今回のテーマは「ランナーが地味に知っておくべき1つのこと」です。今回は重要なのか、重要じゃないのか分かりにくいタイトルをつけてしまいました。世の中にはランニングをやるなら絶対に知っておくべきことから、全てのランナーに知ってほしいことまでいろいろあるのですが、今回のテーマはまあ知らなくても特に困らないことかもしれないけれど、場合によっては人生を左右しない地味に重要なことです。
これを書こうと思ったのは、この前関西実業団選手権に出場した時のことです。10000mと5000mの二種目に出場して、初日の10000mはシューズの規定が変わったのを知らなくて失格になったのですが、ウォーミングアップまでは長居の第一競技場でやっていました。逆の言い方をするとウォーミングアップしかしていなかったのですが、実は次の日若干筋肉痛になっていたんです。ちょっとジョギングして、流しをしただけなのですが、その流しで筋肉痛になりました。これで高校3年生のあの日を思い出しました。
私が高校3年生の近畿インターハイ、私は1500mと5000mの二種目に出場しました。近畿インターハイは木曜日から日曜日までの4日間にわたって開催され、私は初日1500mの予選、二日目1500mの決勝、三日目あけて、4日目5000mの決勝というスケジュールでした。でこの時も長居の第一競技場だったんです。走ったことある人はお分かり頂けると思うのですが、長居の第一競技場は高速タータンと言われており、記録が出やすいと言われています。下が固くて反発が強いと言われているんです。
そして、私たちは水曜日に長居に入りました。1500mの予選の前日300m二本だけやったのですが、私自身はどこでやったのか記憶にありません。おそらく第一競技場でやったと思うのですが、記憶にありません。とにかく第一競技場にその日いたことだけは覚えています。その時短距離の一人が肉離れして走れなくなっていました。彼は4x100mのメンバーに入っており、重要なメンバーだったのですが、前日に肉離れしたら、ゴッドハンドが出てきたところでどうにもなりません。
その彼が言うには「今まで出したことないスピードが出た。と思った瞬間バチン!って音がしました」とのことでした。彼は一年後には4x100mリレーで日本高校記録を樹立するほどの選手でした。まあそんな貴重な戦力を失っても問題なく、近畿を勝ち抜く洛南高校陸上競技部の短距離の強さは群を抜いていたのですが、それはともかく、彼は高速タータンがあだとなり、近畿インターハイを欠場せざるを得なくなりました。
ちなみに私も長居の第一競技場で1500m予選、決勝、5000mと走って故障しました。まあ、私の場合は1500m、5000mの二種目ともで9位にしかなれなくてインターハイに行けなかった悔しさと次は駅伝や!という気持ちから、レースが終わってすぐに長居の外周で一人でもう一回5キロ一本を入れるといういらんこともしているのですが・・・
私はタータントラックについては他にも悲しい思い出があります。私は2016年からずっと慢性的な足底筋膜炎を抱えたまま競技を続けていました。2018年のデュッセルドルフマラソンではそれが悪化して、強行出場したものの途中棄権せざるを得ず、レース後はまともに歩くことも出来ず、帰りの飛行機ではギプスをはめたまま帰国する羽目になりました。絶望はしていたものの、また少しずつトレーニングを始めた2018年のシーズン、過去最高のトレーニングが出来ていました。2km6本から7本を6分ちょうどから5分55秒で走り、つなぎは1km3分15秒みたいな練習も余裕をもってこなせて、40キロ走もラスト10キロを余裕をもって32分台で行けていました。特別な練習は何一つ出来ていませんでしたが、余裕度とタイムを考えたら、マラソン当日も2時間10分前後では行けるだろうと思っていました。30キロ過ぎてどうなるかということは分からないにしても、3分4秒ペースで余裕をもって、30キロまでは行けるだろうと思っていました。そして、30キロまでそのペースで余裕をもっていけていれば、残りの12キロで多少ペースダウンしても2時間11分から12分では帰ってこれます。
30キロで急にキタというような話を聞きますが、実際にはそのようなことはありえなくて、30キロ過ぎてペースダウンするということはもう30キロの時点でいっぱいいっぱいだということです。そして、このシーズン私は土トラックとアスファルトでしか走っていませんでした。それにもかかわらず、レースの二週間前に日体大記録会に出たいとコーチに言いました。というのも、私のコーチは結構レースの直前まで練習を詰め込む人だからです。そして、練習が出来ないと言えば、「完璧な準備が出来ないなら、レースに出る意味もない」と返されてしまいます。
