真実はいつも一つ
物心ついたその時から私は赤い蝶ネクタイをつけた見た目は子供、頭脳は大人の6歳児にそう教えられてきました。
この方です↓↓
しかしながら、こと長距離走の走り方については「踵から接地するのが基本」「つま先から接地した方が速く走れる」「歩きの延長が走り」「走りと歩きは全くの別物。長距離走もスプリントが基本」など相反する意見が乱れております。
これはネット上の情報は不確かだからというようなレベルではなく、オリンピックや世界選手権の代表になるような選手から強豪高校の指導者に至るまでトップで活躍されている選手、指導者の間でも意見が分かれています。
一体どれが正しい意見なのでしょうか?
この点に関しては、私はいつも明言を避けてきました。その人に合った走り方を身につけるしかないという考え方です。ですが、過去三年間で数百人の市民ランナーさんを指導させて頂く中でこれらを統合する正しい理解の仕方を発見したので共有させて頂きたいと思います。
先ず初めにお伺いしたいのですが、音楽を聴く時に最も適した音量はいくつでしょうか。
音楽プレーヤーで音楽を聴く時に、音量調節をしますよね?
だいたい0から31までの数字があります。場合によっては、0から50や0から100の数字が書かれてあることもあります。あれは一体いくつの音量が最適なのでしょうか。
多分、大半の方がは?と思われたことと思います。そんなものはどんな音楽プレーヤーを使うかにもよるし、部屋の広さにもよるし、音楽プレーヤーと自分の距離にもよるし、質問が質問になっていないではないかと大半の方がそう思われたと思います。実際にそうです。質問が質問になっていません。
これと同じで踵から着いたほうが良いのか、それともつま先から着いたほうが良いのかというような質問は質問が質問になっていないのです。音楽を聴く時に、最適な数字がいくつかと聞かれても答えられない代わりに、実際に音楽を流して音量を大きくしたり、小さくしたりしながら適切な音量を探していきますよね?
長距離走も走りながら微調整してちょうど良い具合の走り方を身につけていくのですが、この時に何と何の間で微調整をするかというと歩きとスプリントの間で微調整をしていくのです。
主に歩きとスプリントの違いを下記にまとめてみます。
歩き
・接地の瞬間重心は右足と左足の真ん中
・接地は踵から
・肘は伸ばしている
・膝下を振り出す
・膝を高く上げない
・必ず片足が地面についている=ジャンプしない
・骨盤は直立
・アキレス腱反射をほぼ使わない
スプリント
・接地の瞬間重心は真下、場合によっては後方
・接地はつま先で踵はつかない
・肘は鋭角に曲げられている
・膝下は振り出さない
・膝が高く上がる
・両足が地面から浮く局面がある=ジャンプする
・骨盤はやや前傾、スタート時のみ深く前傾
・アキレス腱反射を非常によく使う
大きく分けるとこのような違いがあります。基本的にスプリントする時は、どのようなタイプの走り方であったとしても踵からつくことはないし、接地の瞬間に重心が右足と左足の真ん中にあるということもありません。
私は長距離を走る時は踵接地ですが、100mを全力で走るならば踵はつきません。踵からつくとコンマ何秒かですが、接地時間が長くなるからです。ただ、それは意識してやっているというよりは、ペースが上がると勝手に踵が浮きます。
一方で、つま先接地で走る長距離選手でも例外なく歩く時は踵からついてそのあとつま先に体重が移動します。重心は右足と左足の中間です。これを重心が後ろに残っていると表現することが多いのですが、この表現では何から重心が後ろに残っているのか、初心者の方には分かりにくいのでより正確に右足と左足の真ん中とさせて頂きました。
ちなみに、歩く時は接地の瞬間の重心が右足と左足の真ん中にあることを指し示す、世界で一番有名な写真は以下の写真でしょう。
ビートルズの名前を聞いたことがない人でもこの写真を一度は見たことがあるはずです。
ちなみに、最近の写真は左から二番目の男の指に挟まっているタバコを消すこともあるそうです。歩きたばこは駄目だということだそうです。
しかし、その時代や地域の文化を無視して全て現代に当てはめて加工しないといけないのであれば、幕末の志士の肖像画なども銃刀法違反なので、刀を消去しないといけなくなってしまうと思うのは私だけでしょうか。
余分な話はここまでにして先を進めると、逆にスプリンターの接地の瞬間の写真は以下のようになっています。
