。


 そうなった時に、有効活用して頂きたいのが、低強度から中強度の持久走です。低強度から中強度の持久走というのはウォーミングアップがてらゆっくりと走り始めて、体が温まって、気持ちも乗ってきて、リズムが掴めて来たら徐々にペースを上げていって、最後の数キロはしっかりとペースを上げて、走り終えるようなそういう練習です。


 具体例として、私が昨日実施した25キロの低強度から中強度の持久走の1キロごとのラップタイムを以下に列挙致します。


4:57

4:31

4:28

4:26

4:34

4:19

4:24

4:13

4:19

4:14

4:13

4:06

4:03

4:04

4:04

4:03

4:07

4:07

4:03

4:00

3:51

3:45

3:38

3:30

3:16


Total 1:43:25


 かなりゆっくりから走り始めて体温まったら徐々にペースを上げて、最後は明らかにペースを上げているのがお分かりいただけると思います。この日の練習は25キロなので、練習の負荷としては少し高めにはなってしまいますが、私の場合15キロ前後の距離であれば、疲労を抜きながら、この練習で良い状態を維持することが出来ます。


 ちなみに11月13日、11月20日と二週連続でハーフマラソンに出場した後、3日間積極的休養、次の日は17キロの低強度から中強度走、25キロの低強度から中強度走という流れでした。二週連続のハーフマラソンとあって、ダメージがしっかりと残っていました。


 ダメージがしっかりと残っているということは自分の力はしっかりと出せたのだと思います。残念ながら、風がきつくて両レースとも67分台でしたが、最後まで競り合う相手がいて、ラストスパートで勝負することになったので、しっかりと追い込めたのだと思います。


 低強度から中強度走でのポイントはあくまでもリラックスして走ることです。最後の数キロは意図的にリズムを上げていきますが、それまではリラックスして楽だと感じる強度で走ることが大切です。


 タイムを気にする必要はありません。あくまでも疲労の回復をベースとしたトレーニングでありながら、最後に少し有酸素刺激をつけ足すのがこの練習の目的です。私の場合は最後の3キロくらいから徐々にペースを上げて、最後の1キロはしっかりとペースを上げて、最後の200mくらいはレースペースで走って終えるのがお気に入りのやり方です。そこから、家まで1キロから2キロくらい軽くクーリングダウンをして終えます。


 この練習をすると、スピード練習をしなくても驚くほど長期にわたって走力を維持することが出来ます。また、スピード練習をしないと、精神的にもリフレッシュ出来て、次のレースが待ち遠しくなります。やっぱり、人間っていつもいつも自分にプレッシャーをかけてタイムを測って、練習しているとそれが負担に感じられるようになる一方、あまりにもそれをやらないと逆に、自分にプレッシャーをかけて、また燃えるような戦いの場に身をおきたいと思うものだと思います。


 闘争の連続、挑戦の連続、不確実な出来事の連続では疲れるかもしれませんが、刺激がない人生もまたつまらないものです。そうやって、精神的にもハングリーな状態、刺激を求めている状態、適度なプレッシャーやストレスを求めている状態にもっていくことが出来れば、レースでも持っている力を発揮しやすくなります。


 この距離と強度の設定の仕方については、その人の走力にやっても変えるべきです。性格的なものも含まれるかもしれません。私はある程度ゆっくり長く走った方が筋肉もほぐれやすいですし、精神的にもリラックスできます。それで、最後に気持ちよくペースを上げて、終えるイメージです。


 一方で、8キロとか10キロとかの短い距離を低強度から中強度で走ったり、その距離を中強度で走る方が良い選手もいます。これはトップランナーの間でも性格的な違いが現れるところだと思いますが、単純に走力の問題もあります。


 例えば、今の私であれば走歴も長く、15キロから20キロの低強度から中強度走であれば、疲労を回復させながら取り組むことのできる練習です。ただ、中学生、高校生の頃はまだそこまでの基礎体力がなかったので、練習量はもっとおさえないと試合で良い走りをすることは不可能でした。


 中学生の頃なら8キロ、高校生の頃なら15キロが上限で、12キロくらいまでに抑えておいた方が良かったように思います。基礎体力の違いです。ですから、距離に関してはあなたの走力に応じて変更する必要がありますし、またペースに関しては自分の感覚に従って取り組む必要があります。


 自分の感覚に従って、取り組むと言っても難しい話ではあると思います。ただ、これに関しては数字的な基準を設けない方が良いんです。この練習の目的は疲労の回復を中心としながら、最後に少し有酸素刺激をかけることです。ですから、自分がリラックスして、楽だと感じるペースがその大半を占めるべきです。


 ただ、遅すぎてもやっぱり疲れるじゃないですか。疲れるというか、気持ちよくはないですよね。やっぱり、自分にとって気持ちの良いペースがあると思います。そのペースで走って、最後の1キロをレースに近い感覚で走る、その為の助走として最後の3キロくらいからペースを徐々に上げていくというようなイメージです。


 実際には、私は最後の1キロというよりは最後の200mくらいだけレースペースで走るようなイメージです。そこまで、常にリラックスしてリズムよく、ペースを上げていってリラックスしてレースペースで走るイメージを持って終わるようにしています。


 この練習の最大のメリットはハードな練習をせずに、走力を維持する期間を非常に長くとることが出来るということです。繰り返しになりますが、長距離走の場合は、完全休養をまとめてとって疲労を抜くよりは、ハードな練習をしない期間を長くとって、疲労を抜いていく方が良いコンディションを維持することが可能になります。


 ハードな練習をしない期間を長くとるという意味においては、スピード練習の全てがダメだということはなくて、200m15本などの疲労が残らないスピード練習を間に入れても良いと思います。追い込むのではなく、あくまでも流しの延長として余裕をもってレースペースを繰り返すんです。


 また、低強度から中強度走をやっておけば、そこで刺激が入るので、この練習を毎日しなくても、積極的休養やジョギングと組み合わせて行ってもかなり長期にわたって、走力を維持することが出来ます。


 例えば、25キロの低強度から中強度走の次の日の練習は朝に10キロの低強度走、午後に10キロジョギングです。このようにして、若干の強弱はつけるようにしています。


 また、100m10本や200m5本の流し、100m5本のスプリントなどの補助的スピード練習と組み合わせるのも有効なやり方です。繰り返しになりますが、レースで結果を出すには半年くらい遡って戦略的に練習を組むことが大切です。その過程の中で、やるべき時期にやるべき練習は全てやっているはずです。


 そうやって、一度ピークを作ったら一番重要なことはハードな練習をなるべく避けながら状態を長く維持することになります。


 レースとレースの間の練習の組み方についてもっと詳しく学びたいという方の為に100分間の講義動画をご用意いたしました。11月30日までの限定配信となりますので、興味のある方は今すぐこちらからお申し込みください。



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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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