top of page
執筆者の写真池上秀志

ストレスマネジメントとNRF1、NRF2

更新日:2021年10月16日


目次

1.体内の抗酸化システム

2.NRF1とは何か?

3.NRF2とは何か?

1.体内の抗酸化システム

栄養という観点からのウェルビーイングの根幹をなすものは1.抗酸化と2.抗炎症であるということは私のブログで何度も述べてきました。実践的観点から言えば、この二つは同じことだと思っていただいて構いません。低度で慢性的な炎症は酸化ストレスによって生じますし、抗炎症作用を持つ植物はたいていの場合抗酸化作用を持ちます。

しかしながら、「最強の抗酸化作用は何か?」という記事の中で、最強の抗酸化物質など存在せず、様々な抗酸化物質を組み合わせることがベストであると述べました。これは実は外在的な抗酸化物質よりも体内の抗酸化能力の方がはるかに高いからです。

体が正常に働く最も大きな条件は体温とPH値です。体温については特に説明の必要がないかと思います。体は平熱の時にもっとも機能的に働きます。暑かったら汗をかく、寒かったらグリコーゲンを分解して代謝を上げて熱を生み出すというのは体が無意識のうちに行っていることです。

次にPH値に関してですが、人間の体は弱アルカリ性の時に最も正常に働きます。ところが、現代社会の一般的な食生活である肉や魚(特にソーセージやハムなどの加工肉食品)、加熱した植物油(米油、トウモロコシ油、サフラワー油、大豆油など)、赤ワイン以外のアルコールを摂取すると血液が酸化しやすくなり、PH値が下がります。このような食生活は酸化ストレスを直接的に生み出しているだけではなく、体内のストレスマネジメント能力を引き下げることになります。

持久系競技者は特にフリーラディカルが発生しやすく常に酸化ストレスにさらされています。それに加えて、強度の高いトレーニングをすると血液PH値が低下します(血液が参加する)。3000m-10000mというのは独特のきつさがあるものですが、これら種目の特異的なトレーニングというのは最も血液PH値が下がります。ニュージーランドの名コーチアーサー・リディアードは実験を通して「短い距離(100m-200m)のダッシュを繰り返した場合、脚部の血液PH値は下がるが耳たぶのPH値はほとんど下がらない」と報告しています。

逆にマラソントレーニングのように1マイルを10本やるようなインターバルでは5000mのレースに向けた5x1000mに比べて強度が低いので血液の酸化に耐える能力(耐代謝性アシドーシス)はそこまで必要とされません。

もし、私が高校生や大学生の指導をするとすれば、5000m-10000mのレースの特異的なレースのトレーニングの量は大幅に減らし、強度、距離、練習コースに変化を持たせた有酸素ランニングと短い距離(200m-400m)のレペティションと坂ダッシュを多く取り入れます。これは長期目線で基礎練習を多く取り入れたほうが良いというのが一つと若い選手に5000m-10000mの為の特異的な練習を多く取り入れると短期的には結果が出やすいのですが、長期的にオーバートレーニングに陥ったり、精神的なバーンアウトに陥る選手が多くなるからです。

話を元に戻しますが、このように持久系競技者と言うのは常に多くのストレスにさらされ細胞が傷つきやすい環境にあります。にもかかわらず、持久系競技者は見た目が若い人が多いです。30歳を超えるともう明らかに違います。一つは、競技者は食事と睡眠に一般人よりも気を使うからだと思います。二つ目は体が酸化ストレスを含む身体的ストレスに適応し内在的な防御システムが発達するからです。その結果、多くのストレスにさらされるのですが、プラスマイナスで考えた時にプラスになるのだと思います。

2.NRF1とは何か?

