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執筆者の写真池上秀志

新講義動画「無駄なく速い走りを身につけよう!長距離ランナーの為の走り方改善プログラム」を受講して学んだこと。

 先日よりお知らせさせて頂いていたのですが、本日より弊社副社長の深澤哲也が走り方に関する講義動画を出します。今回は私もそれを受講してみて感じたことや学んだことを少し書いてみようと思います。


そもそも走り方を改善することは何故重要?

 そもそもの話ですが、走り方を改善するとはどういうことを言うのでしょうか?


 フォームを変えるのには本来目的があるはずです。例えば、野球の打者の場合、ボールを遠くまで飛ばせるようになるとか、強い力をボールに加えることが出来るようになるとか、高確率で投手が投げる球をヒットすることが出来るようになるとか、そういったことが目的になるでしょう。


 バスケットボールではより正確なシュートが打てるようになるため、サッカーならより強いボールを狙ったところに打てるようになることでしょう(場合によっては強弱のコントロールがつけやすくなるというのもあるでしょう)。


 では、長距離走、マラソンではどうなるのでしょうか?


 物凄く単純な答えを出すのであれば、記録の向上です。記録が向上しないのであれば、全くもって意味がありません。では、記録の向上はどこから来るのでしょうか?


 せんじ詰めれば、次の3つしかありません。


・自分が目標とするレースの時間中、より強い力を地面に加えることが出来るようになる。


・より高確率で自分が地面に加えた力を前方方向へと変換することが出来るようになる。


・より少ない力で同じ力を地面に加えられるようになる。


 そして、実は1番目と3番目は同じものです。何故ならば、生み出せるエネルギー量は代謝系の優劣によって決まるからです。代謝系とは生化学的なエネルギーシステムのことであり、日常言語で言えば心肺機能に該当するものです。


 なので、自分が出場するレース中にわたってなるべく強い力を地面に加えようとすると、生み出せる力の大きさそのものは代謝系によって決まるので、走技術としてはなるべくそれを省エネで使う=より少ない力で同じ力を地面に加えられるようになることでしか成しえません。


 ここで話をややこしくしているのが、物理学における力と日常言語における力というものが混在していることです。物理学における力とは単純に力です。表現が難しいですが、ある物体に変化をもたらすエネルギーのことです。そして、日常言語における力とは単純に力を入れるとか力を抜くとかそういった意味合いにおける力です。


 ここで重要なことは力をたくさん入れたからと言って物理的に大きな力を加えられる訳ではないということです。このことは他のスポーツをやってきた人の方が分かって頂けると思いますが、野球にしろ、テニスにしろ、サッカーにしろ、初めからガチガチに力を入れておけば大きな力が伝わるかというとそうではなくて、寧ろ力を最大限に抜いておいて、必要な時にだけ瞬間的に力を入れた方が大きな力が発揮されます。


 ランニングも基本は同じなのですが、違う点はそれをかなりの回数反復しなければならない、しかも一瞬で行わなければならない点です。市民ランナーの方から世界のトップランナーまで、だいたい0.3秒から0.33秒間に1歩刻みます。当然、一番力を入れるべきは地面に着いた瞬間から蹴り出しまででそれ以外の時は最大限に力を抜いておかなければなりません。


 そして、地面についている時間はおよそ0.2秒から0.17秒、空中に浮いている時間は0.1秒から0.15秒くらいです。この短い時間の中で力を抜いたり、入れたりを繰り返さないといけません。しかも、右足と左足両方でそれをやらなければならないことを忘れてはいけません。


 この地面に着く瞬間の緊張と弛緩のくり返しに加えて、上半身を中心にどうでも良いところの力が最大限に抜けていなければなりません。人間というのは大抵はどこかに無駄な力が入っているもので、ただ立っているだけ、歯を磨いているだけ、傘をさしているだけでも無駄な力は入っているものなのです。走る際には無駄な力も抜かなければなりません。


