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執筆者の写真池上秀志

LLLTによるスポーツパフォーマンスの改善

 LLLTが試験管内、生体内、臨床実験の全ての段階において、筋細胞に好影響を与えることが、これまでの実験で明らかになってきています。それに伴い、これまで主に以下の二つの観点から、LLLTによるスポーツパフォーマンスの改善が研究されていました。


1. 練習後の筋疲労の回復の促進、もしくは筋損傷の低減


2. パフォーマンスの向上(可動範囲、最大筋力、筋持久力、機能、その種目におけるパフォーマンスなどなど)


 今回のブログ記事ではこれらの観点に従って、LLLTとパフォーマンスの関連性についてみていきたいと思います。この手の実験の初期のものとしては、ロペス・マルティンスらが行ったネズミを使って行った実験で、波長が655nmのレーザーを運動前に照射したところ、LLLTを照射した群では、運動後の血中クレアチンキナーゼ(CK)濃度が有意に低かったことが確認されました。CKというのは、筋肉の炎症マーカーの一つで、炎症反応が起きていると、この値が大きくなります。


 別の実験では、普段から傾斜をつけたトレッドミルでトレーニングしているネズミを使った実験(どんなネズミやねん)で、LLLTをトレッドミルでのランニング前に照射すると、練習後の炎症反応、クレアチキンキナーゼが有意に低く、また酸化ストレスも少なくなりました。


 酸化ストレスの減少の裏付けとしては、体内に備わる抗酸化酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)が活性化したことが確認されました。


 また、この実験で筆者が注目したことは、LLLT照射後24時間後から48時間後まで有意な差が生じたことです。何故なら、これだけの時間効果が続くなら、練習の直前に照射しなくても、日常的に使用している人は練習の疲労を抑えられることになるからです。


 人の遅発性筋痛(いわゆる筋肉痛)とLLLTの関連性について初めの実験として知られるのはヴィンクらの実験で、この実験では上腕二頭筋のウェイトトレーニング(いわゆるアームカール)を実施して、その後の筋肉痛がどのくらいひどいかを実験で確かめました。


 この実験においては、運動後にLLLTを照射しました。この実験では、LLLT群とプラセボ群の間に有意な差が見られませんでした。プラセボ群というのは、とりあえず形だけ治療を行う方法です。例えばですが、LLLTのうちの近赤外線(例900nmの波長)は人間の目には見えません。見えないので、レーザー治療器らしきものをもってこられて「はい、スイッチ入れますよ」と言われれば、ついてるかついていないか、本人にはよく分からない訳です。


 毎日使っていれば、何となく効果のある無いで分かるかもしれませんが、一度限りで白衣を着た権威者に「スイッチを入れました」と言われればほとんどの人がそう思い込むでしょう。


 何故、このようなことをするかというと、人間は「効果がある」と思い込むと、本当に効果が出ることがあるからです。持久系スポーツの有名な実験では、自転車競技でタイムトライアルを二本実施し(距離は忘れましたが、運動時間は約5分、ランナーの方は1500mのタイムトライアルをイメージしてください)、一本目の後でそれぞれカプセルに入った砂糖を渡し、「これは最新の研究結果を基に作られた持久力向上のための薬です。臨床実験では、持久力が3%向上することが確認されました」と言って、飲ませると6割くらいの選手は1本目よりも2本目の方が速くなったのです。本来は、2本目の方がタイムが落ちるはずなのにです。


 これがプラセボ効果(偽薬効果)と呼ばれるもので、プラセボ効果の影響を取り除くために、一応両方の群に「LLLTを照射している」と思わせるのです。ついでに説明しておくと、二重盲検法(ダブルバインド法)というのもよく使われます。これは被験者だけではなく、実験者の方にもどれが偽薬でどれが本物の薬かを教えない方法です。


 何故、このような方法を使うかというと、私のような正直者は「偽薬なのに、本物だと言わないといけない」と思うと、それが態度に出てしまうからです。やはり、同じ薬でも「この薬は今のあなたの症状にはよく効きます。何故ならば・・・」とはっきりと明言してくれる人から飲んだ方がよく効きます。


