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執筆者の写真池上秀志

走りに集中するってどういうこと?

更新日:2021年10月16日

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 集中力のある選手は同じ練習をしていても着実に結果を出していくというのは真実です。そして、ある程度ランニング経験のある方なら集中して走らないと良い走りは出来ないというのは誰しも知っていることです。個人的に私が思うのですが、走っていない人と走っている人との間で一生埋まらない溝が走ることに集中するということでしょう。そんなどこでも良い練習が出来るわけではなくて、きちんと場所を選んで高い集中力をもってやらないと良い練習が出来ないのですが、走ったことがない人は走ることなんて歩くのと同じくらい簡単だと思っています。 


 でも実際にはサッカーや野球と同じで高度な技術を要するスポーツなので、集中力に差 があると同じような練習をやっていても自ずと差が出てくるのは当然です。ただ冷静に考えてみると、走ることに集中するってどういうこと?って思いません?野球やサッカー、バスケなら集中するっていうのも何となくわかるんですけど、走ることに集中するとなると途端に意味が分からなくなります。今回は走ることに集中するということをもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。


走ることに集中するってどういうこと?

 先ずは集中しないとどうなるかということから考えてみると分かりやすいと思うのですが、私は一番大きいのは体の感覚が分からなくなることだと思います。正確に言えば、分かりにくくなると言った方が良いかもしれません。全ての練習には目的があります。そして、長距離走の一つの特徴として全ての練習は目標を達成するための必要十分な負荷でなければいけないというのがあります。

 例えばですが、有酸素刺激も無酸素刺激もかけたければ全力で走るのが良いに決まっています。でも毎日全力で走っていては走るのは速くなれません。その理由などについてはここではテーマからずれてしまうので、割愛してしまいますが、長距離走・マラソンのトレーニングというのは、きつければきついほど良いわけではなくて、それぞれの練習に目的を理解しながら上手く組み合わせていくことが必要なのです。


 そして、継続的に様々な刺激を組み合わせていくことが大切なのです、そうなるとその練習の目的を達成しながらも、その刺激は最低限、つまり必要十分な負荷である必要がある訳です。分かりやすく一言で言ってしまえば、3000m9分ちょうどで走るための感覚を掴むための流しなら200m36秒より速くても遅くてもいけないということです。これは持久走であろうと、スピード練習であろうと変わりません。その刺激の量は充分でなければいけませんが、逆に充分な値に達しているのなら、後は楽であれば楽であるほど良いのです。


 このあたりがいわゆる感覚の問題です。あとは持久走で自分の状態を確認するというのも非常に重要です。極論すれば、全力で走らないと自分のその時の状態なんて分かりません。いくら「今の自分なら5000m15分ちょうどで走れるな」と思っていてもやってみないと分からない訳ですから。


 でも、これがまたパラドックスで本当の最高の状態って一回しか出せないんです。少し幅を持たせて考えても、半年のうち2週間くらいです。ですから、狙ったレースにうまく合わせられるように少しずつ少しずつ積み上げていく必要があります。自分の状態を上手くつかみながら、狙ったレースに向けてピークを持っていくのですが、この時にレースを乱発したり、インターバルを乱発してしまえば、必然的にピークが合わなくなります。それどころがどこかで下降曲線を描くようになるでしょう。


 こうならないように自分の状態を見極めながら、上手いことトレーニングを微調整していく必要があるのですが、この時に重要となるのが、低強度なトレーニングや中強度のトレーニング、もっと言えば歩いている感覚などで自分の状態が分かるようになっておかないといけないということです。これこそ口で言うは易し、行うは難しの部分になりますが、でもやっているうちに出来るようになってきますよ。これは本当に。調子が良い時は歩いているだけで、「あっ今日はいけるわ」みたいなのがピンっと来るんです。もっと言えば、そこまで感覚が鋭くなっているということ自体が調子の良さであり、調子が悪いと感覚も鈍くなっていて自分の状態がよく分かりません。


 ただ、これは面白いもので体の状態と感覚の状態は別物なんです。走れていなくても感覚の状態が良ければ、その都度自分の打つ手がことごとく当たります。こういう時はこれをやる、こういう時はこれをやるというのがことごとく当たるんです。そうすると、たとえそのタイムが遅かったとしても「今の自分の状態なら5000m14分45秒くらいかな」と思ったら、まず当たります。そういうのが陸上競技の面白いところです。


 ただ、一つ確実に言えるのは集中しないとこの辺の感覚が分からないということです。ちゃんと集中しないと分かるものも分からなくなるんです。例えていうなら、料理みたいなものだと思います。私みたいに大雑把な人間は、適当に味付けをして、味見もせず、美味しい美味しいと言って食べてるから料理がいつまでたっても上達しません。一方で上達の速い人は集中して料理をして、集中して味見をするのでちゃんと微妙な味加減が分かるようになり、そして一度美味しい料理が作れるようになったら何回でも再現できるようになります。それは集中しているからです。


 ちなみに私が一つだけ料理に関してうるさいことがあります。それが麺のゆで具合です。麵のゆで具合によって、GI値が変わるんです。要するに、血糖値やインシュリンの反応の具合が変わるんです。これがグリコーゲンの再合成速度や集中力に関係してきます。だから麺のゆで具合だけはこれはゆですぎ、これは大丈夫というのが分かるようにできています。結局、こういうのも集中してるかしていないかだけの違いです。


