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執筆者の写真池上秀志

練習でできないことは試合でもできない?

更新日:2023年2月4日


こんにちは、ウェルビーイング池上です。


「練習で出来ないことは試合でも出来ない」これはスポーツ界では最も使い古された言葉の一つではないでしょうか?


 私は他のスポーツのことはあまり知りませんが、ホームラン王を取るような打者は打撃練習では8割以上はスタンドに入れるという話を聞いたことがあります。これが試合になると、ホームランの率は通常は1割以下に落ちます。本当に活躍する選手でも1割程度です。


 では野球の守備ではどうでしょうか?


 これもやはり基本的には「練習で出来ないことは試合でも出来ない」という言葉は当てはまりそうです。ノックの段階では実際に投手が投げて打者が打つ打球と比べるとボールの回転も素直で、エラーの率は低いでしょう。


 「練習で出来ないことは試合でも出来ない」これはほとんどのスポーツで当てはまるのではないでしょうか?


 考えてみれば、陸上競技でもほとんどの種目はそうかもしれません。走り幅跳びでも砲丸投げでも、100m走でも練習よりは試合の方がやや記録が向上するのが普通ですが、そう大きくは変わりません(反論のある方はお願いします。何しろ素人なもので)。


 ところが、マラソンというのは寧ろ「練習で出来ないことを試合でやるのが当たり前」のスポーツです。皆さんはマラソンを2時間10分で走る人は、いつでもマラソンを2時間10分で走れると考えているかもしれませんが、これはとんでもない勘違いです。競技者がレースで発揮する力というのは何ヶ月も一本のレースに向けて慎重に準備して、最後の調整が上手くいって、それでやっと一本だけ走れるものです。


 少々データが古いですが、2019年度終了時点で、日本人のサブテンランナーはほぼ100人ちょうどでした。そのうちの実に8割の選手はサブテン達成は1回か2回だけ、そして約半数はサブテンは人生で一回だけでした。練習で出来ないことは試合でも出来ないどころの話ではありません。寧ろ、人生で一回しかできないということも普通なのです。一応サブテンを達成すれば、一流選手と言われますが、それでも8割の選手は1回か2回達成して終わりです。練習で出来ないことは試合でもできないどころか、人生で同じことが3回できれば超凄いよね!という世界です。


 ちなみに藤原新さんがサブテン回数5回で歴代3位、高岡寿成さんがサブテン回数6回で歴代2位、川内優輝さんが13回くらいで歴代1位です。川内優輝さんのサブテン回数は群を抜いて多いです。これは世界中で見てもかなり多い方なのですが、それでも13回です。1シーズンでホームランを55本も打つ王さんとは全然違います。


 というわけで、この数字を見てもお分かりいただけるのですが、マラソンというのは練習で出来ないことが試合でできるのが当たり前の世界なのです。実はこのあたりに練習を考える上でのヒントがあります。逆の考え方をしてみましょう。どうして、サブテンランナーは一回サブテンをしても次は出来なかったり、かくも再現性が低いのでしょうか?一度サブテンをしているということは、一度はその能力に到達しているわけです。どうして、同じことを何度も繰り返さないのでしょうか?


 それが出来ない主な理由は二つあります。一つ目は、マラソンは疲労の回復に時間がかかるのですが、疲労の回復を待つ間練習ができません。そして、練習ができない間に、培った力が落ちてしまいます。


 二つ目は、人間の体は様々なシステムをある距離において特異的に調整した時、その能力はあまり長続きしないということです。


 これもそれぞれ逆の考え方をしてみましょう。トレーニングというのは基本的には体を弱くする行為です。あなたはインターバルの直後とウォーミングアップの直後でライオンに追いかけられたら、どちらの方が生存率が高いでしょうか?ライオンと比べるのは無理という人はあなたを殺そうとしている人から逃げると考えてください。これは当然軽くウォーミングアップをして今から走り出すという時の方が速く走れますから、生存率は高くなります。インターバルの直後では体が疲れきって速く走れないでしょう。


 インターバルをしたから強くなるのではなく、インターバルをして体が回復し、さらに体がトレーニング刺激に対して適応するからこそ強くなるのです。ということは、練習というのは速く長く走れるからといって常にそうすべきではないということが分かります。これを俗語では練習と練習を線でつなぐと表現します。


