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執筆者の写真池上秀志

京産大記録会走ってきました。~この一週間の技術練習の成果は如何に~

皆さん、こんにちは!


 この週末のニュース諸々をお届けさせて頂きます。


 さて、まず初めにもうご存じの方も多数いらっしゃるかと思いますが、昨日は弊社副社長の深澤哲也と一緒に京産大記録会の3000mに出場してきました。私は相変わらずのオーバートレーニング症候群で疲労が全く抜けず、先週は低強度走を中心に練習していました。


 少しずつ回復して、体の感覚も良くなっては来ていたのですが、だるさは抜けきらず、どうしようかずっと迷っていました。


 また、この期間ただ単に低強度走だけやるのではもったいないと思ったので、技術練習に重点をおいて取り組むことにしました。先日の無料ブログ「オンラインスクール「洛南メソッド」を受講して学んだこと」でも少し書きましたが、短距離の練習からも学ぶところがあったので、いくつか私の走りにも応用できそうだなと思うことを抜き出して、取り組んでみました。


 そうすると、非常に感触が良く、走りの感覚が少し戻ってきたような感じがしました。私の中で一番大切と言いますか、調子のバロメーターとなるのは1キロ3分ペースがいかに余裕をもってゆったりと走れるかです。


 心肺機能的に余裕があるかどうかはまた別の話です。それ以前の問題として、そもそも200m36秒、あるいは400m72秒、あるいは100m18秒ペースで走った時に、どれだけ動きに余裕があるかどうかです。


 この動きに余裕があるということが、レースにおいては重要です。改めて考えてみるに動きに余裕があるとは、目標とするレースペースで走った時に肉体的にはなるべく脱力できて、精神的にはなるべく集中しなくても走れるということです。これは感覚的な話にはなりますが、なるべく集中しなくても走れるということは精神的にもゆとりが持てて冷静に状況判断が出来るということです。


 基本的には人間は速度が速くなればなるほど集中力を要します。したがって、精神的にも(神経的にも)疲れるし、周りの状況を把握する余裕がなくなります。


 例えばですが、同じ中長距離パートの競技者でも、中距離選手の方がペースが速いので、周囲の声が聞こえません。要は、それだけ高い集中力を発揮しているので、ラップタイムなどを読んでもらっても、大歓声の中では聞き取れないのです。


 一方で、距離が長くなればなるほど、ペース自体は遅いので、もちろん集中はしているのですが、周囲に気を配りやすくなります。


 長距離走において勝てる選手は様々な意味において余裕をもってレース終盤まで走れる選手です。肉体的にも(心肺機能的にも)余裕があって、まだ血中乳酸濃度がそこまで上昇しておらず、技術的にも動きに余裕があり、もう一段階か二段階ペースアップできるギアを残しており、精神的にも余裕があって冷静に状況判断し、位置取りなどを的確に判断し、スパートするタイミングも見失わないことです。


 ですから、最高のレースをするには肉体的にも、技術的にも、精神的にも満遍なくアプローチがなされていなければなりません。ただ、その比率として言えば、トレーニングとリカバリー(すなわち肉体)が7割、5分から1割が技術、2割から2割5分が心や頭脳というのが私の持論です。


 そうはいっても、実際に体を動かす練習に関して言えば、今のオーバートレーニング症候群を発症している私の体にこれ以上の負荷をかけることは得策ではありません。状況を悪化させるだけです。


 その代わりといってはなんですが、完全休養をする必要もなくて、低強度走を積み重ねることは問題ありません。低強度走とは定義上、自分自身のホメオスタシス機能を下回る強度のランニングですから、徐々に体は回復します。


 ただ、この状況でもなんとかプラスになることはないかなと考えたのが、先述の通り技術練習となった訳です。


 本当に馬鹿げた話に聞こえるかもしれませんが、腕振りや歩きから基本の動作を反復しました。そして、「インカレチャンピオンから学ぶ走りの極意」の最後で紹介させて頂いたLauftechnik(ラウフテヒニック、走技術練習)を繰り返しました。


