top of page
執筆者の写真池上秀志

テストレースと練習としてレースに出場することの違い。

 突然ですが、あなたは「最高の練習はレース」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?


 ちょくちょく言われるこの言葉ですが、実際には闇雲にレースに出ても速くなるものではありません。適切なトレーニング戦略に基づいてレースを組むことが自分の走力を最大限に高める必要条件です。


 では、実際にはどのように本命レース以外のレースを組めば良いのでしょうか?


 今回はあるウェルビーイングオンラインスクールの受講生様より、テストレースとして出場する場合と距離走として出場する場合の違いについてご質問を受けましたので、その回答を皆様にも紹介させて頂きます。


 それではどうぞ!


「テストレースと練習としてレースを使うことの違いについてですが、練習の基本は中強度中量高頻度です。なるべく、体に大きな負担をかけずに、必要な刺激だけを体にかけることが練習の基本です。この基本をおさえておかないと、常にもっと長く、もっと速く、もっと追い込むという練習になってしまい、なかなかうまくいきません。段階を踏んで、同じ感覚で走れるペースを速くする、同じ感覚で走れる距離を伸ばしていくということは大切なことです。しかしながら、それは常に限界まで追い込むこととは違うのです。


 ところが、中強度中量高頻度の練習には欠点があります。


 一つ目の欠点は一応レースから逆算して、必要なトレーニング刺激をかけてはいくのですが、実際に限界まで追い込むような練習はあまりしない訳です。しかし、レースとは自分の限界を試す訳です。


 そうすると、自分の計画が微妙にズレてくることもある訳です。良いコーチというのは、セルフコーチも含めて、だいたいこういう練習をこういう風に積み重ねていけば、レースではこのくらい走れるという計画が正確に出来る人です。


 これはトンネル工事のようなものです。トンネル工事では向こう側が目視出来ないのですが、しかし全体像がきちんとわかっていれば、この方向でこのくらいの大きさで、このくらいのペースで掘り続ければ、何か月後には向こう側のあそこに到達するとか、あるいはトンネルの両側から掘り始めて、何か月後には真ん中でお互いが出会うとかそういうことがほぼ正確にわかるのと同じです。


 しかし、ほぼ正確にわかることと、完璧に正確にわかることの間には隔たりがあります。ですから、本命のレースに出場する前に、どこかレースに出て、そこで全力で走ってみて、現在の自分の状態をより正確に把握するように努めることがテストレースの役割です。ここで、自分が思っていたのと違う結果になったのであれば、どこにずれがあるのかを検証しなければなりませんし、だいたい思った通り走れたら、まあまあやっぱり自分の計画が正しかったんだなということになります。


 あるいは、土台作り明けなどは選手もコーチも自分がどのくらい走れるのか正確な予測が難しい場合もあるので、とりあえず一本レースを全力で走ってみて、現在地を確認するという意味合いで出場することもあります。


 いずれにしても、テストレースとは自分の現状を確認するためのものであり、条件としては全力で走ることが挙げられます。


 もちろん、全力で走らなくてもこのくらいの感覚で走って、このくらいのタイムで走れるというのでだいたいの自分の現状は分かりますが、それは練習で出来ることです。練習でも全力で走らなくてもだいたいこのくらいの感じで走って、このくらいのタイムというので、感覚は掴めるわけです。テストレースではそれ以上に正確な情報を求めるので、条件としては全力で走ることです。


 ただ、30㎞やフルマラソンなどの長い距離を全力で走ると、その時の状態は正確にわかるかもしれないけれど、そのあとのダメージが大きすぎて、かえって現状が分からなくなってしまいます。確かに、その日の状態は正確に分かりますが、目的としては現状を正確に把握して、今後の練習計画をより正確に立てることです。ところが、走り終わったあとのダメージが大きすぎると、かえってそのあとの練習計画の立案が難しくなります。


 したがって、テストレースで主に用いる距離は10㎞以下であり、フルマラソンの場合はハーフマラソンが1本か2本、間に入っても良いかなという感じです。


 練習として使う場合は、普通に練習として使います。


 つまり、高強度なインターバルを予定していたところに5000mレースを入れたり、10000mレースを入れたり、あるいは練習で30㎞走を予定していたところに、30㎞のレースを入れて30㎞走をしたり、そういうことです。30㎞やフルマラソンなどの長い距離を練習レースとして使う場合、練習と同じで強度をコントロールして走り、絶対に全力で走るべきではありません。


 考え方としては、30キロ走や40キロ走を予定していたところに、一人で走るのが嫌だから、あるいはレースに出た方が楽だから、レースを使おうというのが思考の順番であって、レースがあるからそれに練習として出場しようという考え方では上手くいかないということです。


 また、計画に柔軟性を失うということは一つ理解しておいてください。もしかしたら、その日は35キロ走が良い練習かもしれないけれど、その柔軟性を失うことにはなります。


 参考になりましたら、幸いです。今週の金曜日から三日間限定で、新講義動画「土台作り研究」をリリース予定です。


 「夏場に土台作りをすると良い」とか「夏を制する者は駅伝を制す」という言葉はよく聞くと思いますが、実際問題なぜ土台作りが大切なのかということに関してはピンっと来ない方が大半だと思います。


 特に、運動生理学的な正しい裏付けがない方が大半だと思いますので、結局のそのせいでなんとなく効果が確かであるように感じられる最大酸素摂取量ペースでのインターバルやLT走、クルーズインターバルに走ってしまう、あるいは暑すぎてそういった高強度な練習が出来ないので、山に行ってLSD、あるいは夏は夏休み、あるいは夏だ、海だ、宝くじだとなって宝くじを買いに行く人までいる始末です。


 今回の講義動画では、そうならないようになぜ土台作りが効率の良い練習なのか理解できるまであなたの世界観を変えて見せますので、楽しみにお待ちください。


「運動生理学なんて『ジャック・ダニエルズ博士のランニングフォーミュラ』でもう十分知ってるよ」という方もご安心ください。ちゃんとあなたのトレーニングに対する世界観と運動生理学の理解を変えて見せます。


 それでは、今週の金曜日をお楽しみにお待ちください。

閲覧数:590回0件のコメント

Komentarze


筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

bottom of page