 それから、地面に力を加えたらそれが全て前方方向への推進力に変換されると思ったら大間違いです。自分では気づかないうちに、上に飛んでいたり、ブレーキをかけたりしているものです。


 そして、重要なのはこれらの動きを全て無意識のうちにやらないといけないということです。私がレースペースで走る時、およそ1歩の時間の長さは0.315秒です。そして、地面についている時間は約0.17秒、空中にいる時間は0.14秒です。しかも、これを左右交互にやる訳ですから、意識して出来る訳がありません。その他の全ての動作、足をあげる、足を入れ替える、足をおろす、着地する、蹴り出す、全てが無意識のうちに行なわれています。上半身の動きも下半身の動きも全てが無意識のうちに行なわれています。


 そして、無意識のうちに行なわれているものを意識的に介入することは非常に困難です。


 だからこそ、何をやるのかと言うと動きづくりというものをやる訳です。動きづくりというのは何かというと理想的な動きを分解して、個別の動きまで落とし込み意識的に取り組めるようにしたものです。


 この動きづくりは私が中学校の陸上競技部に入った時に、一番最初にやったものです。正直、当時は何のためにやるのかよく分かりませんでしたし、そういう説明を受けたこともありませんでした。


 ですが、改めて説明すると、今申し上げた通り、理想的な動きを分解して、個別の動きに落とし込んだものが動きづくりです。これによって、感覚を養う訳です。なんとなくこんな感じで体を動かすという感覚を掴んでいくのです。そして、個別の動きで感覚を掴んでから走るとあとはあなたの中枢神経が勝手に調整しておいてくれます。つまり、無意識のうちに走りが改善されるのです。


 では、この走り方を改善したところで、競技力はどのくらい向上するのでしょうか?


30%? 50%? はたまた70%?


 残念ながら、せいぜい5%から10%程度しか走力の向上は見込めません。繰り返しになりますが、800mからフルマラソンまでの距離で一番大切なのは代謝系であり、次に大切なのは筋持久力です。走技術が関与する割合はそこまで大きくはありません。


 この基本的な考え方は今でも変わらないのですが、この考え方にやや変化が起きたのは2023年のびわ湖マラソンで深澤の付き添いをした時です。この時、改めてたくさんの市民ランナーの方の走りを拝見したのですが、まあ中にはひどい走り方の方もたくさんいました。私もあんまり人のこと言えたものではないのですが、その私から見てもこの走り方はちょっと根本的に直さんといかんなと思う走りが散見されました。


 もう少し具体的に言えば、「このペースで走るのに、どうしてそんなに余計な動きが入ってしまったんだ」と思う装飾品がたくさんついているのです。もしかすると、魅力的な異性を引き付けるのには役立つのかもしれませんが(くじゃくの羽にしろ、2人しか乗れないフェラーリや1つ200万円もするロレックスの時計にしろ、無駄なものは魅力的なメスの獲得に役立つ)、42.195キロをなるべく速く走るには邪魔な動きです。


 基本的に私は走り方を改善することによって5%から10%程度しか走力の向上は見込めないと思っていますが、それはあくまでもそれ以上のプラス点は稼げないということであり、すでに大きくマイナスから出発している人は走り方を直すだけでも結構変わるのではないかと思いました。


 マイナス点を消すことでどうなるのかということですが、実は走り方を変えること単体では走力は向上しないと思います。ただ、あまりにも疲れやすい走り方をしている人が散見されたのです。疲れやすい走り方をしている人の特徴は二つだけで、力み過ぎか余計な動きが多すぎるかのどちらかです。そして、どちらのパターンにおいても疲れやすいです。疲れやすいと練習が出来ません。実はこれが一番の問題なのです。


 良い練習をたくさんこなすことが出来なければ代謝系の向上は期待できません。疲れやすい走り方をしていると良い練習を積み重ねるというところに問題が出てくるので、そこに問題が出てきます。


 ちなみにですが、長く走られている方(少なくとも10年以上走られている方)は最近シューズのクッション性が良くなったと思いませんか?


