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執筆者の写真池上秀志

福岡国際マラソンを大阪マラソン日本人トップが振り返る

更新日:2020年12月21日

 今日は福岡国際マラソンの日です。皆さんはどのようにマラソンを楽しむのでしょうか?私自身は楽しみというのもありますが、勉強の場でもあります。他の人のレースを見ることで学ぶことは多くあります。今回は現役ランナーの視点から書いた福岡国際マラソンをお届けしたいと思います。


 個人的には今回のマラソンでの一番の注目は藤原新門下生の中村泰之さん、福田穣さん、マイケル・ギザエさん、神野大地君の4名でした。この4名は福岡国際マラソンの前の仕上げで富津岬での25km走を1時間15分4秒でカバーしており(福田さんは20kmまで)、仕上がり具合が非常に良かった選手です。


 レースは先頭集団が5km15分を少し切るペース、第二集団がほぼほぼキロ3で行っていました。今回のレースでの前半から中盤あたりのレース展開を見て、今日はどれだけの選手が好タイムを出すのだろうかと思うほど、集団の数も大きく多くの選手がキロ3のペースでいっていました。競技者というのは面白いもので、自分が出ていないレースでもキロ3のペースでこれだけ集団が大きいと焦るものです。自分がレースに出ているような気持ちになってしまうからです。


 ところが結果を見るとサブテンランナーは7名しか出ませんでした。それを見てあぁやっぱりマラソンって昔から変わらないなと思いました。もっと具体的に見ていくと35-40kmを16分以内に抑えたのは6名だけです。15分半以内に抑えたのは一人だけでした。そして、最後の2.195kmを7分以内に抑えたのも5名だけです。このうちの岡本直己さんと中村泰之さんが途中で遅れながらも最後を6分台で抑えるベテランの味を見せていました。後の選手は前の方の集団で終始レースを進め失速を最低限に抑えた選手たちです。あとの選手は推して知るべしという結果です。


 私は別に他の選手をどうこうと評価しようという気持ちは一切ありません。マラソンのレース当日に私たちが見るのは結果だけです。ですが、その選手や指導者がどういうレースをしたくてどういう練習をしてきたのかを知らなければ、評価するということは出来ません。結果が全てとは言われますが、選手は結果が良くても悪くても次に向けての改善を図っていくべき立場にありますから、その過程を知らないと評価も出来ません。


 ただ、私が感じたのはマラソンって昔から何も変わっていないんだなということです。昔から結果を出してきた選手は、40km走の重要性を何度も説いています。それもただ単に40kmを走るということではなく、レースのイメージが持てるような40km走です。もちろん、40km走だけやってれば、良いというわけでもありませんし、40km走以外にも速いペースでの距離走をするでしょう。インターバルやもっと短くてペースの速いペース走もいれます。ただ、その上でやはりマラソンが42.195kmの競技であることは何も変わりません。今回もあれだけ力のある選手がいて最後の7kmをまともに走ったと言える選手は5名だけです。その5名の選手も、それまでキロ3でいっていて3分10秒まで落ちているので体感的にはかなり遅いペースで走っているように感じていたと思います。重ねて書きますが、それが悪いとかダメだとか、そういう風に評価しているつもりは一切なく、マラソンというのはそういう競技だということです。


 結局スピード、スピードと言われるようになってきましたが、昔から結果を残してきている指導者や選手のいうことがもっと見直されても良いのではないかなと思います。優勝した吉田選手の30キロの通過は1時間29分30秒ですが、これも宗茂さんが2時間9分5秒のタイムを出した時と変わりません。スピード、スピードと言われますが、その実吉田くんはそれほど失速しなかったのに対して、宗さんは大きく失速したという持久力の違いです(もちろん、当時世界歴代2位の記録と現在の吉田くんの記録を単純には比べられません)。


 もう一つは、そもそも前半からみんながみんなあの速いペースにのっかる必要はあるのかなという疑問もあります。これに関してもその選手や指導者がどういうレースをしたいと思って、どういう練習をしてきたのかがわからないとなんとも言えないのですが、果たして30人の選手がキロ3でいっても対応できる練習ができていたのだろうか?もしくは、本気で2時間6分台をイメージできていたのだろうか?あるいはとりあえずキロ3でいって、失速しながらもどこまで抑えられるかというテーマを持っていたのだろうか?この辺りも自分目線で考えていくと面白いです。