そこで、私は一計を案じて二週間前に10000mの記録会に出たいと言ったのです。二週間前に10000mを入れるとその前一週間くらいは軽めの練習になり、10000mのレースの時点でマラソンの二週間前なので、いずれにしてもここからは30キロ走を一本だけやって、後は軽めの練習を入れてマラソンです。10000mのレースや30キロ走、8日前の10キロ走が良いアクセントになって、良い感じでレースに向けて仕上がるだろうと思いました。そして、何故ロードレースではなく、10000mの記録会にしたかと言うと、直前に申し込み可能なロードレースはそうそうないということと、ロードレースの場合はアマチュアな運営をしているところが多く、しばしばやたらと折り返しが多かったり、カーブが多かったり、前の選手(といっても一周遅れの選手や別種目の選手)が道をふさいでいたりすることがあり、そういったストレスを回避したかったからです。
ところが、その時コーチは「長い間タータントラックで走っていなくて、なおかつ足底筋膜炎を抱えているなら、トラックレースはリスキーだ。お前は大丈夫だと思うのか?」と聞かれました。ここで「出るな」と言われれば私にとってコーチの意見は絶対ですが、「大丈夫だと思うのか?」と言われたので、素直に「大丈夫だと思います」と答えました。この見通しが結果的には凶と出ました。私の判断が間違っていたんですね。
レース当日は予定通り、マラソンのイメージを持ちつつもマラソンよりも少し速いペースで70秒台のラップを刻み続けました。遅めの組に入れられたこともあり、1000mから独走で、そのまま練習と同じような感覚でゴールを目指し走りました。ところが、残り2周まで来た時です。左足に鈍い痛みが走りました。一瞬ヤバいかなと思ったのですが、残り2周ですから、何とかなるだろうと思い、そのまま走りました。勿論、集中しているので、残り2周くらいなら痛みは消せます。レースは29分半の設定だったので29分26秒と予定通りでした。ところが、クーリングダウンが終わって冷えてくると痛みが急に増しました。
結局、その後私は大阪マラソンの5日前まで走れませんでした。その時点でどうせこのまま走れないなら、棄権しても同じことだと思い、傷む足を無理やり動かし、最低限の練習をしてスタートラインに立ちました。当日は脚が痛むこと以外は完ぺきに思えました。しかしながら、17キロ過ぎから同じように脚を動かしているつもりなのに左右のバランスが完全に崩れびっこを引き始めました。沿道から「あの人大丈夫かな」という声が耳に入りだします。集中力も切れて気づいたらジョギングしか出来ませんでした。そのくらいびっこを引いていました。このレースでの優勝タイムは2時間14分、同じ先頭集団で走っていても自分が一番余裕があることが感じられました。勝負の世界にたらればはありませんが、あのレースで優勝すべきだった選手は今でも自分だと思っています。もちろん、他の選手だって100%の状態ではなく、その時々の状況の中でベストを尽くしたはずです。それは私も同じなのですが、いわゆるボーンヘッドで勝てるレースを落としたことは否めません。
それはともかく、ここから学べる教訓はレースでの路面に慣れておいた方が良いということです。レースが土トラックなら土トラックを走って感覚を掴んでおく、レースが芝生なら芝生の感覚を掴んでおく、レースがアスファルトならアスファルトの感覚を掴んでおくということが地味に重要です。私の場合は、メインとなるレースがマラソンであるがゆえに、メインとなる練習は全てアスファルトでやっていたのですが、確かにそれならタータントラックでは走らない方が良かったのでしょう。ちなみにですが、ナイキのヴェイパーフライ4%フライニットを昔使っていたことがあるのですが、あの靴の感覚とタータントラックの感覚が非常に似ています。そういう意味で言えば、技術開発により、普通のアスファルトでもタータントラックのような反発が得られるようになったということなのでしょう。そう考えると、1周5キロのタータントラックを作ることと比べるとかなり安上がりなのかもしれませんね。
長居の第一競技場のように普段は走れないところもあるので、仕方のない部分もあるのですが、ロードレースならアスファルトに慣れる、クロスカントリーをやるなら芝生でインターバルをするというのは、心理的にも肉体的にも準備をするうえで地味に重要だと思います。