 ちなみにですが、今日本で私ほどそのメカニズムを詳しく解説して、だから効くんだという説明をしている人は他にいません。だから、私の記事を読んでからLLLTを買った人は、プラセボ効果も働いて何も説明を受けていない人よりもよく効くはずです。要するに、プラセボ効果というのは本物の薬を使う場合にも、効果を発揮するということです。


 逆にノシーボ効果というものもあります。これは、実際に効果のある薬でも、例えば私が「この薬は効果がありません。何故ならば・・・・」と一見強固に思える論理を築き上げれば、その薬を飲んでも効果がなくなったり、効果が半減することになる現象です。最近聞いた話では、血液検査に行って、貧血が判明した途端に走れなくなった選手の話を聞きました。


 確かに、貧血を治せばパフォーマンスが上がるのは間違いないでしょう。でも、貧血が判明した途端に、パフォーマンスがさらに低下するのは、物理的にはおかしいです。でも、人間の体は必ず心の影響を受けるので、当たり前です。


 閑話休題、話をLLLTと筋損傷の話に戻しましょう。ヴィンクらの実験では、有意な差が見られなかったのですが、ドリスらの実験では、ほとんど同じ上腕二頭筋の筋トレを実施し、その直後にLLLT照射を行うというほぼ同じ実験を行ったにもかかわらず、LLLT群の被験者はコントロール群の被験者と比べて遅発性筋痛が有意に減少したという結果になりました。この差がどこから来るのかは筆者には分かりませんが、一つ注目したいのは、ヴィンクらの実験では、950nmの波長しか使っていないのに対し、ドリスらの実験で使ったのは660nmと880nmの波長の組み合わせを使っているということです。一般的には複数の波長の組み合わせの方がよく効くはずです。


 ではなぜ、ヴィンクらの実験では、950nmの波長のみを使ったのかということですが、これはプラセボ群との比較をするためでしょう。950nmの波長は目には見えないので、「当てている」と言われれば、普通は信じます。ところが、660nmの波長は赤色光線として目に見えるので、プラセボ群との比較はできません。従って、ドリスらの実験では、プラセボ群ではなく、コントロール群との比較です。コントロール群というのは、何も使わないグループのことです。


 上記は、運動直後にLLLTを照射した実験ですが、運動前に照射した実験もあります。リールらの実験では、アームカールを行う前に上腕二頭筋四か所に655nmの波長の光を照射し、最大筋力の75%の強度で出来るだけ多くアームカールを実施したところ、LLLT照射群においては、有意に反復回数が増加したが、血中乳酸濃度に変化は見られなかった。実際のスポーツにおいては、血中乳酸濃度よりも、実際にどれだけ動き続けられるかの方がはるかに重要なので、効果があると言って良いでしょう。


 似たような実験として、リールジュニアらの実験では、850nmと660nmの光を上腕二頭筋に照射してから最大筋力の75%でアームカールを実施したところ、LLLT群はプラセボ群と比較して、有意に反復回数が多くなり、運動後の血中CK濃度、血中乳酸濃度、Cリアクティブたんぱく質の濃度が低いことが確認されました。Cリアクティブたんぱく質も筋中の炎症反応を示す指標です。


 似たような実験は、他にもありますが、効果がなかったと結論付けた実験も存在します。東さんらの実験では、アームカールを行う前に、上腕二頭筋の8か所にLLLT(808nm)を照射しましたが、反復回数にも運動後の血中乳酸濃度にも有意な差は見られなかったとのことでした。


 ラーキン・カイザーらの実験では、800nmと970nmの光を15か所に照射し、プラセボ群と比べるとほんのわずかパフォーマンスは向上したが、有意な差が見られるとは言えなかったそうです。ちなみにですが、LLLTを使ったことがある人なら、この8か所とか15か所という表記の意味が分からない方が多いと思うのですが、実はLLLTにも色々な種類があり、小さな光がたくさんついていて、それを腕や脚に巻いて使うタイプのものがあるんです。タオルの内側に光がついていて、そのタオルを巻くみたいなイメージです。書いていないので、分かりませんが、恐らくそのタイプでしょう。もしくは、レーザータイプのものを使って、一か所ずつ当てていったかのどちらかです。