 アルファフライやメタスピードスカイなどのレースで使える高機能な「いわゆる厚底シューズ」のみならず、シューズ全体のクッション性が向上したと思いませんか?


 私の肌感覚では今のクッション性があるランニングシューズでアスファルトを走るのは、15年前の一般的なランニングシューズで土の上や芝生の上を走るのと同じくらい脚に優しい感じがします。それだけでも疲労が軽減されたりすると思いますし、それによって練習の質と負荷を若干上げることは可能だと思います。


 それと同じことが走り方を変えることによって起こるということです。


 なので、すでに基本が身についていない人は、今まで以上に練習が出来るようになると思います。それによって走力が向上するというのが起こりうる一番大きな変化でしょう。


 さて、だいぶ前置きが長くなりましたが、以上のような観点から作られた本講義、感想を一言で言えば「面白かった」です。


 何が面白いのかというと走るという動作をまた別の観点から捉えることが出来ました。


 走るっていう動作を習得することの難しさは、逆説的になりますが、走ることが簡単すぎることにあると思います。


 例えば、自転車に乗れないとこけます。一輪車に上手く乗れないとこけます。上手く泳げないと溺れます。ボールを上手く投げれないと真っすぐ前に飛びません。ところが、走れなくてこけるとか真っすぐ前に走れないとかそういう人を見たことは一度もありません。


 ですから、「走れる」とか「走れない」という現象が非常に分かりにくいのです。つまり、多かれ少なかれ誰でも走れるけれど、レースで一緒に走ってみると「走れる人との間に歴然とした差が出る」ここに難しさがある訳です。


 従って、一度私たちの意識の中で走るということを再構築する必要がある訳です。


 これも逆説的なものの言い方になりますが、より良い走り方の為には先ずは走れていないというのがどういう状況で、走れているというのがどういう状況なのか、その認識を再構築する必要がある訳です。私たちはほとんど無意識のうちに走るということは五体満足であれば簡単に出来ると思っています。しかし、実はそうではないということを理解しなければなりません。


 ここに今まで慣れ親しんだ世界を抜け出して、走るという意識、認識を再構築する旅に出る必要があるのです。そして、その旅の案内人を務めてくれるのが弊社副社長の深澤哲也です。非常に面白い切り口から新しい旅へといざなってくれました。


 ちなみにですが、社長の私もとりあえず、作成にあたって注文はつけていません。出来上がったのを見て分からなかったところを一受講生として質問をして、その補足説明を講義に追加で盛り込んでもらって最後に少しだけ修正しましたが、一発目に出来上がった作品に対しては私は何も注文をつけていません。


 ただただ、出来上がった作品を一受講生として受講したのですが、どちらかと言えば、冒頭の理論編が面白かったです。走り方というよりは人体を理解する、人の体に対する認識の仕方を再構築してくれる、物凄く大げさな表現をするとパラダイムシフトを起こしてくれるような内容になっていました。


 一方で、実践編に関しては実際にやっていることは非常に平易であり、出来るかどうかは別にして、やっていること自体はチンパンジーでも理解できるくらいの内容でした。ただ、理論編を見てから見ると、やっていることの意味が分かるので、全然見え方が分かって(見るべきところが理解出来て)非常に面白かったです。


 あとは私が分からなかったところは質問をして、その返答も講義に盛り込んで最終版が完成しているので、これで全て一通り完璧に入っているはずです。それでも分からない場合は講義者の深澤に直接質問してもらえるので、その点についてもご安心ください。


 さて、だいぶじらしてしまいましたが、新講義動画「「無駄なく速い走りを身につけよう!長距離ランナーの為の走り方改善プログラム」は本日よりリリースです。たった2200円の投資で受講して頂けますので、是非こちらをクリックして詳細ご確認ください。

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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