 そうこうしている間に、走りの感覚が戻ってきました。


 感覚を言葉で説明するのは難しいのですが、敢えて説明させて頂きますと、実は私も2019年にスポンサーがなくなって、起業したタイミングで走り方を一回変えてみようかなと思ってみたんです。私の走り方ははっきりと賛否別れるタイプの走り方で、ある人からすれば基本に忠実な走り方であり、ある人からすれば洗練されていない走りなんです。


 これは人間の走動作を分解したときに生じる考え方の違いによるものなのですが、人間が走るとき、足は上下方向の動きと前後方向の動きの両方を使っています。ですから、動きづくりの段階では結構前後方向の動きを意識するような動作と上下方向の動きを意識する両方の動作を行うことが多いのです。


 例えばですが、ももあげで足を体の真下につきなさいと教える人はももあげという動作で上下の動きを覚えさせようとしている訳です。


 一方で、すり足のような動きづくりをする場合には、前後方向の動きを意識させている訳です。


 同じミニハードル走でも、間隔を狭くしてももあげのように上下の動きを強く意識させるものもあれば、立ち幅跳びの姿勢からなるべく水平方向(上ではなく真っすぐ前)に飛んで、そのままなるべく姿勢を低く保ったまま真っすぐ前に走ることを意識させる練習もあります。


 あるいはメディシンボールと呼ばれる2キロの重さのバスケットボールくらいの大きさのボールを投げる練習でも真上に投げる場合と真っすぐ前に投げるパターンと両方の練習をしたりします。


 これも重めのボールを使って、下半身全体で地面をしっかりと押して、その地面からもらえる力を真上に変換する動きと真っすぐ前に変換する体の使い方の両方を体に学習させている訳です。


 何故なら、走りにおいては両方必要な動作だからです。


 とりあえず、ここでは走りは上下の動きと前後の動きが組み合わさって円運動になっているということを理解してください。


 全員円運動であることに変わりはないのですが、問題はその比率としてはどちらを強く意識しているのかということです。これはその人がもって生まれた骨格やこれまでの人生で培ってきた神経回路、筋持久力、レースペースなどによって変わります。


 そして、私はもともと前後方向の動きを重視する走り方です。何故なら、上下方向の動きを強調すると、ジャンプしなければならないので疲れるし、接地の衝撃も大きくなるので、故障しやすくもあるからです。


 一方で、ロンドンオリンピック男子マラソン代表の藤原新さんは完全に上下方向の動きを意識する人であり、その結果としてつま先接地を意識する人で、一時期一緒に住んでいた私もその走り方を何度も教えてもらっていたのです。一緒にスーパーに買い物に行ったら、買い物かごを前にもって、つま先から接地して歩くというような動作を指導していただいたりしていました。


 上下方向とつま先接地の関係性が分かりにくい人もいるかもしれませんが、そういう方はその場で入場行進のような足踏みをして、体の真下についてみてください。本当に真下につくとつま先から接地せざるを得ないことがお分かりいただけると思います。


 そして、走っているときは一度加速すれば、あとは慣性の法則が働くのでそれで前に進むのです。事実、藤原さんのその全盛期には「その場で足踏みしているような感覚」だったそうです。


 ただ、問題点としては、初めからつま先接地を意識すると、ハムストリングスや大殿筋などの大きな筋肉群を使うのが難しくなることと、上下方向の動きを強調すると接地の衝撃が強くなって、長い距離を走ると疲れやすかったり、故障しやすくなることです。ですから、私は長距離走においては前後方向の動きをより強調し、かかとから接地するのが基本だと考えています。


 具体的に言うとですが、入場行進のようにももあげしている状態からひざ下を前に振り出して踵から地面につくのです。そして、かかとが地面についたらそのままスムーズかつゆっくりと前に乗り込んでいきます。