内在的な防御システムのカギを握るのがミトコンドリアとNRF1、NRF2という蛋白質です。これらは全て人間の遺伝子発現に関わるものです。実は人間の体には文字通り無限の可能性が含まれています。爪の細胞も髪の毛の細胞もDNA自体は同じです。にもかかわらず、髪の毛の細胞は髪の毛になり、爪の細胞は爪になるのです。DNAは同じでも引き出される情報(遺伝子発現)が違う訳です。遺伝子発現を変えることで、人間は老いることも出来れば、老いを遅らせることも出来るのです。

NRF1はミトコンドリアの機能と生物学的創生に関わる蛋白質です。NRF1がミトコンドリアの機能に関わる遺伝子スイッチをオンにしたりオフにしたりするので、NRF1の機能そのものが大きくミトコンドリアの機能に影響します。過去に「抗酸化と抗炎症」の記事で詳しく述べていますが、抗酸化ストレスが何故低度で慢性的な炎症を引き起こすのかと言うとミトコンドリアの機能を低下させるからなのです。細胞と言うのは全て寿命が来た後、生まれ変わるのですが、細胞が生まれ変わる際に正常なプログラム死であるアポトーシスと炎症を引き起こし周りの細胞を傷つけるネクローシスとがあります。ミトコンドリアが酸化機能にさらされるとこのネクローシスが引き起こされるのでそれが慢性的な痛みや癌、アルツハイマー、脳梗塞、Ⅱ型糖尿病、心筋梗塞などの進行性の病気を引き起こします。

また遺伝子の転写にも大きく関与しています。体内に存在する60兆個の細胞は一年間で98%は入れ替わります。一晩でも千億個ほど入れ替わります。Bahnhofferという瞑想の研究者が「毎朝起きて鏡を見ても同じ顔の自分がいることは奇跡だ」という冗談を言っていたことがありますが、数千億個の細胞が一日で新しくなっているのになぜ、毎日同じ顔の自分がいるのかということは不思議なことです。それは何故かと言うと細胞と言うのは自分の分身を常に転写複製しているからなんです。

全ての細胞には全ての情報が既に含まれています。古代インドのリシ達(賢者)は「私は小宇宙であり、小宇宙とは大宇宙である。すなわち私は小宇宙でもあり大宇宙でもある」と考察していましたが、非常に深い洞察だと思います。情報的な意味合いにおいては本当に人間の細胞と言うのは無限の可能性を持ち、その細胞から構成される私達も無限の可能性が包含されています。ただ、実際には細胞A はDNAの転写により細胞A に生まれ変わります。細胞BのDNAからは細胞Bの情報のみが引き出され、細胞B が死してのちにはやはり細胞B が生まれます。ですので、寝ている間に細胞が数千億個生まれ変わっても私の顔が一晩でB’zの稲葉さんになったりはしない訳です。

一方で、少しずつ違う細胞が生まれてくるというのも事実です。一つはトレーニング刺激などの新しい刺激を加えた時です。この辺りも宇宙の叡智を感じる部分ですが、新しい刺激を体にかけると細胞から違う情報が引き出され、少しずつトレーニング刺激に適応していきます。

もう一つは残念ながら、老化のプロセスです。老化のプロセスって何かと言うと遺伝子の転写ミスなのです。細胞が一定回数生まれ変わり続けると遺伝子の転写ミスが起きます。まあ必ず一定の割合で起きることなのでそれをミスと言うのかどうかは分かりませんが、自然の摂理として正常に細胞が生まれ変わる回数と言うのは決まっています。では何回くらい正常に生まれ変わってくれるのかということですが、それを規定しているのがテロメアと呼ばれるものです。最近よく言われるのでご存知の方も多いと思いますが、テロメアの長さが長ければ長いほど、細胞は長く正常に生まれ変わり続けます。要するに、老化が遅くなります。

テロメアを長くする方法は二つあります。一つは質が高く十分な長さの睡眠です。もう一つは超越瞑想です。超越瞑想に関しては過去の記事で詳細を説明しているので、そちらを参考にしてください。何故、睡眠と超越瞑想がテロメアを長くするのかですが、これには意識状態が関与しているはずです。どうしても古代インドのリシや仏教徒のような表現になってしまうのですが、科学的な意味合いにおいて高次の意識状態に入った時、エネルギーの波長が最も自然と調和するからです。自然と調和するというのは宇宙の根本原則に従うというような意味合いであり、要するに、生物としての正常状態です。

