全てのエネルギーは間隙に存在する
リシ(古代インドの賢者たち)
目次
エネルギーとは何か?クエン酸回路の話
健康とミトコンドリア、酸化ストレスの関係
アポトーシスとネクローシス
エネルギーとは何か?クエン酸回路の話
突然ですが、今皆さんは生きていますでしょうか?私の書いたこの文章を読んでいるということは生きているに違いないのですが、生きているということは絶えずエネルギーを生み出しているということです。心臓や肺を動かすのも食べたものを消化するのも歩くのも話すのもエネルギーを生み出しているからできることです。
ではここで皆さんに一つの質問があります。そもそもエネルギーとは何でしょうか?エネルギーとは生化学的にはアデノシン三リン酸という物質です。略してATPと呼ばれることもあります。人体においてエネルギーを生み出すとはアデノシン三リン酸をアデノシン二リン酸に分解することによる化学反応を利用して筋収縮を引き起こすことです。普段あまり意識しないかもしれませんが、話すという行為も筋肉の運動です。私は英会話レッスンで発音を指導することもあるのですが、訓練していない日本人は英語を発音するための筋肉が発達していないので、聞き取ることが出来ても発音できませんし、また一度に続けて英語を話すと普段使っていない筋肉を使うことになるので筋肉痛にもなります。
ところが、ここで一つの問題があります。実は体内に存在するアデノシン三リン酸をアデノシン二リン酸に分解すると、1分も経たないうちにエネルギーが枯渇するのです。しかしながら、人間の寿命は1分間よりもはるかに長い訳ですが、これは四種類の化学反応を用いて常にアデノシン二リン酸をアデノシン三リン酸に再合成し続けているからです。四種類の化学反応を引き起こす代謝回路は以下の4つになります。
クレアチンリン酸系
無気的解糖系
有気的解糖系
有気的脂肪分解系
上記のうちの1と2は無気的代謝回路と呼ばれるもので酸素を使わずにエネルギーを生み出しています。無酸素運動という言葉を皆さんも聞いたことがあると思いますが、これは呼吸をせずにエネルギーを生み出す高強度な運動のことを指します。ただ、多くの人が誤解しているところですが、無酸素運動と言うのは日常言語における呼吸をしていないわけではありません。要するに、別に息を止めているわけではありません。ここで言う呼吸とは生物学上の呼吸のことであり、生物学上の呼吸とは酸素を用いてミトコンドリア内のクエン酸回路(クレブス回路若しくはATP回路とも呼ばれる)でアデノシン二リン酸をアデノシン三リン酸に再合成することを指します。
このミトコンドリア内のクエン酸回路におけるアデノシン二リン酸のアデノシン三リン酸の再合成が、3番目と4番目に挙げた有気的解糖系と有気的脂肪分解系に該当します。日常言語における呼吸の間にミトコンドリア内において、生物学上の呼吸によってエネルギーが生み出されています。古代インドのリシはエネルギーは間隙に存在すると考察しましたが、大変賢明な考察です。日常言語における呼吸と呼吸の間にエネルギーが生み出され、一日と一日との間に睡眠がありエネルギーが生み出され、仕事と仕事の間に休みがあるからエネルギーが生み出されるわけです。
さて、話を元に戻しますが、人間はエネルギーの大半をミトコンドリア内で有気的に生み出しています。これは生物が陸に上がった時から進化の過程で発達させてきたものです。生物が海の中にいたころは酸素がなかったので、無気的代謝のみで生きていましたが、陸に上がって有気的代謝を中心にエネルギーを生み出すようになってから進化を遂げてきたとされています。というのも有気的代謝は無気的代謝と比べると18倍も効率が良いからです。これは何を根拠にしているかと言うと、グリコーゲン1分子から再合成されるアデノシン三リン酸の数は無気的解糖系代謝が2に対して、有気的解糖系の代謝では36になるからです。持久系スポーツにおいて、有酸素能力の向上が競技能力の最たる決定因子となるのはこの為です。
グリコーゲンは細胞質で分解(無気的)が始まり、最終的にミトコンドリア内に入るのですが、この時にコエンザイムA と結合した2炭素単位、アセチルコエンザイムを形成します。アセチル基はオキサロ酢酸と結合しクエン酸を形成し、クエン酸回路へと進んでいきます。クエン酸回路での反応中に生じた水素原子は最終的に電子伝達系で酸素に変換されるのですが、この変換の過程で発生したエネルギーによりアデノシン二リン酸がアデノシン三リン酸へと再合成されます。
ここで電子という言葉が出てきましたが、念のために説明を付け加えておくと全ての原子は中心に原子核があり、その周囲を霧状に電子が存在しています。そして各原子によって原子核の周囲に電子がいくつあれば化学的に安定するかが決まっています。スイヘリーベボクノフネと聞いたことがあるのではないでしょうか。この場合、一番目に来るスイは水素のことですが、つまり水素は原子核の周りに電子が一つあると化学的に安定するのです。