 私の場合は、やっぱりマラソンというものを42kmで考えます。特に次に出場する防府読売マラソンでは去年のペースメーカーは1キロ3分5秒ペースでいきます。であれば、何が何でもキロ3に合わせて練習するよりも、脚が重い状態で5kmを15分半くらいで推していく練習を重視しました。これは一般に思われている以上に大きな違いです。


 例えばですが、神野くんや中村さん、福田さんが実施した25kmをキロ3という練習ですが、これはおそらく前後ある程度調整していると思います。これは聞いていないので分かりませんが、普通はある程度調整しないとできないし、その練習の後も疲労は残るでしょう。トップランナーといえどもいつもいつも走れるわけではありません。


 そうすると、この25km走をするのに1週間ぐらいはまるまる使います。何が何でもキロ3という考え方だとどうしてもこうなります。コンスタントに練習するのが難しくなってきます。一方で、私はといえばこの3名と比べると力は大きく劣りますが、15分半で良いのなら、1週間の中に40kmの最後の10キロを15分半、ハーフマラソンを15分半、35km走の最後の15キロを15分半と脚が重い状態でも満遍なくこなしていくことができます。どんな展開になっても良いように、35kmの最後の15分半は1キロごとに2分55秒と3分20秒を繰り返しての15分半です(実際にはやや速いペースで行くので計算合います)。今日の各選手の後半の失速を見て行くと自分にはこういうやり方があっているのかなと思います。


もちろん、大前提としてこれ以外にインターバルでは1キロ3分を切るペースでやっています。マラソントレーニング中もショートインターバルでは5000m13分台のペースを何度も体に覚えさせました。これは誰しもやっているはずですが、その上でどこに重点を置いて練習していくのかで大きく違ってくるということです。また、そう考えていくとどのレースに出るのかということもよく考えられるべきことで、これについては愛知製鋼の児玉監督もインタビューの中で、誰もかれもいきなり福岡、東京、びわ湖の3つに出るのはどうなんだろう、他に選択肢があっても良いみたいなことをおっしゃっています。


 じゃあそれでお前は防府読売マラソンでどれだけの結果を出せるんだと言われればそれは神のみぞ知ることであります。私自身、楽しみではありますが、こればっかりはやってみないと分かりません。大切なのは自分がどういうレースを思い描いてどういう準備をしてきたのか、というそのプロセスです。そのプロセス自体も自分だけで考えているよりも人のレースを見て学んだ方が、近道のような気がします。では、今回のマラソンから学んだことは何か?スピード化とか、厚底シューズがどうとか言われるけど、結局昔からマラソンは変わっていないし、であればもっと昔の人から学ぶ姿勢を持ったり、見直されることがあっても良いのではないかということです。


 また、単純な原則としてマラソンは42.195kmだということです。私もトレーニングにおいては質を重視します。でもその質は42.195kmを速く走るための質です。それを追求して行くためにどういう練習をしようかなと考えた時に、やっぱり15kmからハーフマラソンくらいの距離のスピード感と長い距離の後半のペースアップを上手く組み合わせてコンスタントに練習ができるというのが良いのかなと思いました。当然、そこにいきなり持っていける訳ではないから、徐々に積み重ねて状態を上げて行く、そして基礎的な力をさらに高めていって将来的に今の15分半くらいの感覚で15分ちょうどでいけるような練習ができれば、これは2時間6分が見えてくるでしょう。ただ、やっぱりコンスタントに走れるというところが条件になってきます。無理やりキロ3でいっても必ずしも結果に繋がる訳ではないことは、今回のレースを見ていても明らかだと思います。


 そんなことを思いながらも次の防府読売マラソンに向けての練習はもうほぼほぼ終わっているので、今更どうしようもないのですが、今後のマラソントレーニングに向けてまたひとつ勉強になったなと思いました。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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