出典:和田賢一著『足の速さは才能じゃない!走り方革命理論』
こんな感じでほぼ重心の真下に接地することになります。それは何故かというと動きが速いからです。接地の瞬間に重心が右足と左足の真ん中にあるということは前足(接地した足)のはるか後方に重心があるということです。これでは間に合いません。速くは走れないんです。
膝を高く上げるのは何故かというとそちらの方が地面に強い力を加えることが出来るからです。単純に、地面までの助走距離が長くなる訳ですから、それだけ勢いをつけて地面に強い力を加えることが出来ます。地面に強い力を加えることが出来るということはそれだけ地面からの反発も大きくなるので、大きな力を地面からもらえるし、その分速く動くことが可能になります。
つまり、ピッチが速く、一歩が長くなります。短距離の場合は、地面に如何に強い力を加えることが出来るか、脚を如何に速く動かすことが出来るか、そして地面からもらった反発を如何に前方方向へと変えることが出来るかが大きな要素になります。
従って、短距離の二大要素は最大筋力と走技術です。最大筋力は重さ×速さで定義されます。体重はほぼ変わりませんから、如何に地面に強く、速く力を加えることが出来るかによって最大筋力はきまります。
そして、そうやって地面から得られた力(エネルギー)を上や横ではなく、真っすぐ前への力へと変換する走技術が必要になります。
これが最も効率の良い動き方であれば、何故人間は常にスプリントをしないのでしょうか?
答えは皆さまご存知の通り、疲れるし、足腰を痛めやすいからです。
歩くという動作はある意味では物凄く効率が悪いです。もっと早く移動できるのにそれを使わないのですから。ではなぜそうするかというと楽だからです。私も走るのは練習と信号が赤になりそうなときくらいで、あとは走りません。歩きます。何故なら、楽だからです。故障のリスクもありません。
では、何故楽なのかというと私の中では大きな答えは二つあり、ジャンプしないことと、接地の瞬間に重心が後ろに残っているからです。この二つは関連しているのですが、重心の真下に足をつくとそこからはジャンプしないと前には進めないんです。
しかも、接地の瞬間に重心の真下に足をつくと基本的には上に跳ねてしまいます。イメージ的には真上から真下に振り下ろすようなイメージになるので、それによって地面から得られるベクトルはほぼ真上になります。厳密には膝を上げるとその分足は前に行ってそこから真下に戻すと斜め後ろ向きのベクトルになるので、地面から得られるベクトルも真上にはなりません。ただ、まっすぐ前とは程遠いのです。
これを技術と筋力によってなるべく真ん前へと変換するのですが、やっぱり二度手間なんですね。わざわざ上に跳ねるような力をかけといて、それを前方への力に変換するんですから。
そして、それが可能になる大きな要素は速度です。これは主観的な速度ではありません。物理的な=客観的な速度です。速く走れば走るほど前方方向への慣性の力が働きます。この慣性の力によって真ん前に進みやすくはなります。ですが、やはり筋力と技術によって前方への動きに変換している部分もあります。
ちなみにですが、マラソン2時間半を切れない人がいわゆる厚底シューズを履いても意味がない理由の大半はここにあります。
同じ厚底シューズでも私が「いわゆる厚底シューズ」と呼ぶ靴底が柔らかく反発が大きく、分厚いのに重さが180グラム前後、価格が3万円前後のものではなく、ただ分厚いだけのシューズで前に乗り込みやすい形状=力を前方へと変換しやすい形状になっていて、価格も1万円台のものはコスパ的にも非常におススメです。
以上の理由により、短距離の場合は疲れても良いから速く走れる走り方をするのが正しいのです。
一方で、長距離の場合は楽に走れるというのは速く走れるとほぼ同義語なのです。ですが、やはり歩きではありません。あくまでも速く走ることを競う競技なのです。ですから、長距離走の場合は、歩きとスプリントのどこか中間が正しい走り方ということになります。
ですから、一般論としては速度が遅ければ遅いほど、歩きに近いのが正しい走り方ということになりますし、速度が速ければ速いほどスプリントに近い走り方が正しい走り方ということになります。
あとは神経回路の違いや筋力の違い、体重の違いによって走り方は変わってきます。
少し話はそれるかもしれませんが、女子中学生、高校生で速かった子が体格が大きくなると見るも無残に走れなくなっていくケースが見受けられます。女子は男子ほどは筋力が向上しません。ですが、体がまだしっかりと成長していない間は華奢なので筋力がなくてもスプリントに近い動きがレースを通して出来るんです。