 要するに、たまに頑張ってものすごく良い練習ができたとしても、それで疲れ切って、しばらく良い練習ができず、ただただ体の回復を待つだけ、そして体が回復したらまた思いっきりレースのような負荷をかけて走る、というやり方では練習と練習が点になっていて繋がっていません。こういうやり方では強くなれないんです。練習と練習は線で繋いでいくことが重要です。


 次に二つ目のポイントを考えてみましょう。二つ目のポイントは人間の体というのは様々な刺激をある距離に対して特異的に調整するとその能力は長続きしないということです。これは俗語ではピークアウトといったりもします。これは改めてマラソンというスポーツの原点にかえって考えてもらえれば分かります。マラソンというのは一体どういうスポーツでしょうか?おそらく考えたことがない人がほとんどだと思いますので、くだらないと思わずに真剣に考えてみてください。


 一つ目の問いはマラソンというのはシーズン何試合制でしょうか?プロ野球は1シーズン144試合です。そのあとにさらにポストシーズンがあります。バスケのBリーグは前期と後期に分かれていますが、1シーズンで確か30試合くらいあります(野球とバスケは詳しくないので、間違っていたらどなたか訂正をお願いします)。


 ではマラソンは?そうです、マラソンは一発勝負です。あなたが世界記録保持者だろうが、ボストンマラソンのチャンピオンだろうが、そんなことは関係ありません。スタートラインに立った選手は全員平等で、一発勝負です。過去の成績は一切関係なく、一発で勝負を決める、これがマラソンというスポーツの本質です。球技のように数百試合、数十試合する中でペナントを争うというスポーツではないんです。


 さて、マラソンは一発勝負で決めるというルールをここで確認しました。では次の質問に移りましょう。あなたは年間にマラソンを144本走るのと、年間に1本しか走らないのでは、どちらの方が速く走れるでしょうか?


当然、1本です。


では年間30本と年間1本ならどうでしょうか?


当然、1本です。


では年間12本と1本は?


これも1本でしょう。


では、年間3本と1本は?


うーん、微妙ですね。


では年間2本と1本は?


これは違いがないでしょう。


 要するに、マラソンというのは初めから自分がたった一回で良いから一番速く走れる本数を決めてスタートラインに立つわけです。その日に向けて様々なシステムをマラソンという距離に合わせて調律していきます。様々なシステムというのは平たく言えば、短い距離を速く走る能力と、ゆっくりと長く走る能力をマラソンという距離をたった一回で良いから、できるだけ速く走るという目標に向けて仕上げていくわけです。


 陸上界ではレース前のテストレースやレース前の特異的な練習において最高のパフォーマンスをしてしまった選手はレースでは思うような結果が残せないという一つの常識があります。これはここまで説明してきた理屈で説明できます。もともとたった一回で良いから全力で走る能力を高めてきているわけですから、それをレース前に出してしまうとうまくいきません。「勝つためにはTTありき」とおっしゃっているマラソン界のレジェンド瀬古利彦さんですら、「TTで外すために脚を重くして臨む。TTで外す能力があるから、レースに合わせる能力がある」とはっきりと著書の中に書いておられます。外すというのはピークが合わないという意味です。


 TTというのはあくまでもその日の全力を出すという意味で、本当の意味での全力(最高の体調で全力で走る)をやってしまうとレースでは結果が出ないんです。実際に、瀬古さんは練習の40kmTTで2時間3分という過去最高記録を出した次のびわ湖毎日マラソンでは、35-40kmが17分でタイムも2時間12分と瀬古さんらしくない走りに終わりました。私があーだこーだというのも変ですが、これは私ではなく瀬古さんご本人が「初歩的なミスをしてしまった」と述懐しておられます。


 川内優輝さんが「常識なんて誰かが勝手に決めたもの」といってバンバンレースに出て以来、それを真似したり、真似しないまでも、マラソンは年に2、3本がベストというのを根拠のない固定観念だという人が出てきましたが、それは間違いです。また詳しく書いてみたいと思いますが、川内さんは強くなる段階においてはレースに出まくって強くなった訳ではありません。