 もしくは、一度振り出した足を接地の瞬間に水平方向に若干体の方へ引き寄せます。この動作によって、滑らかに接地し、接地の際の衝撃を最小限に抑えることが出来ます。


 そして、母指球に体重が乗ったらあとはそのまますっと足を後ろに流します。この時に、軽く真上にジャンプするようなイメージを持ってもかまいません。走るときには水平方向に慣性の力が働くので、真上にジャンプするようなイメージでちょうどよい場合もあります。


 これは速度がある程度速くなってからの話です。ゆっくり走っている時はジャンプするようなイメージは必要なく、そのままスッと足を後ろに流して、反対側の足をまた引き上げれば良いのです。


 話を元に戻すと、藤原さんをはじめとする上下方向の動きを強調する人と前後方向の動きを強調する人の間には以上のような違いがあります。最終的には、どちらも足の軌道は楕円を描き、なるべく滑らかな楕円を描くのが理想なのですが、意識の段階ではどちらに強調を置くかでやや異なり、接地の仕方もやや変わるのです。


 スポンサー契約を失った私は、失うものもないので、藤原さん方式の走り方に改造しようと試行錯誤してみました。もしかしたら、それを機に進化出来るかもしれないと考えたからです。それになんといっても、私の方が藤原さんよりもマラソンで約7分遅い訳で、とりあえず自分より凄い人の言うことは素直に聞いておこうと思ったからです。


 ところが、いくらやってもできませんでした。今でも「そもそも私には向いていないから一生できないのか」もしくは「私がザコだから出来ないのか」は分かりません。前者であれば、一生できないし、後者であれば単なる鍛錬不足です。あきらめるのはまだ早いということになります。


 どちらかは分かりませんが、戻せるなら元の走りに戻したいとも思っていました。数年試してみても楽に走る感覚は掴めず、走り方を変えることにそこまでのメリットがあるとは思えないからです。


 ところが、もう元に戻せなくなっていました。戻し方が分からないんです。これは困ったことになりました。最近ではボソッとカリスマトレーナーの祥子さんに「変な話、走り方が分からなくなった」とこぼしていた時もあったくらいです。


 右足と左足を交互に前に出せば良いだけなのに、走り方が分からなくなってしまっていたのです。


 ところが、この一週間で技術練習を中心に基本の反復をやってみると走りの感覚が戻りました。一言でいえば、「何を今まで難しく考えていたんだろう。基本通りに走れば良いだけじゃないか」と思い至ったのです。


 昨日のレースでは、ウォーミングアップの時点で本当は走りたくないくらい体がだるかったのですが、とにかく技術練習だと思って、Lauftechinik同様ゆっくりと走り始めて、同じ感覚のまま後半ペースを上げていこうと思いました。極端な話、1000mごと3分10秒、3分ちょうど、2分50秒くらいの感覚で良いと思っていました。


 さすがに、実際にはある程度は集団の力も借りながらではあったので、2分57秒、3分ちょうど、2分52秒というラップタイムにはなりましたが、初めからゆったりと余裕を持った動きで走れました。


 久しぶりに、1キロ3分を切るペースでゆったりと走れました。今までは5000m14分台の時も、結構動きには余裕のないままに最後まで粘り切って14分台という感じでしたが、今回はゆったりと構えていられました。


 今回は最後尾からスタートしたのですが、動きに余裕があるので前の選手の動きが良く見えること。冷静に観察しながらなので、特に焦ることもなく、前がおちてくるたびに順位を一つずつ上げていき、最後はラスト600mからラストスパートをかけて、2着に5秒差あけての組トップでゴールしましたが、最後の最後まで力まずに、走りを崩さずにゴールしようと思っていたので、まだ余裕はありました。