中高生の間はトラック種目は長くても3000mしかないというのも一つの理由でしょう。
ところが成長とともに、体が丸みを帯びてくると筋力が持たないのでスプリントに近い動きがレースを通して出来なくなり、タイムがどんどん遅くなっていくんです。
男子も当然体は大きくなります。というか男子の方が大きくなります。それでも同じ現象が起こることは稀です。その理由は筋力がついていくからです。体も大きくなるけれど、筋力もついていくから問題ないのです。
一方で、女子はと言えば、これは指導者の責任でもあると思うのですが、痩せろ痩せろの一点張りで食べさせるものも食べさせずに、筋力をつけさせようとしません。体重ばかり測らせているのですが、筋力がつけば体重は増えます。
筋力がついて体重が増えるのは余分なウェイトトレーニングをしていないのであれば望ましいことです。ですが、体重ばかり見て食べるもの食べずに走らせるということばかりしているので、どうしても長続きしません。必要な筋力がついてこないんです。そして、体の成長を止めていつまでも少女なままに留めておくことなど誰も出来ません。
この手の悲劇は日本全国でセブンイレブンとの数と同じくらい見受けられます。
一方で、上手くいっているチームはクロスカントリーを多く取り入れたりして筋肥大があまり起こらない形で筋力をつけさせています。スピード練習もバランスよく取り入れてある程度の(短距離ほどではないけれどという意味で)筋力をつけさせていきます。
体重ばかりみるのではなく、総合的にその選手の体をみて判断していきます。もちろん、体重が徒に増えても良いとは言っていません。数字だけに囚われるのではなく、総合的に判断することが必要だと言っているのです。
ですから、余計なものばかり食べている選手に然るべき指導が入るのは当然必要です。
走り方の方に話しを戻すと、このように自分の体格や筋力の変化に応じて歩きとスプリントの間で微調整をしていくのが正しい走り方ということになります。ですから、同じ人間でも1500mのレースに出る時とマラソンのレースに出るときとでは正しい走り方は変わります。
ちなみに、私はいつもマラソンの基礎スピードは5000mと言っているのですが、5000mからマラソンのレースに極めて近い体の使い方になるように感じています。1500mまでのレース、あるいは2000mや3000mのレースだとちょっとマラソンとは遠い走り方になるかなという感じです。
最近は長距離選手も重心の真下につくようにと指導されることが多いです。私も基本的にはその考え方に賛成です。やはり、重心がついた足よりも著しく後ろに残っているとそこから前に持ってくるだけのエネルギーが必要となりますし、ブレーキもかかりやすくなります。
それでも、私は多くの場合は真下よりは重心がやや後ろの方が良い、つまり歩きに近い方が良いケースがほとんどだと考えています。実際に、トップランナーの走りを解析すると真下ではなく、重心がやや後ろ(一足長くらい)に接地してその次の瞬間(0.1秒以下)に足が重心の真下にあるケースがほとんどです。
参考までに高橋尚子さんのシドニーオリンピックで金メダルを取った時のデジタル解析図を貼らせて頂きます。
出典:山内武著『努力の天才』
これをみると真下ではなく、重心のやや前についてその次の瞬間に重心の真下に足があるのがご確認いただけると思います。
では、何故このようになっているかというと、やはり水平方向に移動するためだと思います。短距離の場合は疲れても良いから速く走ることが大切です。ですから、重心の真下にバンっとついてその力を前方方向へと変換します。
長距離の場合は、そもそもそれほど大きな力を必要としないので、初めから大きな力を加えるよりも水平方向に移動することの方が重要です。そして、水平方向に移動するには真上から真下に足をつくよりも足の軌道自体もやや水平方向に近づけたほうが良いのです。
そうすると、真下につくよりもやや歩きに近い形で、重心のやや前に足をついてそこから水平方向に進んだ方が良いのです。繰り返しになりますが、この時の動作はノーブレーキで行う必要はあります。
一発で地面を蹴ろうとバンっとつく時には重心の真下につかないとブレーキになります。ですから、バンっとつくのではなくそろりと踵からついてつま先へと流れていく感じです。要は歩く時と同じです。歩く時も踵からついてつま先へと流れていきますよね。