 そして、第二にですが、強くなってからの川内さんもレースに出まくることで自分のピークのレースを何本か失っている可能性はあります。野球で言えば、エースピッチャーをシーズン通して中4日で毎試合完投させても、二流投手より上か同程度の活躍はするかもしれませんが、エースのピッチングはできないでしょう。もっと極端な話をすれば、私だって2時間27分程度で良いのなら別に毎週でもマラソンは走れます。でも、そうすることで一流になるチャンスを永遠に失うことになります。それと同じことです。


 もちろん、川内さんの場合は、一週間に1本というほど極端ではありませんし、中には特異体質の人もいるでしょうから、断言はできません。ですが、一般論として年間2、3本がベストだというのは、歴史の中で検証されてきたことです。これは理屈をいくらこねくり回しても分かりません。先人たちがいくつも試行錯誤をして共通解として見えてきたのが、年間2、3本という数字なんです。


 私が常々先人たちからトレーニング理論を学ぶことで、とんでもない時短で最短距離で目標達成に近づけると書いているのはこういうところが根拠です。私のような二流選手でも東京オリンピックで銅メダルを獲った円谷幸吉さんよりも自己ベストは速いんです。私は円谷さんの前のエミール・ザトペックの時代から円谷さん死後の約50年分の先達からマラソンを学んで普遍的なトレーニング理論としてまとめあげてるのですから、これは当然です。


 何も円谷さんよりも私の方がすごいという意味ではなくて、私は先人たちのお力も借りて走っている訳ですから、円谷さんよりも速いのは当然なんです。先人の知恵というのは厚底シューズなんか比べ物にならないくらいの力を持っています。


 ここらで、伏線を回収していきましょう。練習でできないことができるのがマラソンでは当たり前であり、そのためにはトレーニング理論を理解して、練習と練習を線でつなぐことが大切だと述べてきました。そして、これを形にする上で大切なことが適切な練習計画を立てて練習の目的を理解した上で、実行するということです。適切な練習計画を立てて、練習の目的を理解した上で実行することの重要性を知る上で、私はケニアでの経験が多いに活きています。


 あなたはケニア人はみんながみんな走るのが速いと思い込んでいないでしょうか?


 これはとんでもない偏見です。実はケニアでも活躍するのはごく一部の地域の選手たちだけです。ンゴングやカプタガット、エルドレット、イテンなどの地域が主な地域ですが、その中でもイテンは別格です。国際的に活躍する選手のほとんどがイテンの出身かイテンで練習している選手です。


 イテンは人口4000人にランナーが1000人という町で成人男性のほとんどがランナーです。産業は農業とランニングしかなく、現金収入を得たければ走るしかないという厳しい環境の中で、文字どおり人生をかけて多くの選手が毎日トレーニングに励んでいます。気候が良くて、トレーニングパートナーが腐るほどいて、遺伝的にも文化的にも申し分のない彼らですが、お金が稼げるのはわずか10%程度です。レベルが高いから生存競争が激しいのでしょうか?


 答えはイエスであり、ノーです。レベルが高くて生存競争が激しいのは事実です。しかしながら、彼らの大半は私よりも力は下なんです。


 実はイテンで練習している彼らが強くなるには主に3つのパターンがあります。1つ目はヨーロッパのコーチからトレーニングを学ぶ選手、2つ目はヨーロッパのコーチについている選手と一緒に練習し、知らず知らずのうちに適切な練習計画で練習している選手、3つ目は経験豊富な先輩ランナーからいろいろ教えてもらって速くなるパターンです。この3つは数々のケニア人選手を育て上げ「ケニアンマジック」の異名をとった我が師ディーター・ホーゲンから教えてもらったことですが、私も見ていて気づいたことがあります。


 例えば、ファルトレクです。ケニアでのファルトレクは通常100人くらいでスタートするのですが、当然力の差があります。にもかかわらず、全員が先頭グループについていこうとします。そして、何本か走った後に遅れます。遅れた選手は繋ぎで追いつこうとします。そして、また離れます。それを繰り返しているうちに繋ぎも疾走区間も同じペースになってしまってただの持久走になってしまいます。