ただ、レースがアスファルトだからと言って常に、アスファルトを走れば良いのかというとそうでもありません。アスファルトやコンクリートの道は芝生や土の道に比べて脚にかかる負担が大きいので普段の練習には望ましくありません。日本は土の道が非常に限られているので、仕方のない面も大きいのですが、可能ならば土や芝生の道でのランニングが望ましいです。これは別に根性論的に「走りにくいところで走って鍛える」みたいなことを言っている訳ではなくて、単純に脚への負担を減らすためです。そして、芝生のコースを走ると脚筋力が鍛えられるのもまた事実です。芝生のコースを走るもう一つのメリットはアップダウンのきついコースを走っても故障のリスクが低いということです。
私はクロスカントリー的な起伏のあるコースでの練習はあまり好きではありません。どうしても力を入れたり、抜いたりしてリズムを変えながら走らないといけないからです。私が大好きなのは、ある程度速いペースで走っているにもかかわらず力を使わずにリズムだけで走れる感覚がつかめる時です。でも、同時に私は時期によってはクロスカントリーを多用します。何故なら、起伏のあるコースを走ることで、脚筋力が高まり、故障の予防になりますし、ある意味では登り下りが良いアクセントになって楽に追い込めるからです。ただ、この時に問題となるのは下り坂です。登り坂は良いのですが、下り坂は故障のリスクがどうしても高くなります。この時に、芝生の下りとアスファルトの下りでは脚にかかる負担が全く違い、芝生やウッドチップ、土の道ならある程度の下りでも思い切って下って行っても大丈夫なんです。
では、いつでも芝生や土の道の方が故障のリスクが高いかと言うとそうでもありません。場合によっては、芝生の道や土の道の方がリスクが高いことがあります。どういう時かというと、膝下に痛みや違和感を抱えている場合です。膝下の故障(シンスプリント、アキレス腱炎)や更に下の故障(後脛骨筋炎、腓骨筋炎などなど)を抱えている場合はそもそもふくらはぎの筋肉、踵周りの筋肉、足底の筋肉などが慢性的に凝り固まっており、腓骨、脛骨、足首関節、足関節にロックがかかり力が上手く逃げてくれなくなっていることがほとんどです。ある程度、まっすぐに力をかければそれほど問題ないのですが、オフロードの場合は地面にでこぼこがあり、必ずしも足をまっすぐにつけません。アスファルトの道でも極端に横に傾いている道は同様です。普段なら柔軟に足首関節や足関節が横の動きに合わせて動いてくれるので、地面が傾いていようがでこぼこがあろうが力がまっすぐ前に(後ろに?)逃げてくれるのですが、このあたりの関節の動きがないと、力が痛みのある個所にダイレクトにかかってしまいます。このようなケースでは、自分の足が痛くない平らなアスファルトを走る必要があります。
これはトラックの右回りと左回りについてもいえることです。故障によっては、右回りと左回りで負担のかかる方向が違うんです。そういう意味で行ったときに、私は大学時代よく周りから「よく一人でそれだけの練習やるな」と言われていたのですが、「一人だからこそやれた」部分もあると思います。それは右回りでやるのか、左回りでやるのか、どこの練習コースでやるのかということを自分で自由に決めることが出来たからです。私が自己ベストやその他良い結果を出した時、常に故障するか故障しないかのギリギリを攻めて練習していました。私は今でも、どれだけスマートに練習しても自分の潜在能力を全て発揮するには、故障するか故障しないかのギリギリのところ、オーバートレーニングになるかならないかのギリギリのところを攻めないと駄目だと思っています。それが裏目に出ることも多かったので、周りからは「馬鹿だ」と言われることも多々ありましたが、これは確率の問題です。ダメだった時にだけに目を向ければ「馬鹿だ」という評価になるでしょうが、薄氷を踏むような賭けに勝った時に出せた結果が私の公式ウェブサイトの主な実績覧に書いてある結果です(それでもそんなに大したことはないけど)。
話を元に戻しますが、そこまでぎりぎりを攻めてやった結果なので常に痛みを抱えながら練習しており、練習場所をどこにするのかとかトラックは右回りにするのか、左回りで走るのか(ロードの周回コースも同様)は私にとっては地味に重要なことだったのです。コインの表と裏は表裏一体とよく言いますが、練習相手のいない方にとっては一人でしか走れないというのにはメリットもある訳ですから、是非練習場所は工夫してみてください。
最後に一つだけ、アキレス腱に痛みを抱えている人と足底筋膜炎を抱えている人は登り坂、芝生、タータントラックでの練習はなるべく避けた方が良いです。ご参考になれば幸いです。