 筆者の経験上、痛みの治療ではなく、コンディショニングに使うなら、もっと広範囲に照射できる機器を使った方が、効果が出るので、そういった違いもあるのかもしれません。大腿四頭筋(レッグエクステンション)で似たような実験も多数行われていますが、やはりパフォーマンス、疲労ともに有意に効果があるとする実験もあれば、ないとする実験もあります。実験の条件が細かく分からないので、何とも言えないのですが、筆者は使用しているLLLTの違いも影響していると考えています。ただ、いずれにしてもこれだけでは何とも言えないというのが本音のところです。


トレッドミル上の走行とLLLT

 ここまで筋トレとLLLTの照射の関係性についてみてきましたが、ここまでは我々長距離ランナーには関係がないと言えば、関係がありません。やはり重要になってくるのは、ランニングとLLLTとの関係でしょう。トレッドミル上でのランニングとLLLT照射の関係性について調べた実験がいくつかあるので、紹介しておきましょう。


 先ずはド・マーチらの実験です。この実験では、大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋にLLLTを照射し、その後トレッドミル上でプログレッシブランを行い、最後はオールアウトするまで、ペースを上げていきました。ちょっと、用語が分かりにくい方のために簡単に言うと、走る前に太ももの前と後ろとふくらはぎにLLLTを当てて、そのあとトレッドミルでゆっくりのペースから徐々にペースを上げていって、最後は全力になるまで走らせたということです。


 この実験では、最大酸素摂取量、トレッドミル上で走れる時間がプラセボ群に比べて有意に向上したとのことでした。それに加えて、筋損傷(CK)、酸化ストレス(過酸化脂質反応)が有意に減少し、更に、プラセボ群では見られた運動後のスーパーオキシドディスムターゼの不活化がLLLT群では見られませんでした。ざっくりと結論だけ言うと、運動後の疲労が有意に低くなったということです。


 ダシルバの実験では、運動前に850nmの波長のLLLTを大腿四頭筋と腓腹筋に照射しところ、最大酸素摂取量が有意に向上したとのことです。この実験では、心電図をつけて実験を行いましたが、心電図にはいかなる違いも見られなかったそうです。


 またフェラレッシらの実験では、エリートランナーを用いた実験で、運動前に上肢と体幹に850nmのLLLTを照射したところ、最大酸素摂取量が向上し、最大酸素摂取量に達するまでの時間が短くなり(心肺の順応が速くなり)、酸素負債が減少し、その強度を維持できる時間が長くなったことが確認された。さらに、血中乳酸濃度の減少、筋損傷の低減が確認された。


 最大酸素摂取量、乳酸処理能力などは細胞内のミトコンドリアという器官の影響を大きく受けます。レースペースよりもはるかに遅い(例えば80%)ペースのトレーニングでも積み重ねれば、5000mのレース結果に大きな影響を及ぼすのも、こういった強度の有酸素ランニング(30分から2時間程度)でミトコンドリアの機能が改善したり、数が増えるからです。


 LLLTはミトコンドリアの電子鎖の中にあるシトクロムC酵素の機能を改善させます。分かりやすく言えば、人間の体の中で酸素を使ってエネルギーを生み出している箇所の動きがスムーズになるんです。ですから、長距離走との相性は非常に良いと言えるでしょう。


 しかしながら、筆者の私見においては、LLLT照射が劇的なパフォーマンスの向上を生み出すものではなく、最後の神頼み程度の役割です。神頼みはちょっと言い過ぎかもしれませんが、LLLTを使うだけで、別人になることはあり得ず、例えば1000mで言えば2秒程度速くなる可能性があるとは思います。それでも5000mで10秒速くなるので、大きな違いではありますが、実際に何秒速くなるのかと言われても、筆者には分かりません。


 それよりも効果が大きいのはトレーニング後にLLLTを当てることでリカバリーが有意に速くなることです。リカバリーが速くなり、故障なく、継続的に良い練習が出来るようになれば、その積み重ねで、大きな差が生まれます。筆者自身が使っている経験としては、もっとも差が出るのは、その部分です。そんなことも参考にしながら、使ってみて下さい。


 LLLTについてもっと知りたい方のために詳説LLLTという小冊子をお渡ししています。メカニズムやそもそもLLLTって何?というところから詳しく解説していますので、まだお読みになっていない方は、下記のURLより問い合わせページに入り、『詳説LLLT』と書いて送信してください。確認後、折り返し『詳説LLLT』をお送りさせて頂きます。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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