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執筆者の写真池上秀志

理想のランニングスタイル

更新日:2021年10月16日


今回はランニングスタイルについて書いてほしいというリクエストをいただきましたので、かねてからあたためていたランニングスタイルについての考えを書いてみたいと思います。

 私が高校に入学したころはNHKの検証もあり、踵接地が主流でした。主流というか流行りの考えだったと思います。その後、クリストファー・マクドゥーガルの書いた『Born to run』が世界中で大ヒットし、ベアフットランニングと爪先接地が主流になっていきました。その後は大迫さんのご活躍もあり、ますます爪先接地が主流になっていき、今では爪先接地がトップランナーの証のようにもなっています。

 それ以外では、最近は「お尻走り」という言葉も出てきて神野大地君がスクワットを千回やっているというのも話題になりました。どのように分類して良いのかはわかりませんが、スズキの安藤友香さんが忍者走りという異名を取ったり、安藤さんのチームメートの清田さんも走り方が似ていると言われたりで話題になりました。

 さて、様々なことが言われているランニングスタイルですが、私の考えは物凄くシンプルです。良いランニングフォームについて考えなければいけないことは、1.リラックスして、2.リズムよく、3.脚がスムーズに回転しているかどうかの3点のみです。あとは脚のどこから着地しようが、腕をどの高さで振ろうがあまり関係ありません。左右対称である必要もありませんし、「大殿筋を使う」のように特定の筋肉に着目するのもナンセンスだと思います。ランニングスタイルはあくまでも全体で一つのものです。ですから、動画をスロー再生して部分に着目して修正するのもナンセンスだと考えています。

ただ、私も指導者の「腕をもう少し引いて」のようなアドバイスには耳を傾けます。何故なら、優れた指導者はある部分に意識を向けさせることで、全体を改善させる方法を経験的に知っているからです。アドバイスした本人も「ここをこう変えれば、全体はこうなる」というのを理解していないかもしれませんが(言葉で説明できないかもしれませんが)、優れた指導者というのは経験的にこれで良くなるというのが分かっているのです。

 ここでその指導者がランニングスタイルについて的確に理解しているかどうかはどこで見極めれば良いのかという疑問が出てくると思いますが、これは選手の方も経験から判断するしかありません。私は幸いにも早い段階から優れた指導者に恵まれてきたので、何となく誰のいうことを聞けばよいのかわかりますし、その指導者がその意見に対してどのくらい自信を持っているのかも何となく分かります。

 日本人や白人の問題点は早い段階からプレッシャーの多い状況で走っている選手が多く、リラックスしたランニングスタイルを身につけにくい状況にあることです。私自身はまだランニングスタイルが固い方でもっとリラックスした走り方を身につける必要があると考えていますが、高校時代はもっと固い走り方でした。走り方に関する基礎を学んだのは高校に入学してすぐに、山梨学院大学の選手を指導していた大野先生の指導を受けることが出来た時です。大野先生は「きつくなって走りが崩れるくらいなら(集団から)離れろ。一人で走ることを怖がるな」という教えでした。私はその教えを忠実に3年間守り続けました。ですから、練習では早い段階で遅れても最後はもう一度リズムをつかみなおして、それなりにまとめることが多かったです。普通強豪校ではこのような練習の仕方をするとサボっているみたいに思われて怒られるものですが(しかも私の場合は比較的ポーカーフェイスなので)、当時の洛南高校の監督だった中島道雄先生は理解を示してくださって怒られることはあまりありませんでした。

私がコーチホーゲンに出会ってから走りについてアドバイスされたのは「肘を柔らかく使うことと、腕を前にふるよりも後ろに引く方に意識を向けなさい」という2点だけです。それ以外については「リラックスして速く走る、これが成功する唯一の方法だよ」と言っていただいたことがあります。

 最近気づいたことはリラックスして走る技術も半分は肉体的な技術であり、もう半分は心の使い方だということです。数か月(通常半年)準備してマラソンのスタートラインに立って、この結果で文字通り生活が変わるという状況の中で自分よりも実績のある人たちと走ってもリラックスして走れなければなりません。きつくなった時も雑念が浮かんでくると体が硬くなってきます。雑念と言っても「きついな、どうしよう」とか「ここで遅れたらやばいな」みたいなそういう気持ちです。こういう時に「きついな」と思えば、体はそれに反応して固くなってしまいます。一方で、とりあえず考えるのをやめて体の内部の感覚に集中するとリズムが整ってきて、もう一度力が抜けてきます。この辺りは言葉で説明できませんし、やっていても上手くできる時もあればそうでない時もあります。

フォアフットやお尻走りなど、最近はやりの考えに慣れ親しんでいる人からすれば答えになっていないランニングスタイル論かもしれませんが、結局のところ部分に目を向けるのではなくリラックスして、リズムよく、脚をスムーズに回転させるのがアルファでありオメガだと思います。全体を改善するために部分に意識を向けることは大切なことですが、それは決して目で見ることではありません。目で見て目で見たものを修正するのではなく、イメージで掴んで全体を修正していく感じが正しいやり方ではないかと思っています。

 長距離走、マラソンについてもっと学びたい方はこちらをクリックして、「ランニングって結局素質の問題?」という無料ブログを必ずご覧ください。


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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

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