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執筆者の写真池上秀志

ソ連の科学者が明らかにした心の力教えます!

更新日:2月5日

こんにちは、ウェルビーイング池上です!


 今回も心理学をテーマにした記事をお届けさせていただきたいのですが、初めにちょっと考えていただきたいのが、どうしてスポーツにおいて心が重要になるのでしょうか?


 私は洛南高校陸上競技部にいたとき、根性論が嫌いでした。当時の洛南高校はもう平成も終わりに近づいていたというのに、まだ昭和の香りがプンプン残っている学校でした。


 もともと関西の三大悪校の一つと言われて、生徒がグランドで机を燃やしていた学校です。校内暴力華やかなりし頃の時代も経て進学校になった学校で、年配の先生方は昔生徒(要するに、私の先輩方)に鍛えられて、全員体罰をさせたら天下一品のメンバーがそろっていました。


 ちなみに、もう時効だと思うので書きますが、顧問の先生はいつも殴るときは中指と人差し指第二関節の部分を突き出して殴るので、長年殴り続けたその指はヒットする場所だけ皮膚が変色していました。つくづく殴られる方も大変やけど、殴る方もたいへんなんやなあと思ったものです。


 私がここでテーマにしたいのは、体罰ではありません。根性論です。なんだかんだで先生も理不尽に殴ったりはしませんし、殴られる方も愛情を感じる体罰だったので、それは私の中では100%OKでした。


 私がよく理解できなかったのは「苦しい思いに耐えた方が強くなれる」という考え方でした。同時に当時は洛南高校陸上競技部は人間教育に力を入れていたのですが「お前らそんなんで社会で通用する人間になれんのけ!」と些細なことで怒鳴られまくるという日々を過ごしていました。


 今の私が論理型人間になったのは、父親からの体罰と洛南高校陸上競技部での理不尽な叱責やしきたりの反動です。


 という訳で、私は長距離走・マラソン、ひいては仕事や他のスポーツ、勉強で結果を出すための心理学には全て根拠がなければいけないと思っています。


 では、我々がスポーツ心理学を学ぶ根拠や意味はどこにあるのでしょうか?


 スポーツ心理学は何故役に立つのでしょうか?


 この答えは簡単です。それは心理状態が生理状態に影響を与えるからです。もっと平たく言えば、心が体に影響を与えるということです。


 ところで、先日紹介させていただいた「ウォールストリートの狼から学ぶ心理学テクニック」の記事はもうご覧いただけましたでしょうか?


 今回の話は、こちらの記事で紹介している内容を理解しているという前提で進めさせていただきます。まだご覧いただいていない方は下記のURLよりご覧ください。


 さて、こちらの記事では嗅覚をトリガーに、そしてある心理状態をアンカーに設定するわけですが、何故この心理学テクニックを私も使うかと言いますと、それは生理状態にも影響を与えるからです。


 ここではおそらく、実験結果を見ていただいた方が分かりやすく、そして面白いと思います。


 以下『The Mental Game of Baseball』ハーベイ・A・ドルフマン、カール・キュール著、白石豊訳からの引用です。



引用開始

 スポーツ心理学者であり、スポーツ選手のピークパフォーマンス研究を行っているチャールズ・ガーフィールドは、1979年にミラノでソ連の科学者から得た経験を次のように語っている。


「ミラノに講義に行った私は、そこで色々な国のスポーツ科学者から、スポーツ選手のパフォーマンスを向上させるための様々な方法を聞くことが出来た。中でもソ連の研究者たちからは、メンタルトレーニングに関するユニークな議論を教えてもらうと同時に、私自身とても不思議な体験をすることになった。


 私はかつてずいぶん筋力トレーニングに励んだことがあり、一時はベンチプレスで435ポンドを挙げたこともあった。


 しかし、ハードトレーニングをしなくなってから、もう7年以上経っていた。ベンチプレスでは365ポンドは朝飯前だったのに、その時にはめったに280ポンド以上上げることが出来なくなっていた。


 ソ連の研究者は、私がかつて365ポンドのベンチプレスをしていたことに興味を示し、もう一度同じ重さを持ち上げられるようになるまでに、どのくらいかかると思うか、と私に尋ねた。私は1年ぐらいトレーニングすれば、と答えた。


 次には「今だったら何ポンド持ち上げられると思うか」と問うので、必死に頑張れば300ポンド持ち上げられるかもしれないが、とても自信がないと答えた。すると彼らはやってみるように熱心に勧め、それが自分たちのメンタルトレーニングを理解する早道だというのである。


 驚いたことに、その場で私はどうにか300ポンドを持ち上げることが出来た。するとソ連の科学者は、私の身長、体重、体脂肪率、新陳代謝率を調べ、採血もした。彼らは黙々と私のことを徹底的に調べ、目盛りを読み、計算し、脳波計、筋電図などで様々に測定し続けた。


 全ての検査が終わった後で、次の実験に移った。彼らは私にあおむけに寝るように言い、次にリラックス状態へ導いた。しかし眠ってしまったわけではなく、意識ははっきりし、周囲で起こるすべてのことがよく分かっていた。