ただ、歩きではないので、その動作を速くする必要はありますし、その為には歩きの時のようなつま先が上を向いてべたっとつくのではなく、つま先が真っすぐ前を向いているくらいのタイミングでついてそのまま前に乗り込んでいきます。
つく場所も歩く時のように本当に踵の端っこというよりは外くるぶしの真下辺りでつくようなイメージです。
膝の高さも同様です。大きな力を地面に加えることだけを考えれば、高く上げて振り落とした方が良いです。速く動かすということを考えれば高ければ高いほど良いということにはなりませんが、速く動かすためにも地面からの反発を得たほうが良いので、やはり膝から股関節が地面と平行になるくらいまで上げるのが短距離の基本となります。
一方で、長距離の場合はピッチも短距離ほど速くなく、地面に加える力も短距離ほどは大きくありません。ですが、地面から浮かないといけないので、やはり歩きよりは高くなるはずです。低ければ低いほど良い訳でもなく、しかし基本的には高く上げない動作が基本になります。これもやはり、自分のレースペースによって適切な高さは変わります。
また後ろの足が前に出てくるときも非常に低い位置を通って前に来ていることに着目して下さい。歩いている時に後ろの足が前に来るときはすり足気味に地面すれすれを通ります。逆に、同じ歩きでも入場行進のように膝と足を高く上げると非常に疲れることは皆さま経験済みのことと思います。
長距離走も似たようなところがあり、歩きよりは高いけれど、スプリントよりははるかに低い位置を通るのが基本です。
また動作も歩きより速くないといけないので、膝下はやや振り出しても良いのですが、基本的には振り出しません。勢いで勝手にある程度振り出されるはずなので、感覚的には膝下はやはり振り出さない感覚です。ただ、勢いがあるので勝手にやや振り出されても良いとは思います。
接地はセンター返し理論
長距離走の走り方というと踵からつくかつま先からつくかというようなことが言われることが多いので、最後に足のつき方についてもより詳しく言及させて頂きます。
よくどちらが正しいのかと言われるのですが、私はこれをセンター返し理論と名付ける理論で説明しています。
野球の打撃では基本はセンター返しだと言われます。右打者の場合、投手から放たれたボールを真っすぐ投手に打ち返すイメージで振り出すと、それよりもタイミングが遅いとライトに飛ぶし、それよりもタイミングが速いとレフトに飛ぶし、更にそれよりも速かったり、遅かったりするとファールになります。いずれにしても、センター返しを基本とすることで球場を目一杯使うことが可能になり、ヒットの確率が高くなり、空振りの確率が減ります。
この時に、センター返ししようと思って振り遅れてライト前ヒットになったとして、別にそれが間違っているとは言わないです。綺麗なライナーで飛んで行ったのであれば、打ち損じとは普通は言わないです。タイミングが少し速くてレフト前に飛んだのも同じです。
ただ、初めからレフトに打とう、ライトに打とうと思っていると球場を30度くらいしか使わないことになるので、そこからタイミングが少しずれた時にファールや空振りに終わる確率が高くなります。
つまり、初めからライトに打とうと思ってライトに打つのとセンター返しを基本と考えてライトに飛ぶのとでは違うということです。
接地においても全く同じことが言えます。足裏全体でつこうと思って結果的に踵からになる、あるいは足裏全体で接地することを意識して、結果的につま先からの接地になるのと初めから踵からつこうと意識して踵からつく、初めからつま先からつこうと思ってつま先からつくのとでは違うんです。
これを初めに教えて頂いたのは、長年洛南高校陸上競技部の短距離を率いてインターハイチャンピオンや国体チャンピオンを何人も輩出されている柴田博之先生です。柴田先生自身も走り幅跳びでロサンゼルスオリンピックに出場されています。
その柴田先生がおっしゃっていたのは、足裏全体で接地するイメージでスピードが上がって踵が自然と浮く場合にはハムストリングスやお尻などの大きな筋肉も一体となって強く地面が押せるけれど、初めからつま先からつこうと思ってつま先でつくとふくらはぎの筋肉が中心となって、下半身全体の筋肉を連動させることが難しくなるということでした。