どうしても誤解を避けられない部分ですが、これはスピリチュアルな記述ではなく科学的な記述として書いています。エネルギーの波長と言うのは要するに、素粒子の振動数のことです。素粒子の振動回数が少なすぎると(もしくは波長が短すぎると)観測不能となります。しかしながら、観測できないからと言って存在しないわけではありません。そして、素粒子の振動数が高く(もしくは波長が長く)観測可能な物体に影響を及ぼします。意識と言うのは言うまでもなく、観測不能なのですが振動回数の少ない素粒子として存在していると私は考えます。振動回数が少ないが故に観測は出来ませんが、物体である肉体に影響を及ぼします。どのようにかというと遺伝子発現に影響を与えることによってです。唯心論者、唯物論者、二元論者共に心身の連関に関して、納得できる解答を与えることは出来ませんでしたが、彼らは全て間違いで素粒子の最も低い振動数から最も高い振動数まで存在する超多次元的一次元によってのみ説明することが可能なのです。

アスリートは経験的にこの心身の連関を理解しているので、私も含めて超越瞑想をルーティーンに取り入れている人は少なくないです。テニスのジョコビッチ選手もそうですし、コーチホーゲンのグループにいる私の先輩でリオデジャネイロオリンピックドイツ代表のリザ・ハーナー選手もヨガと瞑想を日々のルーティーンにしています。

3.NRF2とは何か?

次にNRF2は何をしているのかということですが、酸化ストレスそのものへの対処と酸化ストレスを受けた細胞の修復のホメオスタシス機能を司る体内の防御システムの発動を促す蛋白質です。ホメオスタシス機能という言葉が分からない方は自動空調機(訳が明治時代みたいですか?サーモスタットです)を思い浮かべてもらえればよいです。自動空調機の温度を28度に設定しておけば、30度を超えるあたりから冷房が入り、26度くらいになると暖房が入ります。

それと同じで体内のストレスレベルが上がるとNRF2のスイッチがオンになり、ストレスレベルが下がり正常に戻るとスイッチがオフになります。それに伴って、体内の防御システムや細胞の修復に関わるスーパーオキシドディスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンの量が増えたり減ったりします。スーパーオキシドディスムターゼとカタラーゼは生物が陸に上がって以来、ミトコンドリアを用いて有酸素エネルギーをエネルギーの主要素にしてきた時から発達させてきた抗酸化酵素です。同じ分量のビタミンCとスーパーオキシドディスムターゼを比較するとスーパーオキシドディスムターゼはビタミンCの一億倍以上の量のフリーラディカルを中和することが出来ます。

生物がまだ水中にいた時は無気的代謝を中心にエネルギーを生成してきました。無気的代謝と言うのは、酸素を使わずにエネルギーを生み出すシステムのことですが、これは非常に効率が悪いです。エネルギーを生み出すというのは化学的にはアデノシン二リン酸をアデノシン三リン酸に再合成することです。グリコーゲン1分子から再合成されるアデノシン三リン酸の量は無気的代謝の2に対し、有気的代謝は38です。このエネルギー革命により、生物は陸に上がっていこう進化を遂げてきたのですが、有気的代謝を主としてエネルギーを生み出すデメリットとして、酸化ストレスにさらされ続けるという問題が生じました。これに対する適応として人体には既にカタラーゼ、グルタチオン、スーパーオキシドディスムターゼと言う抗酸化酵素を発達させてきたのですが、これら抗酸化酵素が世の中に存在するどの抗酸化サプリメントよりも強力です。そして、これら抗酸化酵素の量を調節しているのがNRF2という蛋白質です。

ミトコンドリアとNRF1とNRF2をいかに活性化させるかが体内の防御システムを高めるカギとなります。ではどうすればNRF2が活性化させるかということですが、今まで私がブログで書いてきたことと特に変わりません。

・生の色とりどりの野菜、果物、種、ナッツ類を多く摂取し、植物油(特に加熱したもの)、精製された炭水化物、畜産工場の肉と養殖の魚(特に加工食品)の摂取を控える


・ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA などの特定の抗酸化ビタミンのサプリメントのみを摂るのをやめる(特定の抗酸化ビタミンや抗酸化酵素のみを摂取すると体内でのバランスが崩れかえって体内の防御システムが弱くなります)。


・たまに断食(若しくは断続的な断食:例15―18時間の断食を繰り返す)


・超越瞑想


・軽めの運動


・ベースサウルスの摂取

 長距離走、マラソンについてもっと学びたい方はこちらをクリックして、「ランニングって結局素質の問題?」という無料ブログを必ずご覧ください。


閲覧数:1,070回0件のコメント

Comments


筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

bottom of page