 体中の全ての筋肉はリラックスし、私はこれまでに経験したことがないほどくつろいだ状態になった。彼らは、腕と足がだんだん重く温かくなると想像しなさい、と言った。彼らの指示に従ってイメージしているうちに、確かに温かく、重い感覚が全身に広がっていった。


 40分すぎた時、ゆっくりと起き上がって持ち上げようとするバーベルをじっと見つめるようにと言われた。


 よく見ると、先ほどかろうじて押し上げた300ポンドのバーにさらに65ポンドが加えられていた。


 次にベンチに横たわり、自信をもって365ポンドバーを持ち上げる自分の姿を心に思い浮かべるように言われた。また、バーがちょっと傾いた時に発する鈍い金属音、バーベルを立てる音、自分の息遣い、持ち上げる時にいつも出す声をイメージするように言われた。


 突然、私は心配になった。私が365ポンドのバーを持ち上げることを、彼らが本当に期待しているのだということに気づいたからである。私の不安を敏感にキャッチして、モニターの針が大きく揺れた。


 しかし、彼らは私を急き立て、再び365ポンドのバーを持ち上げる自分をはっきりと心の中に描くように励ましてくれた。


 さらに、私の心の中に焼き付いたイメージを急速に拡大したり、縮小したり、自分自身を上と横から見たり、手がどのようにバーを握るかを近くで見たり、筋肉がバーをいかにして持ち上げるかをありありとイメージするように言った。


 そうしているうちに、何か月もかかって準備してきたかのように、全てのことが一つになってきた。私の中に作り上げてきたイメージが、身体の動きをリードする感覚が生まれ始めた。


 私は持ち上げられるという確信を抱いた。出来るという自信が全身に漲ってきたのである。ゆっくりとバーを持ち上げた。すると驚いたことに、いとも簡単に成功してしまったのである。


 ホテルに戻っても私はドキドキしたままだった。ベッドに入っても眠れなかった。まるで魔法か何かで不可能な重量を持ち上げたようで、すっかり興奮してしまった。しかし私が驚いたのは、様々な測定装置を併用した科学的な方法で、隠れた潜在能力を引き出す方法を、ソ連の研究者たちが開発しているという事実を実体験したことであった。」


引用終了


 心理学テクニックを使ってやりたいことは要するに、こういうことです。スポーツにおいては、心理学テクニックを使って心が変わりました、でもパフォーマンスは変わりませんでしたでは意味がありません。ハイパフォーマンスを発揮するための心の使い方です。


 そして、心理学テクニックは異なる時間軸で考えられる必要があります。少なくとも10分から60分程度の心理状態、60分から6時間程度の心理状態、一日ごとの心理状態、一週間単位の心理状態、一か月ごとの心理状態、3か月単位の心理状態、一年ごとの心理状態、そしてヴィジョン(一生もの)くらいのスパンで細かく分けて考えられるべきものです。これは種目によっても変わると思います。


 例えば、5000mの選手なら試合の日の朝、前日の夜くらいから徐々に集中力を高めていってスタート前15分からレースが終わるくらいまでにピークを持ってくると思います。


 そして、だいたい一本のレースに向けて3か月から半年かけて準備をして、それぞれのトレーニングの期分けがあり、週間スケジュールがあり、日ごとのワークアウトがあり、そして、長期でのヴィジョンがあるという具合です。


 プロ野球選手なら、長期のヴィジョンがあり、シーズン中の集中状態があり、移動日一日を含める一週間のスケジュールがあり、一試合3時間の中に一球一球の間に間があり、というように各種目ごとに心が動いていくスパンは違いますが、どの種目でもどのスポーツでも、一瞬から60分程度、数時間、日ごと、週ごと、数か月、一年、ヴィジョンくらいの7種類くらいのスパンで考えられるべきものになります。


 そして、決して忘れてはいけないことは心理学的テクニックと、トレーニング、栄養、睡眠などを切り離して考えることはできないということです。先ほどの引用箇所でいえば、確かに一人の時にはめったに280ポンドも挙げられなくなっていたのが、365ポンドを持ち上げられるようにはなっていましたが、倍の560ポンドが持ち上げられるようになったわけではありません。


 心を操れば、全てが可能になるわけではないのです。あくまでも心は体をベースにしてプラスアルファの力を加えてくれるものです。


 同様に、体のコンディションが少々悪くても集中すれば何とかなることはあります。私自身も高校三年生の京都府駅伝で区間賞を獲った時は脛骨を疲労骨折していました。


 でも、やっぱり体のコンディションは最高の状態の方が良いわけです。そして、そのためには栄養と睡眠を二本柱としたリカバリー戦略が重要です。


 練習計画についても同じことが言えます。心をうまく使えば、どんな練習をしても速くなるのかというとそんなことはありません。


 やはり、きちんとした練習計画の上に、質の高いリカバリーと心理学的テクニックがあって初めて成果が出ます。


 そして、練習計画そのものも心理学的テクニックを使えばより良いものが作れます。経営者の人たちは時には100万円以上もするプログラムを買って心理学の勉強をしますが、それは自分の心理学的テクニックによって判断が変わり、そして自分の判断一つで会社の業績が良くもなれば悪くもなるからです。


 ランナーも同じで、どのような練習計画を立てるのかという判断一つで結果が良くもなれば、悪くもなります。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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