 ただ、味付けはもうどうでも良いんです。生きるのに必要ないわけですから、何でもおいしいと言って食べた方が良いに決まっています。異性だって、そんな難しい顔して品評会みたいなことして可愛い(カッコいい)とか不細工とか言うよりも、集中せずにただただ漠然と見て可愛い(カッコいい)なと思っている方が人生楽しいに決まっています。ただ、ランニングに関してはやっぱり集中しないと分かるものも分からなくなります。これは結構もったいないことだと思います。同じようにやってるならさっさと目標に到達した方が私は楽しいと思います。


 そして、何よりも重要なのは走り方を作るということです。私は動画で走りを撮影して、それを見ながら修正を図ることには反対です。今は科学技術も発達してセンサーチップをつけてパソコンに棒人間を映しながら、自分の走りを解析することも出来ます。ただ、これは私にとっては(研究者からの反論はあるでしょうけど)、時間とお金の無駄遣いです。だって、そのペースで走った時に、一番楽な走り方をしているのが正しい走り方なんですから。そして、どの走り方をしたときに一番楽かというのは究極的には本人にしか分かりません。


 そして、この時重要なのはどこの筋肉にどれだけの力を入れて、どこの筋肉にどれだけの力を抜くのかということなんです。次に重要なのはリズムやタイミングです。腕の振りと足の接地などのタイミングが合っていないといけません。ただ、このタイミングもコンマ何秒の積み重ねなので、動画で見てわかるようなものではないと思います。ものすごく感覚的なものですから。


 ただ、ここで一つ書いておきたいことはここに書いている動画で撮影することに反対だというのは、動画で撮影することそのものに反対しているのではなく、機械的に型に当てはめて考えることに反対だということです。ほんの一例を挙げると、つま先からつくとか踵からつくとかは別にどうでも良いことだということです。その他どうでも良いことはいっぱいあるのですが、何故か観る人が見ればどこを直せば良いかがピンっと来るというのも事実なんです。型にはめてるわけではないので、言ってる方も上手く説明出来ないんだけど、見てると何となくわかってくる、それでここを直しなさいと言うと実際に楽に走れるようになったりするんです。これこそ集中してみてる人とそうじゃない人の違いでしょう。昔東急、早稲田、SBなどで数々の日本記録保持者やオリンピック代表を育てた中村清という指導者がいたのですが、その中村先生が「ストップウォッチなんか見んでいい。選手を見なさい」と他の指導者に行っていたそうですが、これもそういうことだと思います。


 また高橋尚子さん、有森裕子さん、鈴木博美さんなどを指導して有名になった小出義雄監督も「寝てるときも起きてる時もかけっこのことばかり考えていれば、そりゃ自然と分かってきますよ」と言ったそうですが、これも同じようなことだと思います。集中力に波をつけながらも、一日中かけっこのことばかり考えていれば分かってくるということなのでしょう。


 ちなみにですが、私は速く走るときだけ集中していれば良いというのは間違いだと思います。確かに1キロ3分ペース、1キロ3分半ペース、1キロ4分ペースで走るのとではそれぞれ微妙に違います。求められる動きが変わってくるのは事実です。ただ、ベースは一緒ですから、基本的にはゆっくり走るのをいい加減にやっていると速く走っても汚い人が多いです。実業団レベルになるとさすがにそこまで汚い選手はいませんが、高校生くらいだとやっぱりゆっくり走った時に綺麗な選手とそうでない選手の差はレースでも大きいです。


 で、改めて結論から言えば、長距離走・マラソンで一番重要なのは無駄な力を抜くことです。そして、無駄な力を抜くためにやることが集中だと思います。集中していない人は無駄な力が抜けないので、同じように練習してても長く速く走るということが出来ないのではないでしょうか。私自身もやっぱり良い時は無駄な力が入っていないので、苦しくてもそのペースで走り続けることが出来ます。一方で、余分な力が入っているときは、前半は楽だなと思っても、後半ガタガタって崩れてしまいます。そんなところからも心理状態がレース結果に影響してくるのではないかと思っています。


走ることに集中するってどういうこと?方法論

 では走ることに集中するためにはどうすれば良いのでしょうか?いまだによく分かりませんよね。では、改めて考えてみましょう。集中して走るためにはどうして練習場所が重要なのでしょうか?どうして集中できる場所とそうでない場所があるのでしょうか?


 これは簡単で、危険かそうじゃないかの違いです。本当に集中するためには一点集中が重要です。要するに、視線を固定させるということです。そして、望ましくは聴覚も出来る限りシャットアウトされているのが望ましいです。ということは、集中して走っているときは視点が一点に定まっており、音も聞こえないので、一般道を走るのは非常に危険なんです。で、危険じゃない状況で走ろうと思うと、視線があっちこっちに行ったり、聴覚情報を収集したりする必要が出てくるので、物凄く危険になるんです。


 ということで、走ることに集中する最も簡単で手軽な方法は視線を一点に固定するということです。そのためには川沿いや公園など最低でも車が来なくて、自転車や人通りも少ないところを選んで走る必要があります。視線を一点に固定する、是非試してみてください。


 長距離走、マラソンについてもっと学びたい方はこちらをクリックして、「ランニングって結局素質の問題?」という無料ブログを必ずご覧ください。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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