「指先の切り傷とアルツハイマーに関連性があることを想像できるだろうか」
そんなやや挑発的な書き出しから始まるのはドイツのミハエラ・デール博士の著書『秘めたる暗殺者炎症』(訳筆者)である。
もう少し正確に引用すると「指先の切り傷と歯茎の炎症と心筋梗塞と脳卒中とスポーツ障害とアルツハイマー型認知症と感染症とガンの間にある関連性を想像することが出来るだろうか?」(訳筆者)というものである。
ミハエラ・デール博士によるとこれらの間にある関連性とは低度で慢性的な炎症反応の継続により、ミトコンドリアDNAやDNAに損傷が生じ、様々な体の不調が生じるということです。そして、その中にはアルツハイマー型認知症、パーキンソン病などが含まれます。
これらの体の不調は神経細胞の生まれ変わり(新生)が正常に行われないことによって生じます。そして、神経細胞の正常な生まれ変わりに大きな役割を果たすのがミトコンドリアです。このミトコンドリアに600nmから1000nm(700-770nmは除く)を照射するとミトコンドリアの機能が改善され、これら神経細胞の新生が正常に行われなくなる病気の改善に一役買うのではないかという仮説が立てられ、研究が進められてきたので、本日はその一端を紹介させて頂きます。
神経はそもそもどんな役割を果たしている?
神経と言われて、真っ先に思い浮かべるのは運動神経という言葉でしょう。日常言語でも「あの人が運動神経が良い」とか「俺は運動神経は良くないから」と言ったように普通に使います。
日常言語において「運動神経が良い」とはどんなスポーツでも先天的にそつなくこなすような子供のことを指すことが多いですが、厳密に言えば、スポーツに限らず、歩いたり、走ったりといったことから端の上げ下げまで日常の運動全てが運動神経によるものまでです。
ですから、加齢とともに運動機能が低下するのももしかすると、運動神経細胞や受容神経細胞が正常に生まれ変わらなくなってくるのかもしれません。
神経と言えば、真っ先に思い浮かべるのは運動神経ですが、神経はそれ以外にも様々な働きを行っています。
例えばですが、これは長らく哲学の世界では問題になってきた心身の連関の問題になってくるのですが、特定の神経伝達物質が正常に伝達されなくなったり、分泌されなくなることによって心にも一定程度の影響を与えるようです(その正確なメカニズムは分からないけれど)。
例えば、一番有名なのは鬱でしょう。鬱になるとドーパミンという神経伝達物質が正常に分泌されなくなります。ドーパミンというのは一言で言えば、「快感が得られそうな気分にしてくれる神経伝達物質」です。「快感が得られそうな」と書きましたが、基本的に人間は「快感が得られそうな気分」は楽しいのです。
ワクワク感や高揚感と言い換えても良いでしょう。好きな異性と話しているだけでも心がときめくのは「快感が得られそうだから」ですし、美味しいものを食べにいくことを考えるだけで楽しい気持ちになるのも「快感が得られそうな気がするから」ですし、良い記録が出そうな日の試合が楽しみなのも「快感が得られそうな気がするから」です。
ドーパミンが全てという訳でもないのですが、結構人生ドーパミンの影響で楽しくなるので、鬱になると生きていても楽しいことがないのです。その理由として、神経変異が生じてドーパミンが分泌されなくなるから、もしくはドーパミンが正常に伝達されなくなるからです。パーキンソン病の場合は、私も専門ではないのであまり確定的なことも言えませんが、精神面と運動面の両方に悪影響が生じ、ドーパミンが分泌されにくくなるうえに、手先の震えが止まらなくなったり、話づらくなったり、精神面と運動面の両方に悪影響が生じるようです。
また、鬱に似て非なるというべきか、ほぼ同じというべきか迷う病気の一つに季節性情動障害というものがあります。これは特に高緯度地域に生じる現象で、冬場は太陽の光をあまり浴びることが出来ず、日照量の不足が脳の神経細胞に悪影響を与え、冬場は特に理由もなく陰鬱な気分が続くことを指すようです。
プロ野球の世界で選手としても監督としても大活躍された野村克也さんは京都府の一番北の京丹後というところのご出身です。京丹後は季節風の影響で冬場は日本海側から湿気を含んだ雲が形成され、あまり晴れる日が無い気候で「弁当忘れても傘忘れるな」というそうで、ノムさん曰はくじめじめした気候のせいで根暗な人間が多いそうです。
京丹後出身の私の洛南高校時代の同期で主将を務めた男を見る限り、京丹後出身の人間全員が根暗だという訳でもなさそうですが、気候が人の精神に一定程度影響を与えるのはそうだろうなと思いますし、ビートたけしさんの「南国に共産主義の国は存在しない(キューバがあるけれど)」という理論も妙に説得力があります。
そういう根拠のない話は置いておき、太陽の光が不足すると、脳神経細胞に悪影響を及ぼし、そのことが人間の気分にも影響を及ぼします。
また、これも哲学的には人間の記憶と脳神経細胞の間の連関についてはまだまだ議論のある話ではあるのですが、記憶と脳神経細胞の間にもどうも連関は強くあるようで、脳神経細胞が退廃していくと記憶力にも問題が生じ、これが病的になるとアルツハイマー型認知症と診断されるようです。
という訳で、ざっと軽く触れただけなのですが、人間の神経細胞が正常に生まれ変わらなくなるとどういう問題が生じるのかというのがなんとなくお分かり頂けたところで、本論のLLLTと神経系の病気との関連性について紹介させて頂きたいと思います。