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これを書こうと思ったのは、この前関西実業団選手権に出場した時のことです。10000mと5000mの二種目に出場して、初日の10000mはシューズの規定が変わったのを知らなくて失格になったのですが、ウォーミングアップまでは長居の第一競技場でやっていました。逆の言い方をするとウォーミングアップしかしていなかったのですが、実は次の日若干筋肉痛になっていたんです。ちょっとジョギングして、流しをしただけなのですが、その流しで筋肉痛になりました。これで高校3年生のあの日を思い出しました。
私が高校3年生の近畿インターハイ、私は1500mと5000mの二種目に出場しました。近畿インターハイは木曜日から日曜日までの4日間にわたって開催され、私は初日1500mの予選、二日目1500mの決勝、三日目あけて、4日目5000mの決勝というスケジュールでした。でこの時も長居の第一競技場だったんです。走ったことある人はお分かり頂けると思うのですが、長居の第一競技場は高速タータンと言われており、記録が出やすいと言われています。下が固くて反発が強いと言われているんです。
そして、私たちは水曜日に長居に入りました。1500mの予選の前日300m二本だけやったのですが、私自身はどこでやったのか記憶にありません。おそらく第一競技場でやったと思うのですが、記憶にありません。とにかく第一競技場にその日いたことだけは覚えています。その時短距離の一人が肉離れして走れなくなっていました。彼は4x100mのメンバーに入っており、重要なメンバーだったのですが、前日に肉離れしたら、ゴッドハンドが出てきたところでどうにもなりません。
その彼が言うには「今まで出したことないスピードが出た。と思った瞬間バチン!って音がしました」とのことでした。彼は一年後には4x100mリレーで日本高校記録を樹立するほどの選手でした。まあそんな貴重な戦力を失っても問題なく、近畿を勝ち抜く洛南高校陸上競技部の短距離の強さは群を抜いていたのですが、それはともかく、彼は高速タータンがあだとなり、近畿インターハイを欠場せざるを得なくなりました。
ちなみに私も長居の第一競技場で1500m予選、決勝、5000mと走って故障しました。まあ、私の場合は1500m、5000mの二種目ともで9位にしかなれなくてインターハイに行けなかった悔しさと次は駅伝や!という気持ちから、レースが終わってすぐに長居の外周で一人でもう一回5キロ一本を入れるといういらんこともしているのですが・・・
私はタータントラックについては他にも悲しい思い出があります。私は2016年からずっと慢性的な足底筋膜炎を抱えたまま競技を続けていました。2018年のデュッセルドルフマラソンではそれが悪化して、強行出場したものの途中棄権せざるを得ず、レース後はまともに歩くことも出来ず、帰りの飛行機ではギプスをはめたまま帰国する羽目になりました。絶望はしていたものの、また少しずつトレーニングを始めた2018年のシーズン、過去最高のトレーニングが出来ていました。2km6本から7本を6分ちょうどから5分55秒で走り、つなぎは1km3分15秒みたいな練習も余裕をもってこなせて、40キロ走もラスト10キロを余裕をもって32分台で行けていました。特別な練習は何一つ出来ていませんでしたが、余裕度とタイムを考えたら、マラソン当日も2時間10分前後では行けるだろうと思っていました。30キロ過ぎてどうなるかということは分からないにしても、3分4秒ペースで余裕をもって、30キロまでは行けるだろうと思っていました。そして、30キロまでそのペースで余裕をもっていけていれば、残りの12キロで多少ペースダウンしても2時間11分から12分では帰ってこれます。
30キロで急にキタというような話を聞きますが、実際にはそのようなことはありえなくて、30キロ過ぎてペースダウンするということはもう30キロの時点でいっぱいいっぱいだということです。そして、このシーズン私は土トラックとアスファルトでしか走っていませんでした。それにもかかわらず、レースの二週間前に日体大記録会に出たいとコーチに言いました。というのも、私のコーチは結構レースの直前まで練習を詰め込む人だからです。そして、練習が出来ないと言えば、「完璧な準備が出来ないなら、レースに出る意味もない」と返されてしまいます。