先ほどから化学的に安定するという言い方をしているのは実際には体内では安定した物質はあまり存在せず、電子を受け取ったり(還元反応)、電子を渡したり(酸化反応)という現象が繰り広げられているのです。
では、具体的にクエン酸回路の中でどのようにエネルギーを生み出しているのかということですが、以下に順を追って説明していきます。
ミトコンドリア内膜にある呼吸鎖というメカニズムを電子が通り過ぎることでアデノシン三リン酸を生み出しています。電子=水素イオンが呼吸鎖の中にある複合体Ⅰ、Ⅱ、Ⅳへと流れていき、水素イオンが内膜の外へと汲み出されます。
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ミトコンドリア内膜の外側に水素イオンが次々とたまっていくと、ミトコンドリア内膜の内側と外側に濃度や電位に差が生じます。
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ミトコンドリア内膜にはおよそ数万個のアデノシン三リン酸アーゼというものがあり、その構造はその中を通って水素イオンが内膜側に戻れるトンネル構造になっています。このトンネル(出入り口)は水車のような形をしています。ミトコンドリア内膜の内側と外側に生じた濃度や電位の差によって水素イオンが外側からミトコンドリア内膜の内側に移動するときにこの水車軸が少しずつ回転し始め、3つの水素イオンが通過すると120度ずつ回転し9つの水素イオンが通過すると一回転することになります。このミトコンドリア内膜にはキノコを反対にしたような装置があり、水車軸が回るたびにアデノシン二リン酸をとりこみリン酸基を一つ足してアデノシン三リン酸を生み出します。これがアデノシン二リン酸をアデノシン三リン酸に再合成するメカニズムです。ヒトの場合、この水車軸が一回転することで9つの水素イオンを使い3分子のアデノシン三リン酸を生み出すことになります。
健康とミトコンドリア、酸化ストレスの関係
ここまで、有気的エネルギー代謝について解説してきました。生物は有気的代謝を手に入れたおかげで進化を遂げてきたのですが、実はもろ刃の剣でもあります。酸素を用いてエネルギーを生み出すことで酸化ストレスと呼ばれるものが生じる原因となっています。原子はその周囲の電子の数によって安定するか安定していないかが決まるということは先述しましたが、体内には化学的に安定している原子のみが存在している訳ではありません。実際には体内では安定した物質はあまり存在せず、電子を受け取ったり(還元反応)、電子を渡したり(酸化反応)という現象が繰り広げられているのです。
原子核を周回する電子の数に不足が生じ不安定になった物質は安定を得るために他の(たいていは隣の)分子を攻撃し、電子を強奪します。そして電子を奪われた不安定な分子はまた他の分子を攻撃し・・・という酸化反応の連鎖反応が起きてしまいます。この化学的に不安定になり、隣の分子を攻撃する性質を持った物質のことをフリーラディカルと呼びます。そしてフリーラディカルの作用で最も恐ろしいのがDNAの酸化損傷です。
フリーラディカルはウイルスやバクテリア等の細菌を殺すために白血球によっても作られ、また呼吸のたびに作られるものでもあります。しかしながら、人体は酸素をエネルギーにする進化の過程の中で、スーパーオキシドディスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペロキシターゼのような抗酸化酵素によって無害なものに変えるという適応を遂げてきました。それでもフリーラディカルを処理しきれないのは以下のような精神的、身体的ストレスの所為です。
・不適切な飲食週間
・大気汚染
・紫外線
・不健康な石鹸、シャンプー、染髪料、化粧品の使用
・農薬
・水銀
・身体的、精神的ストレス
・放射線
・タバコ
・アルコール
・薬
身体的ストレスに関して言えば、持久系競技者はとくに酸素を用いて多くのエネルギーを生み出すので、フリーラディカルを生成しやすくなっています(適度な運動は別です)。
では酸化ストレス(フリーラディカルの発生)が何故問題になるのかということですが、一言で言えば遺伝子の転写ミスを引き起こすからです。要するに、古い細胞が死んだあと正常な細胞に生まれ変わらないのです。
アポトーシスとネクローシス
細胞死にはアポトーシスとネクローシスという二つの種類のものがあります。アポトーシスの方はプログラム死とも呼ばれており、もともとDNA によってプラグラミングされていて、古くなった細胞が自動的に死に新しい細胞へと生まれ変わるものです。この時炎症は起こらず最後はリンパ球・食細胞が飲み込んで処理してくれます。
一方のネクローシスは傷ついたDNAによってもたらされる炎症を伴う細胞死です。アポトーシスは徐々にアポトーシス小体という小さな細胞に分かれていき最後はリンパ球や食細胞に食べられるのに対して、ネクローシスは自爆のように小さな破片へと破裂していきます。そしてその炎症が更に炎症を引き起こすという連鎖反応が起こります。