トリマーらの研究(2009年 ‘’Reduced axonal transport in Parkinson’s disease cybrid neuritis is restored by light therapy’’)によると、パーキンソン患者の神経細胞内の軸索輸送を正常なレベルまで回復させたということです。早い話が神経伝達物質(例えばドーパミン)の輸送(伝達)を正常なレベルまで回復させたということです。神経変異の病気にはそもそもある神経伝達物質が作られなくなるパターンと作られるけれども正確に伝達されなくなるケースがあり、そのうちの後者を回復させるということです。この実験で使われたのは810ナノメートルの波長の光線です(ということは目に見えないので、実験現場は何も生じていないように見えることでしょう)。
70人のパーキンソン病患者を対象にした実験においては、モノアミンオキシダーゼタイプBというドーパミン分解酵素の働きを阻害するとともに、銅、亜鉛スーパーオキシドディスムターゼの働きを改善し、その結果として神経の退廃を減少させたとの結果が出ています。ドーパミンの分解酵素の働きが阻害されたということは、体内で使えるドーパミンの量が増えたということであり、よりやる気になったり楽しい気持ちになったりしやすいということです。
では、銅、亜鉛スーパーオキシドディスムターゼの働きが改善されることにはどのような意味があるのかということですが、これはミハエラ・デール博士の話と総合すると分かります。ミハエラ・デール博士の主張によると低度で慢性的な炎症反応が神経細胞の正常な生まれ変わりを阻害する訳ですが、その低度で慢性的な炎症反応を引き起こすのは酸化ストレスです。そして、この酸化ストレスを除去してくれる酵素の一つがスーパーオキシドディスムターゼです。いわゆる抗酸化酵素というものです。抗酸化酵素の働きが活発になると理論上はパーキンソン病が改善されるか進行が遅れるでしょう。
アルツハイマー病
アルツハイマーやアルツハイマー型認知症という言葉が最近は使われますが、昔は単に痴呆症と言っていたような気がするのですが、違いましたっけ?
最近はなんでもかんでも横文字にする風潮になってしまって、高校生に汎用型計算機と言っても通じなくなってしまいましたが、痴呆症という言葉が使われなくなったのもその一環なのかどうかは分かりません。
さて、ではそのアルツハイマー型認知症の原因についてですが、まだ不明瞭な部分も多々ありながらも、ミトコンドリアの機能不全やシトクロムC酵素の機能不全などがあげられており、これらは低度で慢性的な炎症反応によってミハエラ・デール博士の主張と一致します。
そもそも論として、何故低度で慢性的な炎症が生じるかと言うと正常な細胞死であるアポトーシスが生じずに、ネクローシスという炎症反応を伴う細胞死が生じ、その時の炎症反応によって周囲の細胞のDNAやミトコンドリアに傷がつくからです。そして、アポトーシスが生じるか、ネクローシスが生じるかに大きく関与しているのがミトコンドリアの状態であり、このミトコンドリアの状態はシトクロムC酵素の働き次第によって結構変わり、このシトクロムC酵素に悪影響を与えるのが酸化ストレスです。
ですから、出発点をたどっていくと酸化ストレスをなるべく減らすことと抗酸化酵素を活性化させることです。そして、700nmから770nmの波長を除く、およそ600nmから1000nmの波長の光線をシトクロムC酵素に吸収させると、酸化ストレスからの悪影響を抑え、正常に働くようになり、その結果としてミトコンドリアが正常にもしくは活発に働くようになるのです。
また、先述のように銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼのような抗酸化酵素を活性化させるという研究結果もあるのです。
ただ、イギリスの放送局BBCが1070nmの波長の光線を発するヘルメットを使用した研究結果によると、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせることは出来ても、失われた記憶を取り戻すことは出来なかったとのことでした。
確かに考えてみると、一度認知症になったおじいちゃん、おばあちゃんの認知機能が元に戻るという話はあまり聞いたことがありません。なかなか難しいのかもしれませんが、可能性はまだあるはずなので、他にも論文検索をしてみるとともに、今後の研究に期待したいと思います。
さて、今回は神経系の病気とLLLTに関する研究結果を紹介させて頂いたのですが、他にもLLLTは以下のような以下のような効果があると主張する研究結果があります。
・疲労の回復が早くなる
・睡眠の質が上がる
・故障の治りが早くなる
・骨密度が増える
・関節炎の治癒促進
・認知機能の向上
・鬱の緩和
・ニキビの消失
・育毛効果
・男性ホルモンが増える
・鎮痛
・脂肪燃焼
もっと詳しくLLLTについて知りたいという方やそもそもLLLTとは何かということをもっと詳しく知りたい方はこちらをクリックして、問い合わせページに入り『詳説LLLT』と入力して送信して下さい。確認次第、PDFファイルの小冊子『詳説LLLT』をお送りさせて頂きます。
参考
『ミトコンドリア革命』宇野克明著
『Entzündungen die heimlichen Killer』Dr. Michaela Döll
『Ernährung: Freie Radikale』Dieter Hogen, Walter Janett共著
『Low Level Light Therapy : Photobiomodulation』Michael Hamblin, Cleber Ferraresi, Ying-ying Huang, Lucas Freitas de Freitas, James D. Carroll共著
Prof. Dr. Michaela Döll - Entzündungen
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