そこで、私は一計を案じて二週間前に10000mの記録会に出たいと言ったのです。二週間前に10000mを入れるとその前一週間くらいは軽めの練習になり、10000mのレースの時点でマラソンの二週間前なので、いずれにしてもここからは30キロ走を一本だけやって、後は軽めの練習を入れてマラソンです。10000mのレースや30キロ走、8日前の10キロ走が良いアクセントになって、良い感じでレースに向けて仕上がるだろうと思いました。そして、何故ロードレースではなく、10000mの記録会にしたかと言うと、直前に申し込み可能なロードレースはそうそうないということと、ロードレースの場合はアマチュアな運営をしているところが多く、しばしばやたらと折り返しが多かったり、カーブが多かったり、前の選手(といっても一周遅れの選手や別種目の選手)が道をふさいでいたりすることがあり、そういったストレスを回避したかったからです。
ところが、その時コーチは「長い間タータントラックで走っていなくて、なおかつ足底筋膜炎を抱えているなら、トラックレースはリスキーだ。お前は大丈夫だと思うのか?」と聞かれました。ここで「出るな」と言われれば私にとってコーチの意見は絶対ですが、「大丈夫だと思うのか?」と言われたので、素直に「大丈夫だと思います」と答えました。この見通しが結果的には凶と出ました。私の判断が間違っていたんですね。
レース当日は予定通り、マラソンのイメージを持ちつつもマラソンよりも少し速いペースで70秒台のラップを刻み続けました。遅めの組に入れられたこともあり、1000mから独走で、そのまま練習と同じような感覚でゴールを目指し走りました。ところが、残り2周まで来た時です。左足に鈍い痛みが走りました。一瞬ヤバいかなと思ったのですが、残り2周ですから、何とかなるだろうと思い、そのまま走りました。勿論、集中しているので、残り2周くらいなら痛みは消せます。レースは29分半の設定だったので29分26秒と予定通りでした。ところが、クーリングダウンが終わって冷えてくると痛みが急に増しました。
結局、その後私は大阪マラソンの5日前まで走れませんでした。その時点でどうせこのまま走れないなら、棄権しても同じことだと思い、傷む足を無理やり動かし、最低限の練習をしてスタートラインに立ちました。当日は脚が痛むこと以外は完ぺきに思えました。しかしながら、17キロ過ぎから同じように脚を動かしているつもりなのに左右のバランスが完全に崩れびっこを引き始めました。沿道から「あの人大丈夫かな」という声が耳に入りだします。集中力も切れて気づいたらジョギングしか出来ませんでした。そのくらいびっこを引いていました。このレースでの優勝タイムは2時間14分、同じ先頭集団で走っていても自分が一番余裕があることが感じられました。勝負の世界にたらればはありませんが、あのレースで優勝すべきだった選手は今でも自分だと思っています。もちろん、他の選手だって100%の状態ではなく、その時々の状況の中でベストを尽くしたはずです。それは私も同じなのですが、いわゆるボーンヘッドで勝てるレースを落としたことは否めません。
それはともかく、ここから学べる教訓はレースでの路面に慣れておいた方が良いということです。レースが土トラックなら土トラックを走って感覚を掴んでおく、レースが芝生なら芝生の感覚を掴んでおく、レースがアスファルトならアスファルトの感覚を掴んでおくということが地味に重要です。私の場合は、メインとなるレースがマラソンであるがゆえに、メインとなる練習は全てアスファルトでやっていたのですが、確かにそれならタータントラックでは走らない方が良かったのでしょう。ちなみにですが、ナイキのヴェイパーフライ4%フライニットを昔使っていたことがあるのですが、あの靴の感覚とタータントラックの感覚が非常に似ています。そういう意味で言えば、技術開発により、普通のアスファルトでもタータントラックのような反発が得られるようになったということなのでしょう。そう考えると、1周5キロのタータントラックを作ることと比べるとかなり安上がりなのかもしれませんね。
長居の第一競技場のように普段は走れないところもあるので、仕方のない部分もあるのですが、ロードレースならアスファルトに慣れる、クロスカントリーをやるなら芝生でインターバルをするというのは、心理的にも肉体的にも準備をするうえで地味に重要だと思います。