ちなみに、柴田先生によるとハムストリングスやお尻などの大きな筋肉は走りの中で身につけるのが基本で補強(筋トレ)はあくまでも補強とのことでした。そして、初めからつま先でつこうと思ってつま先からついている選手はなかなかハムストリングスやお尻の筋肉が大きくならないから、練習を積み重ねるごとに差が開いていくとのことでした。
正しい技術も身につかないし、筋力もつかないなら差は開いていくのでしょう。
私は短距離のことは素人ですが、長距離でも同じことは起こっていると思います。つま先接地が良いという話を真に受けて、つま先からついている選手はどこか走りが固くかえって疲れやすく、故障のリスクも大きいです。
踵からつこうとしている選手も同じです。結果的に踵からつくのではなく、意識的に踵からつこうとしている選手は体重が後ろに残りがちで、上手くスピードに乗れなくなっていきます。
私が高校に入った時は長距離の恩師中島道雄先生が連れてきた当時山梨学院大学の3軍の選手を指導されていた大野影也先生から踵からつくように指導されました。私はそれが合っていました。元々踵接地だったのと、入学早々全く練習についていけず、何か変えないといけない、変わらないといけない、そうしないと試合に出られないという危機感があったので、乾いたスポンジが水を吸うように大野先生の教えを吸収することが出来ました。
一方で、中途半端に終わっていく選手もいました。理由の半分はそのままでも通用するものがあっただけに私のように徹しきれなかったというのが一つでしょう。しかし、理由のもう半分は踵接地が絶対的に正しいという教え方をしたことにあると思います。
大野先生の指導方法も決してゆっくり動くようには教えられませんでした。寧ろ、ピッチを速くしろと口を酸っぱくして言われました。踵をつくやいなや前に乗り込んでいくのです。そうすることでノーブレーキの走りになります。ところが、踵からつくというところまでしか意識できない選手は体重が後ろに残ったままなんです。これではスピードが出せません。
また踵からつくことを基本としてスピードが乗ってきて踵が勝手に浮くなら浮いても構わないよという教え方をするのと、絶対に踵からつくのが正しいという教え方をするのとでは大きな違いがあるのです。
元々つま先からつく選手でもとりあえず踵からついて前に素早く乗り込むという動きを反復練習して、スピード練習や流しの時に自然と踵が浮くなら浮いても良いよという教え方をすれば元々その選手が持っていた良いところと大野先生の良いところが合わさって良いところどりが出来たのかもしれません。
私の場合は、良いところがそもそもなかったけれど、大野先生のお陰で真っ白なキャンバスに新しく絵を描くように良いところが描かれていったという感じなので、一つの強みが作れましたし、そのおかげでトラックでは3年生になるまで補欠でしたが、駅伝では1年生から京都府でも全国でも使ってもらえて京都府高校駅伝では3年連続区間賞が獲れました。
満足はしていませんが、それは大野先生のお陰です。
余談ですが、私は所詮その他大勢だと思っていたのですが、大野先生の頃はいつも一番前で熱心に話を聞いていた私の姿が印象に残っていたようで、高校最後のレース浜名湖駅伝では、私の区間にいらっしゃって、私が前を通ると手をたたいて応援して下さいました。その時、勘違いか目が合ったような気がしたのですが、あとから他の先生から聞いたのは「大野先生があの子は入学した時から、ずっと私が教えたことを一途にやってくれたと言っていた」と聞かされました。
そのレース、私は当時の全国高校駅伝3区の日本人最高記録を持っていた志方文典さんの区間記録を破る区間新記録で区間賞を獲りました。勝手に恩返しが出来たと思っています。
話を基に戻すと、つま先からつくように教えても問題は出てくるし、踵からつくように教えたら教えたで問題が出てくるということです。
ですが、このセンター返し理論で教えるとどんな市民ランナーさんにも対応できることに気づいたのです。当然、同じ人間でもレースペースが変われば、足のつき方は変わっても良いのです。私も実際にそうです。やはり、ペースが非常に上がると踵は自然と浮きます。
これは初めから踵からつくイメージを持ったり、初めからつま先からつくイメージをもつのとは根本的に異なるのです。結果的にそうなるのと、初めからそうしようと思ってそうするのとでは全然違うということです。
という訳で、今回も長くなってしまいましたが、最後に長距離走、マラソンが速くなりたい方にお知らせです。
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