 ファルトレクと言いつつただの持久走になっている選手が80%近くいるんです。距離走も似たようなものです。とにかく、ついていけるところまで先頭について遅れたら、やめてしまいます。たまにはこういう練習があっても良いと思いますが、これでは距離走をずっとやらないことになってしまいます。練習の目的を理解していない選手が大半で、これでは強くなれないなと思いました。


 マラソンは練習でできないことを試合でやるのが当たり前のスポーツであり、そのためには適切な練習計画を立てて、練習の目的を理解して実践し、練習を線で繋いでいくことが大切なんです。


練習でできないことを試合でやりたいあなたへ

 私もかつては試合でやることを練習でやろうとしていたことがありました。大学に入学した頃の話です。当時、速いペースでのレペティションもやりましたし、20km以上の走り込みも何度もしましたが、ハーフマラソンがまともに走りきれませんでした。


 そこで私は最低限のスタミナとスピードはあるのだから、あとはタイムトライアルをやれば、ハーフマラソンが走りきれるはずだと考えました。練習で、バンバンタイムトライアルをした私は、練習を線で繋げることが出来ず、初ハーフに続いて2本目のハーフマラソンも大撃沈、最後の2kmは6分40秒くらいかかるという大撃沈をかまして、65分27秒でした。


 それから一年後、私は逆に大した練習はしていないもののハーフマラソンを63分9秒で走りました。一人で1マイル6本を3:05/kmくらいのペースでインターバルをしていました。「こんなことしてたら、関東に行った洛南の同期の奴らに笑われるやろうな」と思いつつも、これでうまくいくという確信がありました。綿密に練習計画を練ったからです。


 そして、大人になり、ブログを書き始めたのですが、私の考え方は市民ランナーの方に劇的な効果をもたらすことに気づきました。理由は単純でほとんどの方が練習と練習を線で繋いでおらず、またマラソンは他の球技のように「練習でできないことが試合でできるのが当たり前」という感覚がない人も多かったからです。


 そして、この三年間で私の集中講義の受講生から100人以上のサブスリーや5000m15分台などのエリート市民ランナーが生まれました。勿論、この数の外には初めてサブ4を達成した人、1日に5分のジョギングから初めてマラソンを3時間44分で走った人、ハーフマラソンのタイムをたった2ヶ月で9分伸ばした人などが含まれます。成長の速度や目標は人それぞれですが、劇的な成果を上げていることは間違いありません。


 適切な練習計画の立て方に関しては「トレーニングプログラムビルダー」という集中講義の中で、徹底解説しています。トレーニングプログラムビルダーは2時間の動画の中でご自身の目標と走力に合わせたトレーニング計画の立て方をステップバイステップで解説し、PDFで送らせていただくワークシートを埋めれば自動的にご自身にぴったりな最適な練習計画が立てられるようになっています。あなたがトレーニングプログラムビルダーを受講するメリットは以下の通りです。


・自分にあった最適な練習計画が立てられる


・コーチをつけなくてもプロレベルのセルフコーチングができる


・最短距離で自分の目標を達成できる


・コンスタントに出せるという意味での能力向上ではなく、本当に研ぎ澄まして出した自分の最高の走りというものを体感できる


 トレーニングプログラムビルダーはロンドンオリンピック男子マラソン代表で、現在スズキや神野大地君、福田穣さんのコーチも務めておられる藤原新さんからも「ものすごく体系的で分かりやすい。自分が現役時代無意識のうちにやっていたことを言葉でわかりやすく説明してくれているので、現在選手を指導するのにとても役に立っている。市民ランナーから競技者まで是非一度は受講してほしい」と高評価を頂いているトレーニングプログラムビルダーはたった19800円での受講していただけます。


 更に、こちらの記事をお読みいただいた方限定でたった15000円の投資額で受講して頂けるようにします。


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 トレーニングプログラムビルダーには全額返金保証をつけており、万が一受講後にご満足いただけなかった場合は、理由を問わずに全額返金させて頂きます。ですので、あなたにリスクは一切ありません。


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よくある質問

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Q:支払いは一度きりで追加の支払いはありませんか?

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Q:講義者は誰ですか?

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A:そういったお気持ちもとても分かります。不安な方はペイパルでお支払いただき、もし商品が届かないなどの不具合がありましたら、ペイパルの方から買い手保護制度を用いて返金請求をしてください。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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