ただ、レースがアスファルトだからと言って常に、アスファルトを走れば良いのかというとそうでもありません。アスファルトやコンクリートの道は芝生や土の道に比べて脚にかかる負担が大きいので普段の練習には望ましくありません。日本は土の道が非常に限られているので、仕方のない面も大きいのですが、可能ならば土や芝生の道でのランニングが望ましいです。これは別に根性論的に「走りにくいところで走って鍛える」みたいなことを言っている訳ではなくて、単純に脚への負担を減らすためです。そして、芝生のコースを走ると脚筋力が鍛えられるのもまた事実です。芝生のコースを走るもう一つのメリットはアップダウンのきついコースを走っても故障のリスクが低いということです。
私はクロスカントリー的な起伏のあるコースでの練習はあまり好きではありません。どうしても力を入れたり、抜いたりしてリズムを変えながら走らないといけないからです。私が大好きなのは、ある程度速いペースで走っているにもかかわらず力を使わずにリズムだけで走れる感覚がつかめる時です。でも、同時に私は時期によってはクロスカントリーを多用します。何故なら、起伏のあるコースを走ることで、脚筋力が高まり、故障の予防になりますし、ある意味では登り下りが良いアクセントになって楽に追い込めるからです。ただ、この時に問題となるのは下り坂です。登り坂は良いのですが、下り坂は故障のリスクがどうしても高くなります。この時に、芝生の下りとアスファルトの下りでは脚にかかる負担が全く違い、芝生やウッドチップ、土の道ならある程度の下りでも思い切って下って行っても大丈夫なんです。
では、いつでも芝生や土の道の方が故障のリスクが高いかと言うとそうでもありません。場合によっては、芝生の道や土の道の方がリスクが高いことがあります。どういう時かというと、膝下に痛みや違和感を抱えている場合です。膝下の故障(シンスプリント、アキレス腱炎)や更に下の故障(後脛骨筋炎、腓骨筋炎などなど)を抱えている場合はそもそもふくらはぎの筋肉、踵周りの筋肉、足底の筋肉などが慢性的に凝り固まっており、腓骨、脛骨、足首関節、足関節にロックがかかり力が上手く逃げてくれなくなっていることがほとんどです。ある程度、まっすぐに力をかければそれほど問題ないのですが、オフロードの場合は地面にでこぼこがあり、必ずしも足をまっすぐにつけません。アスファルトの道でも極端に横に傾いている道は同様です。普段なら柔軟に足首関節や足関節が横の動きに合わせて動いてくれるので、地面が傾いていようがでこぼこがあろうが力がまっすぐ前に(後ろに?)逃げてくれるのですが、このあたりの関節の動きがないと、力が痛みのある個所にダイレクトにかかってしまいます。このようなケースでは、自分の足が痛くない平らなアスファルトを走る必要があります。
これはトラックの右回りと左回りについてもいえることです。故障によっては、右回りと左回りで負担のかかる方向が違うんです。そういう意味で行ったときに、私は大学時代よく周りから「よく一人でそれだけの練習やるな」と言われていたのですが、「一人だからこそやれた」部分もあると思います。それは右回りでやるのか、左回りでやるのか、どこの練習コースでやるのかということを自分で自由に決めることが出来たからです。私が自己ベストやその他良い結果を出した時、常に故障するか故障しないかのギリギリを攻めて練習していました。私は今でも、どれだけスマートに練習しても自分の潜在能力を全て発揮するには、故障するか故障しないかのギリギリのところ、オーバートレーニングになるかならないかのギリギリのところを攻めないと駄目だと思っています。それが裏目に出ることも多かったので、周りからは「馬鹿だ」と言われることも多々ありましたが、これは確率の問題です。ダメだった時にだけに目を向ければ「馬鹿だ」という評価になるでしょうが、薄氷を踏むような賭けに勝った時に出せた結果が私の公式ウェブサイトの主な実績覧に書いてある結果です(それでもそんなに大したことはないけど)。
話を元に戻しますが、そこまでぎりぎりを攻めてやった結果なので常に痛みを抱えながら練習しており、練習場所をどこにするのかとかトラックは右回りにするのか、左回りで走るのか(ロードの周回コースも同様)は私にとっては地味に重要なことだったのです。コインの表と裏は表裏一体とよく言いますが、練習相手のいない方にとっては一人でしか走れないというのにはメリットもある訳ですから、是非練習場所は工夫してみてください。
最後に一つだけ、アキレス腱に痛みを抱えている人と足底筋膜炎を抱えている人は登り坂、芝生、タータントラックでの練習はなるべく避けた方が良いです。ご参考になれば幸いです。
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