 ラストスパートをかけなくて良いのであれば、5000mまでいけたかなという感じのレースであり、何よりも長い距離にそのまま繋げられそうな感触を得ることが出来ました。


 体的にはまだだるいので、しばらくは軽めの練習で回復を待ちますが、技術的には徐々に感覚が戻ってきたので、引き続き技術練習に取り組んで、この時間を有意に使いたいと思います。


 あとは上下方向の動きを減らすことで普段の低強度走や中強度走もより楽に走ることが出来るようになってきました。上下方向の動きを減らすということは要するに、なるべくジャンプしないということです。


 人間はジャンプするのも疲れるし、ジャンプしたら接地の衝撃も大きくなるものなので、ダブルで疲れやすいものなのです。なので、昔から上下方向の動作を強調して強い長距離選手はごく一部です。


 最近はシューズの進化もあり、昔よりは出来る選手が増えてきましたが、やっぱり基本は前後方向の動きを意識して、踵から接地し、そろりそろりとつま先側に体重移動を行うような走りなのだと思います。


 ただ、後ろにいった足を前に戻してくる際には、膝を曲げて膝からリードした方が最短距離を通れます。ですから、この場合には膝を真上に引き上げるくらいの意識で良いでしょう。真上に引き上げてくるくらいの意識でもちゃんと前後の動きは出ます。そもそも足が体の後ろに行っている訳ですから、真上に上げるくらいのイメージで真っすぐ前に出るものです。


 そこから、足を前に振り出して、踵からそうろっと地面について、そこからまたそろりそろりと母指球に体重を乗せるというようなイメージです。合う合わないはあると思いますが、何かの参考になりますと幸いです。


 この週末はウェルビーイングラオインズの中高生たちも好記録をマークした人もいました。まずは毎週滋賀県の野洲川で練習しているメンバーが800mと1500mの二種目で全中出場を決め、1500mは滋賀県ナンバー1に輝きました。


 これで弊社副社長の深澤はこの3年間で滋賀県チャンピオンを二人も育てたことになります。


 私が指導する高校生は矢野君が暑い中3000m9分24秒と自己ベストを更新し、私が見始めた一年前と比べると50秒自己ベストを更新しました。実力的には9分15秒くらいの力がありますが暑さを割引けばこんなもんだと思います。


 他には入学時は全く練習できていなかった一年生二人が1500mで4分半まで記録を伸ばしてきました。これで3000m9分半くらいで走れる力のある選手が9人揃いました。ひと夏超えれば、5000m15分台が7人くらいはそろってほしいところですが、まだまだ下地が出来ていないので、夏にじっくりと下地を作っていきたいところです。


 この夏で下地を作って、駅伝と中距離レースの両方に生かして欲しいところです。それでも、ほんの一年前まで速い順に10分4秒、10分14秒、10分39秒、11分20秒だったことを考えると大躍進と言えるでしょう。このまま力をつけて欲しいものです。


 『夏場のトレーニング論』(2000円)をご購入いただいた方への限定特典のプレゼントは昨日で終了しましたが、引き続き販売はしておりますので、まだ詳細をご確認頂いていない方は是非こちらをクリックして、詳細をご確認ください。


 Ⅱ型池上機、売り切れてから多くの方より再入荷リクエスト頂き、なんとか5台だけ手配致しました。7月30日に5台限定で販売致します。


 今週金曜日より弊社副社長の深澤哲也の集中講義「マラソン未経験から2時間半切りを目指す脚づくりの極意」を三日間限定で販売致します。受講費は税込みで3500円の予定です。

閲覧数:516回1件のコメント

1 Comment


14timki
14timki
Jul 22

ナイスなペース配分!!現状8′49ならいいですよ♥

良い走りだったと思います♥😊お疲れ様でした。🇯🇵日本の夏は体調を整えるには何かと苦労しますね😅パリは涼しいそうです。ただ、秋には調子が上がるようにやってれば、上がりますからね😄

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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