アポトーシスを引き起こすカギを握っているのはミトコンドリアDNAだと言われています。トコンドリアDNAが正常に働いていればアポトーシスという正常な細胞死を引き起こすことが出来るのですが、DNAを傷つけネクローシスを引き起こすのがフリーラディカルです。他にもフリーラディカルは細胞の脂質やたんぱく質も傷つけ加齢を促進させる原因となったり、関節炎、動脈硬化、ガン、脳卒中、心筋梗塞の原因となります。
ミトコンドリア内のクエン酸回路における代謝経路について先述しましたが、もう一度おさらいしておくとミトコンドリア内膜の電子=水素イオンがミトコンドリア内膜の外側に汲み出された後、アデノシン三リン酸アーゼと呼ばれる回転する水車のようなところを通ってミトコンドリア内膜に戻ります。この時にアデノシン二リン酸がアデノシン三リン酸に再合成されます。
しかしながら、このミトコンドリア内膜の外側にある水素イオンを内側に運び込めない状態が生じることがあります。ストレスを受けたり、局所貧血を起こしているミトコンドリアの内部では一酸化窒素が発生し、この一酸化窒素が発生すると、呼吸酵素複合体Ⅲから受け取った水素イオンを呼吸酵素複合体Ⅳに手渡す働きをするタンパク質であり、ミトコンドリア内膜に存在するシトクロムCが働かなくなります。この結果、ミトコンドリア内膜で水素イオンが動かなくなるので、水素イオンはミトコンドリア内膜の内側で滞ってしまいます。水素イオンをミトコンドリア内膜の外側に汲み出す呼吸酵素複合体は電子を受け取りたがり、また次の複合体に電子を渡したがる性質があります。電子を次の複合体に受け渡すためにはシトクロムCが必要ですが、シトクロムCが働かないので電子を次の複合体に渡せなくなります。そうすると、この電子を他の物質に渡す可能性が高くなりますがこの時他の物質として最も考えられ得るのが酸素です。こうして酸素と水素が結びついて過酸化水素というフリーラディカルになり、フリーラディカルを発生させることになります。
こうしてミトコンドリア内部で大量のフリーラディカルが発生した結果、酸化損傷によってDNAに変異が生じると正常な細胞死であるアポトーシスが引き起こされなくなります。正常な細胞死が引き起こされないとネクローシスという炎症を伴う細胞死が引き起こされます。
こうして生じた低度で慢性的な炎症が癌、アルツハイマー、Ⅱ型糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、関節炎、老化、シミ、しわなどの原因となります。
ただ、原理としては物凄く単純でフリーラディカルは電子の数が少なく安定していない物質であるので電子を供給しさえすれば安定します。
これまで私のセミナーやブログでは主に抗酸化食品やサプリメントについて解説してきました。先ずは日々の食事から見直すべきという私の考えに変わりはないのですが、そろそろプラスアルファの情報もお届けする段階にきていると思います。最後まで読んでくださった健康への意識が高いあなただけに今回は新しい情報を特別にお届けします。
今回紹介したいアイテムは私が20歳の頃から毎日愛用しているSEVネックレスです。
天然鉱石と金属の組み合わせで電子を放出し、ミトコンドリアの活動に必要な電子を供給することで本来のエネルギーを発揮しやすい状態へとサポートしてくれます。つけているだけで良いというのも大きなメリットです。
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参考文献
『ミトコンドリア革命』宇野克明著 東邦出版
『中長距離ランナーの科学的トレーニング』デヴィッド・マーティン、ピーター・コー著征矢英昭、尾縣貢監訳 大修館書店
『Warum Papaya kühlt und Zucker heiß macht』Prof. Dr. Michaela Döll著
『Die Entuzündung die heimliche Killer』 Prof. Dr. Michaela Döll著
『MSM Natürliche Hilfe bei Entzündungen und Schmerzen』 Prof. Dr. Michaela Döll著
参考記事
『Ernährung: Freie Radikale』Dieter Hogenと Janett Walter
https://de.takethemagicstep.com/ernaehrung/ernahrung-freie-radikale/
『抗酸化と抗炎症とフリーラディカルについて』池上秀志
https://www.ikegamihideyuki.com/single-post/freeradical
『LLLT (Low Level Laser Therapy)』池上秀志
https://www.ikegamihideyuki.com/single-post/2017/09/21/LLLT-Low-Level-Laser-Therapy